Bon voyage!
1. He's wild and free.
3人はインターネットがまだ一般に普及していないご時世に旅行ガイドブックを買い漁り、旅行会社に足しげく通って相談し何だかんだ言いつつ手分けをし、旅行の日程を組んだ。
「結構、車移動が多いな?こことここはガイド見つからなかったんだろ?自分達で行くにしても4駆じゃないとだめだよな?兄貴は4駆のでかい車は運転出来るかな?」と雅治は予定表見ながら言う。
「ゆうだい兄貴は、ここは押さえておきたい場所とか、行きたい場所とかないのかな?」とガイドブックを見ながら時宗がつぶやく。
「車の運転くらい出来るだろ?アメリカは車社会だぞ?行きたい場所は兄貴に聞いて見ろ。答えは、【日本】とか【ホテルの中で自由な時間】と答える決まっている」と誠は涼しい顔で言う。
「しかし、ここはなあ~。さすがに……。誠、この遺跡の場所は、ガイド無しって大丈夫か?かなり森の奥だぞ?」
「何とかなるだろ?地図さえあれば、旅行会社でガイドをかなり探して貰ったが見つからないのだから自力で行くしか無いだろ?」
「諦めると言うのは?」
"It's Greek to me."(意味がまったくわからない)
「ねね、ジュゴンに逢えるかな?ワクワクするね!カンガルーやコアラも見ないと!勿論タスマニアデビルもね!」と誠と時宗は各々我が道を真直ぐ進んでいくようだ。
「まあ取り敢えず手配する前に一応兄貴に見せて見るか?」と雅治は2人を見ながら言う。
「まぁそうだな。後から変更はめんどくさいからな。でも遺跡観光の変更は認めないぞ?」と誠は言う。
「ゆうだい兄貴こないだ"You may go anywhere you like."って言って無かった?」と時宗は言う。
「兄貴が、お前に【何処にでも好きなところに行っていい】とか間違っても言うわけないだろ?」と雅治は呆れながら言う。
「俺もそう思う」と誠も同意する。
3人は数学準備室のドアを叩く。
奥から「どうぞ」と声が聞こえドアを開けると、唯野と他の数学教師がなにやら話し合って居るようだ。
いっせいに教師の視線が時宗達の方に集まる。
「なんだ?お前らか?何か用か?」と唯野はドアまで行き入って来るなと言わんばかりに廊下に3人を追い出す様に出る。
「なんで入れてくれないんだよ!」と雅治は不信そうに言う。
「ここは教師の聖域だ!生徒が勝手に出入りするなと何時も言って居るだろ?今後の授業方針を話し合って居るんだよ!だから、用件は教室で聞くから教室で待ってろ!」と言い追い払われる。
「なんだよ!何か面白く無いな!」
「まぁ、いいじゃん。教室でもっと詳しく予定たてようよ!カモノハシも見たいよね~。Kiwiもさ」と時宗は楽しそうに教室に向かう。
「時宗、Kiwiはニュージーランドにしか生息しないぞ?ニュージーランドまで足を延ばすのか?」と誠は予定一覧を見ながら言う。
「え?あ~。このパンフレット、オーストラリア・ニュージーランドってなってる!」
「手配は旅行会社に頼むんだろ?見積は貰っているのか?」と誠は時宗に聞く。
「さぁ?親父の所には行って居るだろうけど俺は、まだ見てないよ?」
「結構な額だと推測するが、時宗の親父さん出してくれるんだろうな?」と誠はお金の心配をする。
「大丈夫だよ!親父はまだ文句行って来て無いからさ。ダメなら沈没船探しの時の様に小言を言ってくるからさ。それより、パスポートの申請書類を早くちゃんと揃えてよ!間に合わなくなるよ!さっさと申請しないとさ」
「お前、きっちりしてるのか、自由奔放なのか分からんな?」と雅治は時宗を見ながら言う。
「その2択だと答えは間違えなく自由奔放の1択しかないな。時宗の場合」と誠は言い切る。
「なんでだよ!俺みたいな几帳面な男居ないぞ!」と反論するが2人には流される。
30分程して唯野が教室に現れる。
「なんだ?何か用か?」と言うと、誠がオーストラリア旅行の手配の予定一覧を差し出す。
「兄貴は海外で車の運転は出来るんだろ?」と遠回しに雅治が聞くが唯野は予定一覧を見るのに夢中で「あぁ」とだけ相槌する。
一通り目を通した後「なんだ?このアバウトな予定は?これで本当に手配するつもりか?飛行機のチケットや汽車のチケットは【現地調達】って!もし、飛行機のチケット取れなかったらどうするんだよ!しかも、この車泊って何だ?日本は世界中で指折りの治安のいい国なんだぞ?日本では何処でも車泊は出来ても海外も同じ様に思っていたら痛い目どころか命落とす羽目にもなりかねんぞ!」
「大丈夫だよ!オーストラリアも治安いい国の部類だからさ、それに森の中にそんなに強盗とかいないだろ?」と雅治がフォローする。
「行く場所がマニアック過ぎて旅行会社でも予想がつかない所が多いのだから仕方無いだろ?」と誠も反論する。
「なら、そう言う場所は外せよ!」
"It's Greek to me."
「ゆうだい兄貴、大丈夫だよ?道に迷ったら”I got lost.”(道に迷いました)” Where am I now?”(私はいま何処にいるんですか?)と地図出して聞けばいいんだからさ~。この言葉2つでOKさ!」
「あほか!時宗!この場所はガイドも居ないような森の奥なんだぞ?道を聞ける人がそんなに居るかよ!常識で考えろよ!どうしてもそれで通すなら熊やカンガルーに聞けるように動物とのコミュニケーション能力の覚醒しろ!」
「ふむ。それできると便利だよね~。俺にそんな特殊能力有るかなぁ?」
「…………」
時宗の返答に唯野は絶句する。
"Remember, the Force will be with you, always."(忘れるな!フォースはいかなるときもお前とともにある)
雅治は、時宗の肩を叩きながら言う。
"Why dont you take over the world??"(世界を征服したらどうだ?)と誠は冗談でかえす。
「とにかく車泊だけは止めろ!責任が持てん!レンタカーの予約とホテルの予約だけはきちんとしておけ。あとあまりにアバウト過ぎるこの時間計算ももう少し細かく計算しろ!それ直したらもう一度持って来い。いいな?しかし、こんな人口密度の低い場所ばかりでは英語の勉強にはならないんじゃないか?」と唯野はブツブツ呟く。
「分かったよ!仕方無いなぁ~」
3人は案外素直に返答し予定表と地図を見ながら、またガイドブックを調べ始める。
それを見た唯野も仕方ないなとばかり時宗が積み上げていたガイドブックを1冊手に取り調べ始める。
「しかし、こんなに予定詰めなくてもいいだろ?20日間の日程でも移動時間はかなり費やす事になる。滞在時間短くして訪問地を増やすと移動ばかりの旅になるぞ?何度も言うがオーストラリアは日本と違い大きな大陸なんだ。一生に1度しかオーストラリアにいけないわけでないしお前らの事だから、世の中に出れば何度も嫌と言う程、訪れる羽目になるさ。その時の楽しみに取っておけよ」と唯野はガイドブックを見ながら言う。
「まあそうだな…………。車の中から砂漠や森林ばかり眺めててもなぁ~」と雅治が同意する。
「ならグレートバリアリーフは外すか?日本は夏だがオーストラリアは冬だからな寒いぞ海は」と誠が呟く。
「なんでだよ!この場合、外すとすればカカドゥ国立公園だろ!位置的に離れているんだから」と雅治は断固拒否する。
「ジュゴンは外せないよ!」と時宗が反対する。
「カカドゥ国立公園は絶対に外せない!タスマニアもだ!」と誠は言い切る。
「ウルル行くならマウント・オーガスタス公園は諦めたらどうだ?空港からも離れているし西方面はマウント・オーガスタスだけだろう?」と唯野が地図を見ながら言う。
「タスマニアもこれ全部回るとして何日かかるんだ?もっと省けよ?」
「タスマニアデビル見るまでは帰れないよ」と時宗は言う。
「………… 。時宗?野生とか言わないよな?トロワナ野生動物園で触れ合えるぞ?そこに行けば嫌と言う程見れるぞ?」と唯野は時宗が変な拘りを言い出さないかはらはらしながら提案する。
「時宗! ケルベロスもタスマニアデビルもそう変わりやしないさ。ケルベロスを黒く染めておけよ!」と雅治がからかう。
「そんなことしたら姉ちゃんに殺されるだろ!だだでさえ最近、ロッティに触らせて貰えないのに!」
結局3人は省く場所は決められず優先順位を決めさせて最終的には唯野がルートを決定した。
2.It leaves if compelled.
夏休みに入り5日間は補講として時宗達は受験勉強に勤しみ、7月末オーストラリアへと旅立った。
シドニー空港へと降り立ち3人は入国審査をさっさと済まし集まっていた。
「時宗は?」と座っている誠と雅治に唯野が聞く
誠が入国審査ゲートを指さす。
「え?なんか引っ掛かってるのか?まさか?入国審査の簡単な英会話で戸惑っているわけではないよな?」
「反対みたい。なんか意気投合して色々聞いているみたい」と誠は次の予定場所を確認しながら言う。
「………… 」
「いっそのこと”Tokimune, come here !”と叫んだらどうだ?」と雅治が笑う。
「うむ、しっぽ振りながら走ってくるかもな?」と誠が同意する。
「…… 。お前ら…… 時宗は犬じゃないんだから」と唯野は雅治達の冗談に呆れながら(でも似たようなもんかな?こいつら3人は興味あるものを投げると真直ぐ追いかけていくもんなぁ)などと考えている。
「この時間入国する人が少ないみたいだから、入国審査官も暇つぶしに相手しているの丸わかりだ。このまま放っておくときっと時宗の奴ずっと喋ってるぞ?この後オペラハウスに寄ってその後キャンベラに行くんだろ?時間が無くなるぞ?」と雅治は行動予定表を見ながら言う。
「第1日目から予定狂うと計画建てた意味ないじゃないか?」と誠も言う。
「お前ら先に行って俺の分と時宗の分含めて荷物引き取って置け、これが引換証だ。俺は時宗を連れて後から行くから。引き渡し場所にちゃんといろよ!ふらふらするなよ!荷物盗まれるなよ!いいな?」と言い放ち唯野は入国ゲートの時宗を見る。
「了解!頼んだよ!兄貴」と2人は楽しそうに先に進む。
唯野は時宗の居るゲートに走り寄り「時宗!置いていくぞ?何か問題あったのか?」と言うと時宗は笑顔で「この入国審査のおねーさんから色々と観光名所聞いてたんだ」といい入国審査官に”Thank you.I gotta go."とお礼を言いい入国審査を通過した。
「これ以上、観光名所を聞いても行ける時間はないだろうが!誠達は先に荷物受け取りに行ったぞ!俺達も行くぞ」と時宗をせかす。
荷物受け取り場所に着くと全員の荷物は引き取り完了していたが今度は誠しか居なかった。
「誠!雅治は?」と唯野が聞くと誠はある方向を指さす。
指さした方向には3人の外国人女性に囲まれた雅治が楽しそうにお喋りしていた。
「……………。時間無くなるとか言ってたやつはどこのどいつだ?」と唯野が言い終わるや否や
”Masaharu,come here !”と時宗が大声で叫ぶ。するとそれに気づいた雅治は苦笑しながらやってきた。
「………………。お前らこれからは全員揃うまで【stay!】だ。いいな?」
「俺達は犬かよ?」と誠が反論する。
「犬は主人の命令は順守するぞ?犬以下になるなよ!」と唯野は釘をさし波乱万丈の【暇潰倶楽部】の初の部活動の幕開けとなった。
暇潰倶楽部の活動は3人供初めての海外旅行と言うのもあったが、恐ろしい程ざっくばらんなものであった。
その兆候はオーストラリアに向かう飛行機の中で現しはじめていた。
唯野が飛行時間中に車を運転するためにある程度道を覚えようと地図を見たいと思い隣に座っている時宗に「お前、ロードマップは用意してくれるって言ってくれてたよな?見せてくれないか?」と言って唯野が地図を手にしたのはオーストラリア全土の一枚物の大陸地図だった。
「時宗?これはいったい何かな?これでどうやって運転しろというんだよ!お前日本全体地図で道路がわかるのかよ!運転出来るのかよ!」
「だって大は小を兼ねるって言うだろ?これだと行きたい所の位置よくわかるからさ!それに嵩張らないしさぁ~。旅行は荷物コンパクトにしないとさ」と苦笑しながら時宗は言う。
「なら、あの山の様に買っていたガイドブック何冊かは持って来たんだろ?見せろよ」と言うと時宗は苦笑いをして返答をしないでいる。
「まさか!まさかと思うが1冊ももって来ないとか無いよな?」
「ちゃんと予定一覧は持ってきたよ!それに、大体の位置は頭に入っているからさぁ~。大丈夫!何とかなるよ」
「…………」
「兄貴大丈夫だ。ほら俺が持ってきたよ」と誠が差し出したのは、考古学関連の遺跡に関するスクラップブックだった。
「誠。考古学関連の資料しか切り抜いて無いじゃないか?これだけでここに行けると本気で思っているのか?」
「大丈夫だよ!兄貴。おれ方位磁石持って来たからさ方向さえ、間違わなければ着くよ!」と雅治は方位磁石を差し出す。
「お前ら揃いも揃ってバカだろ?IQチンパンジー並どころかそれ以下だろ?日本で方位磁石で運転して目的地に着けるか?オーストラリアは日本より何十倍も広い大陸なんだぞ?わかっているのか!」と唯野は3人の行動に呆れ果てながら一方的な小言が繰り広げられた。
終いにはスチュワーデスから「お客様、申し訳ございませんが他のお客様に御迷惑なのでお静かにお願いします。」と注意されて終了となった。
当然の如く空港で換金したあと唯野は真っ先にロードマップを買い込んだ。
唯野は改めて3人の奇想天外な奔放ぶりに目眩と不吉な予感を感じながら一行はシドニー空港を後にした。
3.I got lost.
一行4人はスケジュールの予定時間と闘いながら旅行をしていた。
唯野は、基本この旅行の行き先に口を出すことは無かったが、旅行中の手続きは時宗達にホテルのチェックインからレンタカーの手配、レストランのオーダー、タクシーの手配に乗り込んだ時の行き先まで、当然ガイドに案内して欲しい所やその場所の質問まで、ありとあらゆる行動は3人にすべてさせていた。どうしても言葉が通じ無いときだけ本人の耳元に囁いてアドバイスをした。
最初はぎこちない発音で通じないことも多々あったが、それでも3人は自分たちの予定した場所に向かうべくジェスチャーをしながらこなしていった。
10日もたつ頃には3人は徐々に、英語にも慣れこの旅を楽しむ余裕が出来始めた頃、本来の自分たちの悪い癖も出始めていた。
「誠!本当にこの道で合ってるのか?さっきの道を真直ぐじゃないのか?なんかどんどん森の奥に進んでいるような気がするんだが?」
「大丈夫だよ!合ってるよ!このまま進んでよ!」
「誠!雅治のように砂漠のど真中を通りたいとか地図に興味ある場所を発見したからと言って本来のルート変えるなよ?」と助手席に座って地図を見ながらナビゲートしている誠に言う。
「大丈夫!ショートカットするついでにウィランドラ湖群内のムンゴ国立公園で世界最古の墓跡ちょっと見るだけだからさ」
「ちょっと待て誠、お前も本来のルート変えてるんじゃ無いか!」と唯野は怒り車を停める。
「雅治!方向的にはあっているだろ?」
「あぁ、方向的にはな?ただこの先行き止まりで無いか?」と時宗と雅治はと地図を見ながら言う。
「地図に乗って無い市道とかが有るんじゃないか?」と誠は平然とした顔で言う。
「時宗!交替だお前がナビゲーターしろ!予定通りナビゲートしないとこれから行くタスマニアでタスマニアデビル見れなくなるぞ!」
「えっ折角ここまで来たんだから ムンゴ国立公園に行こうよ!兄貴!」と誠はくいさがる。
「時間と予定を考えろ!思いつきで予定変更できる程、時間に余裕が有るのか?道に迷うとそれだけ時間ロスするんだぞ?まぁそれは良いにしても、日が落ちてもホテルにたどり着けなかったらどうするんだよ!」
「何とかなるよ!ちゃんと地図見てるんだからさ!雅治だって散々寄り道させたけどこうして何とか予定通りここまで来れているだろう?」とくいさがる。
「ゆうだいの兄貴、誠がここまで行きたがっているんだからちょっと寄って行こうよ?」
「兄貴。今日はもうホテルに戻るだけだしさぁ~寄って見ようぜ」と2人も後押し、渋々唯野が了承すると予定外の行動が日にちが経つに連れて増えていった。
当然、行き当たりばったりな行動は災難を招く。
マッコリーヘッド通称ヘルゲート(地獄の門)に船をチャーターして観光に訪れた折、ゴードン川下流から上流に向けて【マクアリー・ハーバー・ヒストリカル・サイト】を観光中ほぼ通例となりつつあった予定外の行動に出る。
ガイド兼船の船長に「原生林の中を少し探検したいと2,3時間ここで待っててくれ」といい。森の中を興味がわく方向に3人は進んでいく。
唯野は川の位置がわかる範囲までには自由にさせていたが、「もうこれ以上道から外れるな!」と注意するが3人は「大丈夫だよ!あっちだ!こっち!」と獣道を進む。
1時間して「このあたりで引き返さないと約束の時間に船に戻れないぞ!」と怒ると仕方ないなぁ~とばかり引き返そうとするが3人は気の向くまま歩いてきたため現在地を見失っていた。
「兄貴、どう通ってきたか覚えてる?」と雅治が聞く。
「お前ら、地図に通ったチェックポイント記入してないのか?」
「ゆうだいの兄貴、残念ながらここには熊やカンガルーも居ないから特殊能力も使えそうにないよ?」と気を紛らわせるために言った冗談なのか定かではないが時宗が言う。
「方位磁石あるんだろ?地図で川の方角確かめてその方向に進んでいくしかないだろ?」
「う~ん。ポケット入れていたらどこかに落としたんだよなあ~」
「だよな~って呑気なこと言ってる場合じゃないじゃないか!だからあれほど俺は予定の行動しろと言っただろうが!」
「あの海峡は本当に地獄の門の入口だったのかぁ~」と誠は空を見ながら言う。
「お前らここで死に果てても本望かもしれんが俺は嫌だぞ!今後一切予定外の行動は禁止だ!破った場合その場で旅行は終わりだからな!」
「いいけど・・・・・・。明日でどの道終わりだよな?」と3人は顔を見合わせながら言う。
唯野は足跡をたどりながら、記憶をフルに巻き戻しながら来た道を戻っていくが3人は相変わらず
「兄貴!あっちな様な気がする!」
「俺はフォースが向こう側から感じる」
「全然動物にも会わないよねえ~川に出たらカモノハシとか見れないかな?」とか脳天気に好き勝手言っている。
ガイドの約束した時間は大幅に過ぎ、唯野も絶望に苛まれてきた頃。
「あ!みっけ!」と時宗が嬉しそうに叫ぶ。
「タスマニアデビルでも見つけたのか?コアラか?熊か?」と雅治はこういう場合でも冗談を言っている。
「じゃん!これ雅治の落とした方位磁石だろ?」
「おー、ほんとだ!でかした時宗!」と雅治は喜ぶ。
「ちゃんと来た道を戻ってきているみたいだね。たぶんこの道真直ぐ行けば川に出るんじゃないか?」と誠は地図を見ながら言う。
「川に出れたとして大幅に時間過ぎているのにガイドが待っててくれているかが問題だ!」
唯野の予想通り何とか船を降りた場所にたどり着いたがすでに約束の時間を2時間以上過ぎており、船も居なかった。
4人は川原に座り込みどうするか途方に暮れていた。
「もし無事に日本に帰れたら来年は本物の【地獄の門】見に行こうぜ」と雅治が呑気に言う。
「トルクメニスタン国のダルヴァザか?」と誠がすぐに反応する。
「お前らどんだけ地獄が好きなんだよ!俺は死んでも天国しか行かないぞ!」
「そういえば隣のニュージーランドは【天国に一番近い島】って言われてるよな?ここで、兄貴にもしものことがあったら俺達でニュージーランドまで行って兄貴の骨埋めてやるよ」と誠が冗談にならない冗談を言う。
「なんでお前らだけ生き残る設定になってるんだよ!」と唯野は怒る。
「ん?どう考えても俺達こんなところでは死なないよな?」と雅治と時宗も顔を見合わせながら同意する。
「で、トルクメニスタン国のダルヴァザに何があるの?」と時宗は不思議そうに聞く。
「お前知らないのか?地下の豊富な天然ガスの採掘失敗して落盤事故が起きて、採掘作業用の装置もろとも崩落、その場所に直径50〜100mにもなる大きな穴が開いてだな有毒ガスの放出しまくってるのを食い止めるため、仕方なく点火することになったが、豊富な可燃性ガスが地下から絶え間なく吹き出るため、延々と燃え続けるてるんだよ。 それが地獄の門のようだと言われて今じゃ観光名所になってる」と雅治が説明する。
「あほか!トルクメニスタン国がどこにあるか知ってるのか?カスピ海に面し、アフガニスタン、イラン、ウズベキスタン、カザフスタンと国境を接する国だぞ?近隣諸国に戦争が勃発しているような紛争地に連れていけるかよ!」と唯野が怒る。
「なんか工事の調査した責任者どういう調査したんだろうな?」と時宗はまじまじと考える。
「なんかお前らの将来の失敗を絵にかいたような話だな?お前達ならやりかねん。」と唯野が笑う。
「俺達がそんなわかりやすいヘマするかよ!」と雅治が反論する。
「今日はここで野宿かな?あ!カモノハシ!」と時宗が川を指さす。3人もそれにつられて川の方向を見るとガイドの船が戻って来る姿を見た。
船長の話によると約束の時間が1時間過ぎても戻ってこないので違う場所に間違ってたどり着いたのかもしれないと思い川沿いを探してくれていたそうだ。
こうして3人+1人の長い夏休みは無事?終了を迎える。