It's a small world after all.
昼休み
藤堂が自分のデスクで虚ろな目で封書からカードを出してもて遊びながらため息をつく。
「あと一週間かぁ~。はぁどうしようかなぁぁ」
上着のポケットから携帯を取り出してアドレス帳を開いてまた、ため息をつく。
「藤堂先輩。この書類の地獄中で何悩んで居るのさ?」と玲音が書類の山の隙間から顔を出す。
「えっ?玲音様どうかされましたか?何か問題でも?」と慌てて立ち上がる。
「ん?俺が質問してるんだけどね。何度もノックしても返事無いからさ勝手に入って来たけど……まずかったかな?」
「ぁあ、ノックに気付かず申し訳ございません。用事があれば何時でもご自由に入って来てください。私の方は私事で大したことではありませんから……。玲音様こそ何かありました?」
「いや俺の方も大した事では無いんだけど斎藤先輩が藤堂先輩を訪ねて秘書室フロアの休憩室に来ているよ?先輩はここには入れないから呼びに来たんだけどさ」
「拓哉が?」
「うん」
「ありがとうございます。では私も休憩室に行きます」と言うと机の中から先程とは別の封書を出して玲音と一緒に休憩室に向かう。
休憩室では廉が斎藤楽しそうに話しをしていた。
「連れてきたよ」と玲音がにこやかに廉の隣に座る。
「ほら拓哉。お前のお目当てはこれだろ?誰と行くんだ?」と藤堂は先程の封書を渡す。
「あぁこれこれ。十碧サンキュー」
「ん?」と廉と玲音がその封書に興味を示す。その視線を察して藤堂が答える。
「例の銀座のレストランのプレオープンの招待状ですよ?玲音様方も要りますか?」
あぁあれかと言う顔で両人の興味は一気に冷めたようで玲音はとりあえず確認だけの言葉を発する。
「千景とジョンと悠貴には手配してくれた?」
「ええ。先日自宅の方に届くように送付しておきました」
「ありがと。なら俺は要らないかな。興味も無いし。廉は?」
「俺?そのイベント男女同伴が必須だろ?そんなかしこまった場所に連れて行く相手も居ないよ。それにそのイベントは、巷でかなり騒がれているから人がかなり多そうだし、俺も興味無いから家でのんびり昼寝している方がいいな」
「えっ?世界屈指のシェフの料理を無料で食べれるんだよ?
まだオープンもされて無いのにもう既に予約は3年先まで埋まっていてそれでもまだ予約が入り続けているから、気軽に行って見るチャンスはプレオープンのイベントの時位しかほぼ無いのに?」と斎藤は身を乗り出して説明する。
「そうなんですよね。料理もさることながら銀座のビル最上階から3フロア豪華なそれぞれの食文化に合った内装で室内は完全個室から半個室、ちょっとした披露宴会やパーティーも出来る大部屋まで有るんですよ?料理だけでなく食器や雰囲気を味わう事にも力を注いで居るらしいですよ?
拓哉の設計と施工と言うのを取り除いても行って見る価値が有ると思います。
まぁ、玲音様方は私どもとは違いどんなに予約一杯でも鶴の一声で何時でも行けるでしょうから焦る必要は無いでしょうね………」と藤堂はしみじみ考え込む。
「十碧、今回の内装は俺だけのデザインじゃ無いから………。世界のフードプロデューサーのリチャード氏が手掛けているから」
「なら尚更ですよ?」
「う~ん。別に豪華な部屋でフランス料理や懐石料理より島の事務所でみんなとわいわい鍋の方がいいなぁ。俺は。
それに仕事でもそんなかしこまった所は尚更行きたく無いな。食事は楽しくくつろげないとおいしくないよ」と玲音は興味を示さない。
「俺も会社でカップ麺でもいいかも。女性をエスコートしながらそんな豪華な部屋でご馳走食べても気遣いし過ぎて胃が痛くなりそうだし、何よりせっかくの料理も食べた気しないしな」と廉も興味が無いと言う。
「エスコートかぁ~。確かに女性同伴だとそれはあるなぁ~。
でもそれを踏まえたうえでも世界有数のシェフの料理に厳選素材の調理は是非一度は食べて見たいよなぁ~」とまじまじと斎藤は言う。
「で?お前は誰と行くんだよ」と藤堂は斎藤に聞く。
「ん?薫だよ?」
「ん?田辺薫?」
「あぁ」
「より戻したのか?」
「まさか、あのプライドの高い薫が自分が振った相手と復縁とかあり得ないさ。それに薫には今ちゃんと彼氏いるからさ」
「ならどうして?」
「あぁ、恋愛関係は終わっても友人には変わりないし、元々お互い嫌いになって喧嘩別れしたわけでもないからさ。現に時々俺の課の書類の不備を突き返さないで薫の方でこっそり訂正して処理して助けてくれているからな。
まぁその見返りに薫が俺がこのプロジェクトに関わって居ると聞いてプレオープンのチケット手配するように催促してきたんだよ。
でもいざ招待状手に入るとなると薫の彼氏は今月末まで海外出張が入って同伴者が居なくてさ。ちょうど俺も誰を誘うか迷っていたから一緒行くことにしたんだよ。俺的に薫なら無用な気使いは必要ないからな」と笑って話す。
「………。俺なら絶対あり得ない選択だ。その彼氏の方はいいのかよ?留守中に元彼と食事に行っても。バレたら揉めるんじゃ無いのか?」
「彼氏っても相手は同級生だったあの月見里だよ?十碧覚えてない?俺との関係が終わったと聞いて奴からなんとか付き合いたいと色々相談されてさぁ~。奴の熱意に負けて薫との橋渡ししてやったし、プレオープンの件も本人からも電話で当日日本に戻れ無いからよろしくと頼まれたよ?それより十碧は誰と行くんだ?」
「……………」
斎藤の質問にばつが悪そうに藤堂は長い沈黙をする。
「もしかして……先輩……。まだ誰も誘えて無いの?」と玲音が痛い所をつく。
「……………」
藤堂はうつむきため息をする。
「秘書課の女性社員を誰か誘えばいいじゃ無いですか?話題のスポットに便宜上一緒に行くだけですし、プレオープンに行きたい女性も多いと思いますよ?」と廉が提案する。
「いや、部下はちょっと……。プライベートだからこそ、誰に声かけたかけないで職場に波風たてたく無いですから」と藤堂はきっぱりと否定する。
「そっかぁ。そうですよね。プレオープンのイベントでなくても藤堂先輩と食事に行きたい女性社員は多そうですからね」と廉は考え込む。
「いや、そんなことは無いけど……。でも一応誘てみようかなと思っている人は一人居るには居るんですが60%の確率で断られそうなんですよね。いや70%かな?」
「えっ!?藤堂先輩の誘いを断る女性って誰?」と玲音は興味深そうに身を乗り出す。
「十碧!新しい彼女が出来たの?今度ちゃんと俺にも紹介しろよ。俺達に仕事以外での内緒ごとは無しだよな?」と斎藤も興味深そうに聞く。
「拓哉!良く考えろよ!もし、付き合ってる彼女なら断られる心配は無いだろが!
もう少しお前は無駄に沢山の使ってない脳細胞を働かせて考えろよ!」と藤堂は斎藤を(この能天気者が!)と内心思いながら答える。
「えっ?何?もしかしてそれって十碧の片思い?これは明日大雪が降るかもな?」と藤堂の思いとは裏腹に斎藤は違う方向に脳細胞を働かせ結論つげながら能天気に窓の外を眺めながら笑う。
「藤堂先輩が片思い………。しかも先輩の誘いを高確率で断る……。でも全く可能性が無い訳でも無い。しかも、秘書室では無く、海外在住の人でも無い。………」と廉は腕を組み真剣に推理を始める。
「えっ?廉君?拓哉の戯言を真に受けてはだめですよ?」
「出会いは何時ですか?」と廉は鞄からタブレットを出して過去のスケジュールを見る。
玲音もそのタブレットを覗き込み「この間は海外行っていたから……。この間も俺達と一緒に仕事してたから女性と会う機会なんてなかたじゃん?もっと前だよ?」と廉の推理に参加する。
「いやいや誤解しないでください。片思いでも何でもありませんよ!学園時代の後輩ですよ。真宮寺美空と言って俺達の次の代の生徒会役員で、引き続きとかで色々教えて居た人ですよ。
卒業後かなりの間、何の音沙汰も無かったんですよ。たまたまひょんなことから再会した時に生徒会引き継ぎ時に俺が直接色々教えてたから顔と名前を覚えていただけで……」
「ひょんな事?」
「前に足の骨を折った時に時間の都合上、統轄長の代理で学園に色々書類と統轄長の指示で理事長代理の仕事していた時に時間の合間をぬって大学病院でギブス外してもらった時にたまたま再会したんですよ。
お互い長い年月を経ても顔も名前もしっかり覚えていて懐かしさから話しが盛り上がって今度是非、食事でも行きましょうと言うことになって連絡先交換したんですが、お互い何度か連絡を取り合ってみたものの、両方が両方とも仕事が忙しくてなかなかスケジュールが合わなくて実現してないんですよ。
だから今回はいい機会かなとは思うけど誘っても受け持っている患者さんによっては断られる可能性が高いから躊躇しているだけです」
「大学病院………真宮寺………女医………。」
廉と玲音は顔を見合わせる。
「もしかしてその人かなり美人だけど、他人に対してストレートな言い方する?」
「そうですね。私も美人だと思いますが少しぶっきらぼうで愛想が足りないかもしれませんね。
でも彼女とじっくり話しをしてみれば努力家で、素直に人の意見を聞き入れながら、でも他人の意見に流されない。向上心の有る人ですよ。
医師の腕もかなりのものだと聞いています。知り合いですか?」
玲音と廉は顔を合わせて
「千景の失恋相手!」
「えっ?」と藤堂は驚く。
「なんだ十碧。美空ちゃんと食事にいきたかったのか?それならもっと早く言えよ! 美空ちゃん千景君とも知り合いだったのかぁ~。」
「ええっ?拓哉に言ってどうなる?」
「彼女は俺の貴重な女性の合コン要員だよ?まぁ忙しい人だから5回に4回は断られかドタキャンされるけどなぁ~。
まぁわりと前もって言えば仕事調整してくれて急患が入らない限り参加してくれるよ?」
「何で拓哉が真宮寺と付き合い有るんだよ!それに今までそんなこと一言も俺に話ししてないよな?」
「ん?美空ちゃん薫の飲み友達だからさ。卒業後も良く薫と一緒に遊んだよ?話題に出なかったのはお前合コンとか薫との事は一切興味を示さない無いだろ?」
「…………」
「齋藤先輩!合コンする時はちゃんと俺にも声かけてよ!」と玲音が反応する。
「あんなに無理やり千景に合コンセッチングさせたのにお前まだ行きたいのかよ……。俺はもう付き合わないぞ?」と廉は玲音に釘をさす。
「ははっ玲音君呼んじゃうとそれはもう合コンでは無くなってるし、他の野郎どもから半殺しの目に合うからそれだけは勘弁してよ。しかし美空ちゃんかぁ~。案外十碧とお似合いかもなぁ~」と言いながら斎藤は携帯を出してどこかに電話をかける。
「あっ、もしもし?斎藤だけど今電話大丈夫?そう。良かった。美空ちゃん今月の15、16、17のどれか空いて無い?
今話題の銀座のレストランのプレオープンなんだけどさ。招待状は有るけど同伴者の居ない可哀想な奴居るんだよ。俺の親友なんだけどさ。藤堂十碧覚えている?
美空ちゃんさえ良ければ藤堂と一緒に行ってやってくれない?俺も薫も行くからさ。その3日の日にちは美空ちゃんの予定にあわせるよ。うん。そう。ありがと。じゃあ当日楽しみにしてるよ」と言って電話を切る。
「『喜んでご一緒します』だって。良かったな十碧フラれなくてさ。日にちはまた改めて連絡するって。ちゃんとエスコートしろよ?」
藤堂は複雑な顔をし、斎藤は楽しそうに笑う。
それを聞いていた廉と玲音は隅でこそこそと話す。
「世の中って狭いよな?真宮寺女史………。どんな人何だろう?玲音!プレオープンの日お前女装しろ!先輩達について行くから」
「なんで俺が女装なんだよ!廉がしろよ!」
「アホか?俺がすると店に入れてもらえ無いだろ!」
「なら、一緒に行く女性を調達すれば良いじゃんか!」
「お前は調達できるのか?」
「一緒に食事するだけだろ?そんなの1人や2人訳ないさ」
「なら俺の同伴者も調達してくれ」
(千景をかばい藤堂先輩が骨折する羽目になり、その骨折のお陰で藤堂先輩は真宮寺女史に再会する。
藤堂先輩と真宮寺女史の関係を知らずに千景は片思いをしている。
なんか世の中狭いよなぁ~。それに各々が因果な結びつきだよなぁ?)と廉はしみじみ考え込む。
翌日、廉の所にある人物から電話が入る。
「廉先輩!やっと捕まった!
玲音先輩の携帯は電波入ってませんよ?
廉先輩からちゃんと充電するように言って下さいよ。
それより!なんで俺だけ何時も蚊帳の外なんですか?俺にもプレオープンの招待状手配してくださいよ~」
「ん?あぁ。ごめんごめん。潤も今こっちに居るんだったな。
でも、今回は樹里亜は、千景と行くらしいぞ?他に同伴してくれる誰か居るのか?」
「そんなこと心配してくれ無くてもこう見えても俺にだって女友達の1人や2人ちゃんと居ますよ」
「あぁ。そうか、そうだよな。なんとか手配するよ。今、拠点は自宅か?」
「いえ、今はあの島のホテルで訓練がてら加藤さんの仕事手伝ってます。海の中の作業は宇宙の作業と似ているので」
「そうか。相変わらず頑張ってるんだな。手配出来たらホテルのロビーに届けるよ」
「よろしくお願いしますね。先輩達も行くんですよね?一緒にどうですか?」
「うん。そうだな時間が合えばな」と言って電話を切る。
(はぁどんどん増えていくな……。
しかし、玲音の奴はどこ行ったんだ?
鉄砲弾の様に出かけると帰ってきやしない)
廉はぶつぶつと愚痴を言いながら藤堂に招待状頼む為に社中を探す。
その頃、藤堂は秘書室フロアに向かう為に時宗とエレベーターに乗って居た。
「藤堂君、マーケティング部からプレオープンの招待状これ以上の手配は無理だと言ってきてるが……。誰を招待するの?
あぁ。そういえば兄貴の所には、まだ手配して無かったよね?」
「唯野夫妻にはちゃんと手配してあります。加藤部長と伊集院教授にも」
「あぁ、そう。ありがとう助かるよ。で、残りの二組は藤堂君の知り合い?」
「知り合いと言うより……」
「ん?俺の知ってる人?アレックス?ラッセル?」
「あ~。あの両名に手配するのは、忘れてました。如何いたしましょう?」
「そうだね。あの店オープン前なのに、なんか想定以上に話題になっているみたいだね。もう少し枠増やして宣伝するか?
グループ関係者は、ひとくくり別に催ししてプレオープンではなく事前に枠をとって感想やアンケートを取りプレオープンにその意見を反映させてプレオープンは、一般客とメディアにもっと割り振って招待すればいいかもね。そうすれば藤堂君の知り合い二組も招待状割り振れるでしょ?」
「えっ?いえその場合……。必要無くなりますので……」
「藤堂君と斎藤君のご両親では無いの?誰?」
「はぁ玲音様と廉君なんですが……。最初は興味無いと言っておられたのですが翌日に是非行きたいと」
「えっ?あの2人ちゃんと同伴者いるの?まさか結婚したい相手とかじゃないよね?
何時からそんな女性出来たの?廉はともかく玲音の場合勢いで結婚してしまいそうだし。下手に反対すると火に油注ぐ結果になりかねないし参ったな。これは、直ぐにママに相談しないと」
「えっ?統轄長?結婚云々は今の段階では無いかと……。統轄長!」
「とりあえず藤堂君。マーケティング部と話しをして先程の意向で進める様に伝えて。後マーケティング部だけでは今回大掛かりなので秘書室も手伝ってあげて。
私はちょっと私用で時間貰うよ。なので急用以外取り次がないで……。参ったな……。考えても無かった。でも年からすれば無くもない話しだよな……。」
「だから……。玲音様の件は、今回は無用の心配ですよ?聞こえて……ます……?」
時宗は藤堂の声は一切頭に入って無い様で携帯を手にしながら統轄長室へ入って行った。
(何時も冷静沈着で物事の本質をじっくり見極める人なのにどうして息子の事になると別人の様になるんだろう?
普段は、ちゃんと息子2人の性格は十分知り抜いて居るのに、こう言う事にはなぜか?考えが浅いんだよなぁ………)
藤堂は呆れながら去って行く統轄長の背中を見ながら呟いた。




