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Nostalgia - 追憶 -  作者: 天野 花梨
The disaster occurred on their way home
36/40

An ill life an ill end.

 1.One may look at a star but not pull at it.


 揉めに揉めた新規事業案騒動後。

 唯野は校長室で頭を抱えていた。

 その横でアレックスが犬種図鑑をパラパラとめくりながら話しかける。

「ユッキー、アメリカ原産のアメリカンコッカースパニエルなんてどう?

 それかスヌーピーのモデルのビーグルとかは?

 俺としてはイギリス原産のテリアなんかお利口だから好きだけど気性が荒い子多いからなぁ~。

 コッカーもビーグルも小型犬だし、気性も大人しいお利口な元気な犬種だよ?

 それかウェリッシュコーギーなんてどう?短足の愛嬌のある子だよ?短毛だし手入れしやすいよ?」

 アレックスは犬種のページを開き見せる。

「はぁ~。俺に見せてどうする?ここに電話かけて嫁と話しして決めてくれ。ただし大型犬はダメだぞ?小型犬で押せよ?」と電話番号と思われる番号の書かれた1枚のメモ紙を溜め息混じりに渡しながら言う。

「ユッキーの家なら大型犬でも飼えるのになぁ~。アフガンハンドなんか超お利口で大人しいお奨めの子だよ?必要な訓練は僕がしてあげるからさ」

「アレックス!小型犬だ!小型犬以外はダメだ!」


 その様な事を言い合って居るとノックがし、そこに何時もの2人が登場する。

「ん?アレックスなんだ?珍しいな?こんな場所に居るなんてな」と入って来た男達はアレックスを気にしながらも何時も通り大手をふって入り込む。

「Hey!マーサ. It’s been ages.」と嬉しそうに迎えるが残るもう1人は「なんだ?お前ら暇なのか?」と言いながら表情は明らかに【今、お前らの相手なんかしたくない】オーラ全開にしている。

「今日の兄貴は、何時にも増して御機嫌斜めだな?」と口にする言葉とは裏腹に何の気兼ねもなく何時の様にソファに座りながら居座る態勢を作り誠が言う。

「俺達に暇なんか有るわけ無いだろ!今日は講義が有るからこうして時間を割いてここに来てるんだよ!」と雅治は不機嫌に言いながら誠と同じ様にソファに座る。

「忙しいなら、ここに来ないでさっさと自分達の準備室に行って講義の準備でもしろよ」

 明らかに唯野はこの2人をここからなんとか追い出したいオーラ全開で言うが2人はそれを敏感に察しはしているがそんなことは全く無視して何時も通りくつろぐ。

「ん?なんでアレックスがここに居るんだ?チューイの様子でもおかしいのか?」と雅治は壁際にある鳥籠まで行き覗き込む。

 その鳥籠の主は、自分の主人を認識し、愛くるしい声で何時も通り元気よくここから出せと言わんばかりに「マーサ!マーサ」と鳴き鳥籠内で暴れる。

 誠はアレックスに興味を持ち素早くアレックスの隣に立ち持っている本を覗き込み取り上げて見る。

「なんだ?犬の図鑑じゃないか?学園に番犬でも飼うのか?」とぺらぺらとページをめくり眺める。

「ううん。違うよ。ユッキーの家で飼うんだよね」とアレックスが答えるとその言葉を遮る様に「アレックス!要らない事は言わなくていいから、自分の部屋に戻ってさっき渡した番号に電話かけて決めてくれ」

「えっ~。ここではダメなの?折角久しぶりにマーサに会えたのにぃ」

「アレックス、お前昼から来客が有るとか言ってただろ?そろそろ戻った方がいいんじゃないか?」

「あー。そうだ!今日はレオンが来るんだった!ならレオンとも相談してみるよ」と名案がわいたとばかり喜ぶ。

「玲音………?!あっいや、相談なんかしなくていい。やはりここで決めろ。さっさと決めろ。アレックス!玲音にはこの件は言わなくていいからな?いや、絶対に言うな!」と明らかに焦りながらアレックスを引き留める。

「ん?兄貴が犬を飼うのか?何でまた?」

「明日は、間違えなく雹が降るな?」と不思議そうに2人が唯野を見る。

「俺が飼うんじゃないよ………」と呟くが2人はもはや聞いておらず1人は鳥籠からオカメインコを出し、ソファに戻りながら

「アレックス、犬の名前は【インデアナ】だからな。雄にしろよ?」と笑いながら言う。それに反応してもう1人もソファに戻りながら

「【インデアナ】と言う犬ならアラスカン・マラミュートだな?」と図鑑で犬種を探しながら言う。

「何でお前らが勝手に決めるんだよ!飼うのは小型犬だ!大型犬じゃない!」

「ふーん、そうか!やっぱり兄貴、犬を飼うのか?しかし何でまた?」と2人は楽しそうに聞く。

「この悪魔ども……」と唯野は呟きながら仕方なく事情を説明する。

「あの遭難騒動後、嫁が書き置き残して実家に帰ったんだよ!彼女いわく『何時も何時も好き勝手に遊び回って、その挙げ句の果てにみんなに多大な迷惑や心配をかけて当の本人は反省していない。

 それに自分は毎日家にこもって家事ばかり・・・・・・。長期休暇にも何処にも連れて行ってくれるどころか自分だけ遊びに行くか引き籠るかで結局1人寂しく家で過ごすしていて一人暮らしと何の変りもない。こんな結婚生活はもう御免です』だと。三行半を突き付けられたよ。

 前に働きに出ると言ったが彼女は教員しかしたことないからな。ブランクも長いしで反対したのもあいまって、俺が何度も何度も勝手に連絡もせず好き勝手に家を空けるので切れたんだよ!」

「なら兄貴、すぐに奥さん迎えに行かないと」と雅治が心配そうに言う。

「お前に言われなくてもすぐに行ったが、どうにも今回ばかりは怒りがひどくて、どうしても俺には直接会ってくれないんだよ!」

「あらま。俺がとりなしてやろうか?」と明らかに面白そうに誠は聞く。

「お前も同罪なのに誠が出て行ったら余計拗れるだろうが!俺に関わるな!」

「…………。それと犬飼うのと何の関係が?」

 誠は唯野に拒絶されるが平然と質問を続ける。

「どうしても、俺の話しを聞いてくれないからメアリーさんに頼んで電話で説得して貰ったんだよ!

 その結果、子供も居ないし昼間1人で過すのは嫌だと言うので犬を飼いたいと。

 犬を飼ってくれるなら今までの件は水に流すと話しをつけて貰ったんだよ!

 でも、飼うと言っても初心者だからな。飼いやすい、大人しい子をアレックスにアドバイスして貰ってたんだよ」

「ふーん。犬よりチューイの方がいいんじゃないか?」と誠は雅治の肩の上に留まって居るオカメインコを見ながら言う。

「チューイはマーサのだからダメだよ!」とアレックスが怒る。

「いや、俺は飼えないし……」と肩に大人しく嬉しそうに乗っているチューイを見ながら雅治は苦笑する。

「嫁になついてくれないと意味無いし、昼間はこの学園に置いて居たら全然意味が無いだろ!それより、お前ら玲音君には、この事言うなよ?絶対だからな!」

「俺達より、時宗が言っているんじゃないか?」

「アホか!こないだ島で犬飼うのを無かった事になったばかりなのに火に油注ぐ様な事を時宗が言うわけ無いだろが!言うとすれば能天気な考え無しのお前ら2人だよ!」

「しかし、奥さんよく犬で許してくれたよな?離婚届突き出されてもおかしく無いのにな?やっぱり因果応報って有るんだなぁ」と誠はストレートに唯野に言葉を突き刺す。

「いや、奥さんは出来た人だからこんな数学バカの兄貴と今まで我慢してやって来れたんだぜ?その寛容さがペットで許してくれたんだろ?」と雅治もストレートに言う。

「お前らな!自分達の事は棚に上げて人の批判するんじゃない!わかったらさっさとこの部屋から出て行けよ!」と唯野は自分でも自覚しているのか?2人の言葉をこれ以上聞きたく無いとばかり怒る。

「まぁまぁ、兄貴そんなに怒るなよ!折角だから俺達が飼う犬を決めてやるよ。なっ?雅治」

「おう。俺達に任せておけ!」

「任されるか!俺が決めるからお前らは関わるな!」と唯野は言い放つが3人は既に聞いてなく、アレックスを含めてなんだかんだ本を見ながら話している。

「あのケルベロスは何の犬種だったかな?」

「あー。時宗の姉ちゃんの犬か?あの犬、ハーデースには似ず誰にでも愛嬌を振り撒いて間が抜けていて可愛かったよな?食べ物見るとお座りして貰えるまで尻尾ふって待ってたよな?

 しかし、俺達はあんまり遊ばして貰え無かったなぁ~」

「お前が時宗の姉貴怒らすらだろ?結局なんで死んだだっけ?寿命では無かったよな?確か時宗の話しだと……」

「ん?確かイギリス留学中に一時帰国した時に時宗が姉ちゃんに隠れてこっそりお菓子やってて咽に詰まらせたんじゃ無かったか?

 泣きながら逃げる様にイギリスに帰って来てただろ?

 それ以来、それまでは頻繁に日本に帰省してたのにパッタリと戻らなくなったよなぁ~。ハーデースが怖くてさ」

「あー。そう言われれば時宗の奴、姉貴に相当の怒りを買ったから当分の間、帰国できないとか言ってたな?

 それに時宗もハーデースに隠れてかなり可愛がっていたから自分が原因で死んだ事がかなりのショックで1週間位、時宗の奴、泣いてたよな?その苦い思い出も有って玲音にペット飼うの許さないんじゃないか?」

「まぁ~。ハーデースも自分の愛犬にドッグフード以外やるなと言って注意して居たのにそれ破って殺したんじゃなぁ。誰だって怒るわな?」

「よく言うよ。誠、お前だって散々ケルベロス見るたびにお菓子やって居ただろ?」

「いやぁ、あのケルベロス名前の通りお菓子好きだったよな。俺達が菓子食べていると愛嬌振り撒きながらねだりに近寄って来るから……あんな風に見つめられるとさぁ……。そう言う雅治だってやってただろうが! 」

「しかし、愛嬌ある食いしん坊の犬だったよなぁ~。死んだと聞いた時は流石に半日位俺も落ち込んだよなぁ~。時宗も食いかけだったからと言って蒟蒻ゼリーなんかやるか?普通……」

「犬や猫にお菓子なんて毒盛っているようなもんだよ?それに犬はエサ有ればお腹減って無くても有れば有るほど食べちゃうんだよ?それに人間と違って咀嚼して食べる訳でもないし、ちぎって丸のみする動物に蒟蒻ゼリーなんて………」とアレックスは呆れながら理解出来ないと言う態度を見せる。

「しかし、チューイは雅治に本当によくなついて居るな?世話している訳でも無いのにな」と誠は雅治の肩に大人しく留まって居るオカメインコを見ながら言う。

「僕が、半年間世話しながら躾たんだから当たり前だよ!」とアレックスは言う。

「ん?どうやって俺になつく様に躾たんだ?」と雅治は興味を示す。

「卵を人工孵化させて最初にマーサの写真を見せながら世話したからね。エサやるときもマーサの写真見せながらやってたからね。君の御主人はマーサだよと言い聞かせた結果だよ」

「…………」

 そんな話をしているとノックがし、唯野が今一番現れて欲しくない青年2人が現れる。

「ゆうだい校長!入るよ~」

「お邪魔します」

「……………」

 校長室の全員が息を飲み誠は持っていた図鑑をテーブルの下に素早く隠す。

「ん?どうしたの?なんか今日は何時もと様子が変だね?あれアレックスのおじさんここに居たの?珍しいね?後からおじさんの部屋に行こうと思ってたのに………」と玲音は辺りを見渡しながら言う。

「唯野校長、顔色が優れない様ですが大丈夫ですか?」

 顔をひきつらせ黙り込んで居る唯野を見て廉が心配そうに言う。

「えっ?いやぁ、大丈夫だよ!こいつらが心労の種ばかり蒔くので疲れがたまって居るのかなあ?しかし、2人揃ってここに来るのは珍しいね?何かあったのかな?」とひきつり笑いをしながら笑う。

「あ~。そうだ!親父からの言伝で『決まったら早くママの所に連絡入れてくれって』ゆうだい校長がママに用事とは珍しいよね?何頼んだの??」

「えっ?いや、大したことではないよ。2、3日中には連絡入れるよと返答して置いてくれるかい?」と焦りながら作り笑顔で答える。

「あっそうそう。伊集院教授、親父が電話くれって。ちゃんと伝えたからね」と玲音は誠に念をおす。

「何だろ?しかし奴は今どこに居るんだ?」

「そういえば、最近時宗の奴大人しいな?嫌な予感がする」

「・・・・・・。お前らがそれを言うのか?」

「親父達はイギリスだよ。遠い親戚の人が亡くなったみたいで葬儀にママと一緒に爺さんたちの代わりに参列するために渡英してるよ」

 そこに校長室に電話がかかる。

「はい。ん?伊集院教授?ああここに居るが代わろうか?誠。お前に来客だと・・・・・・事務局から内線だ」と電話を渡す。

「なんか今日は、ここ騒がしいね?」と玲音はちゃっかり雅治の隣に座り込み居座る。

 それを見た廉も加藤の向かいのソファに座り込み雅治に話しかける。

「結局、養殖の件はどうされたんですか?」と少し心配そうに聞く。

「ん?あぁ、あれね。それより廉、俺の部署に来てくれる気になったか?」

「残念ながら無理ですよ!」

「そうかぁ~。廉が来てくれればな~。考えなおさないか?忙しいが来てよかったと思えるぞ?新しい世界を見せてやるよ。俺が確約してやる」

「うれしい申し出ですが・・・・」

「そうかあ残念。この前の騒ぎのとばっちりで散々な目に合ってるんだがなぁ~」と言いつつ隣の玲音を見るが玲音はチューイに夢中で聞いてない。

「一応お父さんからプロジェクトは進めるように言われて日本の都心近海で養殖に向きそうな場所探しに入りましたよ?」

「あぁ、聞いてるよ。あの計画は学園全面研究プロジェクトとしてここの海洋学の学生チームで研究の一環として進めることとなったよ。非常勤だろうと俺はここの講師だからな否応なく巻き込まれてるさ」

「僕の所にも生物学の研究課題としてトリフの人工栽培押し付けられたよ~~」とアレックスも文句を言いながら廉の隣に座る。

「結局、学園管轄の研究課題で櫻グループのバックアップで押し込められたのさ。だから統轄責任者は兄貴で、各々の学部で提携しつつ研究、開発していくようにとな。あっそういえば!誠!お前だけ当事者のくせして何のお咎めなしかよ!」

 電話を置きながら誠は「そうでもないみたいだ・・・・・・」と渋い顔をしながら言う。

「とりあえず俺、来客を向えに行って話聞いてくるんで、研究室に戻るわ」と言って出ていく。

「何だよ!珍しいなここに誠に来客とは・・・・・・」


「ところであのプロジェクトで無理やり飼う予定の犬はどうなったんだ?」と雅治が興味本位に聞く。

「ん?セントバーナードだよ?名前は【ヨーゼフ】って名前にする予定だったんだ」

「アルプスの少女ハイジかよ・・・・・・」

「【パトラッシュ】はフランダースの犬だね。でもフランダースの犬の犬種は特定されてないね。【バロン】はペリーヌ物語だね。あれはダックスに似てるけどやはり特定はされてないね。【ラスカル】はアライグマ~」

 楽しそうにアレックスは言う。

「イギリス人の癖になんで日本のアニメに詳しいんだ?このオタク野郎」とあきれながら雅治はアレックスに聞く。

「マーサにオタク呼ばわりされたくないね。それに日本のアニメは海外でも多く放送されているからね。常識さ~。そういえばブリーダーさんに断り入れておかないといけないなぁ~」

「アレックスのおじさん何とか親父に【ヨーゼフ】飼える様に説得してよ~」

「レオン。ちょっとそれは僕でもそれは無理だね~。トッキーにかなり念を押されたからね。次の機会を狙おう」

「もう子犬は産まれてるのか?」と雅治は不思議そうに聞く。

「うんん、今度生まれたら譲ってと知り合いのブリーダーに頼んでるだけだよ。そんなにペットとして飼われている犬種ではないし、高価でそのうえ大型犬だからね。予約して待たないと手に入らないよ。雑種とかなら居るけど救助犬とトリフ探しの為に飼う予定だったからね。ダックスフンドなら知り合いに今生まれたばかりの子犬居るけどね~。愛玩犬だね」

「バロン!」と玲音の目が輝く。

「ぬいぐるみで我慢しておけ」

 廉がどこからなく犬のマスコットを出す。

「ぬいぐるみならJr居るから要らないよ!俺はぬいぐるみ集める趣味は無い!」と玲音はふてくされる。

「そうか、ならこいつは要らないのか?せっかく買ってきたのにな~。俺がストラップにでもつけるか?」

「えつ、廉!」

挿絵(By みてみん)

 子供のようなやり取りを見ながら「ダックスフンドか・・・・」と唯野が呟く。

「兄貴、【バロン】で決まりだな・・・・・・。下手な犬種選ぶと生まれるの待つ羽目になって離婚届役所に出されるぞ」と雅治は玲音達に聞こえないように耳元で囁く。

「ううむ」

 玲音と廉とアレックスは生物研究室に向かい、部屋に残った雅治に唯野はアレックスにそのダックスフンドをこっそり手に入れてもらえるように手配を頼んだ。

 雅治は「【インディアナ】じゃないは残念だが【バロン】もいいかもな。でも兄貴、『家無き娘』になるなよ」と笑いながら講義に向かう。


「俺は『娘』でも『子』でもないぞ!しかも【バロン】はアニメ特有のキャラクターで原作には出てこないだろうが!」と一人ブツブツ言いながら一人残った校長室で仕事を始ていた。


挿絵(By みてみん)

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