You were the chosen one.
1. Special school classes.
唯野 雄大(24)
両親の仕事の都合で15歳で渡米
ハーバード大学卒業 専攻、数学
数学博士号修得
日本に帰国後、私立高校教師になる。
「面白い経歴だな」とFaxで送られて来た用紙を見ながら櫻 功は呟く。
「一高校教師にしておくには勿体ないと思うが時宗がなついているし、ストレートでハーバードに入る実力が有れば特別教師としては申し分無い。その人物に全て任せるよ」と電話で功は校長に話している。
「くれぐれも、へそを曲げないように頼むよ。あいつは言い出したら曲げ無いからね」
「承知致しました」
下記の同好会設立を承認する。
同好会名:【暇潰倶楽部】
部長: 櫻 時宗
部員: 伊集院 誠、加藤 雅治
顧問: 唯野 雄大
(う~ん本当に設立してしまうとはな……)
学校の玄関ロビーの掲示板を見ながら唯野は溜め息をつく。
【全校生徒一斉実力テスト】と称して特別クラスの編成の為の掲示も出ている。
(あの3人は、放って置いても手を抜かない限り上位3名に入る実力なのは間違いないが、あの3人を校長達の思惑通りに行動させるには、これまた一苦労だよなぁ。
こないだのテストだってある程度点数が取ると見込んだ所で解答が分かっていても答案に解答を書いて居ない、どうしてだと問いただすと3人口を揃えて『めんどくさい。俺達は順位に拘ってないから成績に問題ない程度の点数が取れればいい』などど言うからな。
だから本当はどの程度の実力が有るのかすら分かりずらい。なので時々、煽るか何かの興味を引かせて全力でテストを受けさせて居る状態だ。
まるで犬を扱う様だ)
数学準備室に帰るとやはり何時もの様に時宗達3人がいた。
「ゆうだい兄貴!部室は、どこ使っていいの?」
目を輝かせながら時宗が言う。
「【ゆうだい】じゃない。【たかひろ】だ!
部室が欲しいなら今度の選抜の特別クラスに3人とも選ばれる事だな?」
「え?何で?」と誠が声をあげる。
「同好会は決まった部室は与えられない。活動時に空いている教室又は部室を使用する。ちゃんと校則に書いて有るぞよく読んで見ろ!」
「はぁ?なんだそれ?そんなの知らないぞ?時宗、生徒手帳を貸せ」と雅治が言う。
「雅治、お前の生徒手帳は?」と時宗は体中のポケットを探す。
「無いよ」とあっさりと雅治が答える。
「何で無いんだ?無いはずは、ないだろ?」と唯野が反論する。
「ん?こないだシャツのポケットに入れておいたら母さんがそのまま洗濯して紙くずの塊にしたのさ。
あの人、法律には詳しいが家事には疎いからな。洗濯の基本のまず洗う前にポケットの確認からと言うことさえ解ってない」と母親に対し雅治は辛辣な事を言う。
誠と時宗が生徒手帳見ながら
「あ~ぁ。本当だ」と叫ぶ。
「どれ見せろよ」と雅治も覗き込む。
「…………仕方無いな。やっぱりここが部室だな?」
「おい、こら。アホな事を言うな!ここは俺ら教師の部屋だぞ?俺の他にも数学教師が居るんだからな。
そもそもここに、生徒が自由に出入りすること自体がおかしいだろ。
選抜の特別クラスに選ばれれば3人専用の教室が与えられる。その部屋は特定の教師とその3名以外は出入り出来ないから、お前ら3人が選ばれれば部室と兼用にすればいい。自分達専用の部室が欲しければ選ばれる事だな」
「う~ん?特別クラスって美味しいの?」
「さあな?でも俺は、そのクラス担任になるからな。お前らが選ばれなければ、これからは授業で顔を会わす事も無くなるな。
今のお前らが居るクラスの数学担当は秋野氏になるからな。
まぁ、俺としてはお前らが居ないと授業中に、教師のモチベーション下げられる生徒が居なくなって授業はやり易くなるがな」
「ん?兄貴が担任なの?」
「あぁ、この学校の進学校としての知名度あげる為の一大プロジェクトだからな。全てを専任されているよ。
だから、お前らが選ばれれば同好会も付き合えるが、そうでないと絵に書いた餅だな?放課後の限られた時間しか、お前らの相手は出来ないからな。
旅行の同行なんて無理だな。夏休みとか特別クラスに掛かりきりなるからなぁ」と唯野は3人を煽るように説明する。
「何だよ!それ。今年入って来た新卒の新米教師にそんな重大なプロジェクト任せて良いのかよ?」と雅治が呆れている。
「雅治!失敬な!そんな事は、お前が俺より偉く成ってから言え!」
「そうだよな。兄貴は、こう見えても【博士号】なんか持ってるんだからな」と誠が言う。
「誠!【こう見えて】って、お前には、俺はどう見えているんだよ!
【博士号なんか】って言うが簡単に取れるもんじゃ無いんだぞ!どんだけ勉強したと思ってるんだ」と唯野は反対に3人の挑発に乗ってしまう。
「まぁまぁ、ゆうだい兄貴。そんな冗談に怒んなくてもさぁ。俺達、ゆうだい兄貴をちゃんと尊敬してるんだからさぁ~。
まぐれでハーバードに一発合格するなんて凄い運の持ち主だよな?」と時宗が言う。
「だから!俺の名前は【たかひろ】だ!
もし、万が一、万が一だ。【まぐれ】でハーバードに入れたとしても卒業できるかよ!あの学校は日本の大学と違って甘くはないぞ!
入ったのも卒業したのも俺の実力だ!お前らが、そこまで言うのなら、ストレートでハーバードに入って見やがれ!でないと一生出入り禁止するぞ!」と凄い剣幕で怒る唯野に時宗達3人は内心挑発し過ぎたと苦笑する。
「冗談だよ。本気で怒んないでよ~」
「俺、ハーバードよりケンブリッジの方がいいな?考古学するにはなぁ~。しかし、授業料が高いだろうなぁ」と誠は言う。
「ふむ。取り敢えず、俺達が特別クラスに選ばれさえすれば、兄貴を使い放題かぁ」と雅治は考え込む。
「雅治!俺は物では無いぞ。使い放題って……お前は、何を考えてる?」
「そのクラス分け試験って?」と不思議そうに時宗は聞く。
「ん?掲示板を見てないのか?ちゃんと告知されているぞ!ちゃんと見てこい」
「ふ~ん………」
「興味無さそうだな。時宗」
「うん、どうでもいいかな?」
「学校なんて何処に行っても関係ないし」
「そんな事は無いぞ。学校によって世界の重鎮とパイプが持てるし、その学校によって教育のカリキュラム違うからな。
誠の言うようにケンブリッジは研究に力を入れているし、オックスフォードは政治学や経済学に力を入れているからな」
「はいはい。兄貴は俺達を特別クラスに入れろと言われて居るんだろ?差詰め親父から校長経由で……。
仕方無いなぁ~。兄貴の為に敢えて乗ってやるから夏休みは俺達と一緒にオーストラリアで世界遺産巡りね」
「もう~。仕方無いなぁ」と誠も雅治も言う。
「お前ら………。人生なめんなよ!」
2. You were the chosen one.
特別クラスの選抜テストは二日間に別けて行われた。
1日目はIQテスト。2日目は某難関大学の入試問題を基に作られた問題だ。当然3年生は某難関大学志望の学生も多く、それなりに受験対策を受けているので、この学校も名門の私学の進学校と売って居るだけに解答率はいい。
しかし、それは自分の進路の受験科目に絞っての事で全教科まんべんなく上位にとなるとあの3人しか居なかった。
教室では先日行われた選抜テストの模範解答と個人の獲得点数一覧表が配られた。
「ちっぇ、また誠に負けた。悔しいなぁ~。誠に勝てるとすれば生物か化学、物理、数学辺りなんだが今回は全敗だ」
雅治が誠の点数結果一覧を見比べながら悔しがっている。
「時宗。お前、経済だけは誠に勝って居るんだな?」
雅治は時宗の結果一覧を覗き込みながら言う。
「ん?経済だけでなく、化学もね」
「うわっ本当だ。どさくさ紛れて!」
「何?どさくさ紛れてって言うのは酷いな。しかし、平均点だと雅治にも負けるよなぁ~。それはなんか悔しいな」
「時宗お前、英語が足引っ張っり過ぎてるな?」
「世界を目指すなら、英語が出来ないと話にならないぞ?狭い日本だけで生きていくのか?」
誠と雅治に指摘される。
「そうだよな?英語かぁ~。どうしたら成績上がるか?兄貴に聞いて見るかな?」
その頃、唯野は3人のテスト結果を見ていた。
(誠と雅治は、このまま学力の底上げでいいが、時宗の英語は、かなり深刻だな?国内の有名難関大学位なら英語を専攻とする学部以外なら問題にはならない程度だがオックスフォードとなるとなぁ~。
面接はもとより試験全てが英語だからなぁ、何より論文は生半可な英語では無理だからなぁ~。あの2人も英会話の学力強化は必要だな。さて、どうするか?
しかし、数学教師がなんで英語の心配しなきゃならないんだ?
でも、ここの学校の英語教師は、撥音からなってないよな。文法なんかは流石に極めて居るが、実践では絶対使い物にならね~。)
「ゆうだい兄貴~」と時宗が威勢よく数学準備室に入ってくる。
「【たかひろ】だと言ってるだろ?お前は名前も覚えられないバカか?
それに礼儀もなってない。ドアはノックして『どうぞ』と返答が有ってから入るものだ。ガキじゃ無いんだ!そのくらいわきまえろ!」
「特別クラスに俺達は選ばれた?」
「校長からの告知が出るまで知るかよ!しかし、時宗お前は英語がかなり弱いな?狭い日本だけで生きて行くのか?部活活動の趣旨には【グローバルな観点から空いた時間に世界を見つめる】とかなんとか格好いい事を書いているが英語が出来ない様じゃ話にならんぞ?」
「やっぱり?同じ事を誠と雅治に言われたよー。どうすれば英語を克服できるかな~」
「珍しくやる気は有るのか?」
「珍しくって!俺は、何時もやる気は出しているじゃ無いか!」
「そうだな。休憩時間や放課後はやる気満々だよな?遊ぶ事に……。海外に2、3年行ってれば嫌でも話せるようになるんだがな。そうか!その手があるか?」
「ん?何々?」
「時宗!今日は素直に帰れ!俺は、これから色々と忙しい。残念ながらお前の相手は出来ないからさっさと帰れ。明日にはクラス分けの結果は出てるよ!」
唯野は時宗を準備室から追い出す。
「なんだよー。追い出すなよ~。冷たいなぁ~」と時宗は言いながら恨めしそうにドアを見つめる。
「時宗、兄貴は?」と数学準備室前に佇んでいる時宗に2人が聞く。
「今日は忙しいから帰れ!だってさ」
「つまんねーな。仕方無いな誠の家にでも遊びに行くか?」
「アホか!ダメだよ。お前らの家と違ってうち狭いんだから。雅治の家に行けば良いだろ?」
「何もない冷えた家庭だからなぁ~。来てもなぁ~」と言って雅治は時宗を見る。
「まぁ時宗の家よりは、いいかぁ~」
「そうだな。あのただ広い家はなぁ~。それに時宗の姉ちゃんもおっかないしな」
誠が時宗を見ながら言う。
「あーぁ、かなりの美人だけどおっかないよなぁ~」
雅治も残念そうに同意する。
「時宗、そういえばお前の所の【ケルベロス】は元気か?会えなくなってかなり経つが・・・・・・。俺達に構ってもらえなくなって寂しがってないか?」と雅治は会いたそうに言う。
「あの【ケルベロス】はかわいいよなあ~~。間抜けな所が特に。飼い主に似たのか?」と誠も言う。
「姉ちゃんの犬は【ケルベロス】って名前じゃないよ!【Lotti 】だよ!
俺もお前らがロッティを泥だらけにして以来近づけさせてもらってねーよ!」
「お前のお姉ちゃん(ハーデース)に忠実だが、甘いもの見せれば懐いて番犬にはならないし、いつも寝て居るかいたずらばかりしている犬だから【ケルベロス】がピッタリじゃないか?」
「お前ら、姉ちゃんの前でそれ言うなよ!半殺しの目に遭うぞ?ロッティは今、姉ちゃんの一番のお気に入りなんだからな!これ以上姉ちゃんの機嫌損ねるとお前ら一生、俺の家には出入り禁止になるぞ?」
「俺達は、時宗の姉ちゃんの代わりにちょっと庭で散歩させただけだよな?」
「ああ、ケルベロスが勝手に庭の噴水の中に飛び込むわ、芝生の上でへたり込むわ、花壇の中に飛び込んで泥だらけになったんだよな?」
「お前らがボールで飛び込ませたんだろ!ロッティは真っ白なウェストハイランドホワイトテリアなのに散歩終わったら全身真っ茶色になってたじゃないか!」
「時宗、お前だって調子に乗ってケルベロスを噴水に飛び込ませていたよな?」
「おかげでお前らが帰った後も俺は姉ちゃんからチクチク怒られ続けた上、嫌がるロッティとf風呂場で格闘しながらきれいに体を洗ってやって詫びたけど………。姉ちゃんに『ホワイトテリアというのは真っ白だからその名前が付いたの!まだ汚れてる!』と許して貰え無いから仕方なく俺のこずかいで犬の美容院に連れて行って綺麗にトリーミングしてもらても姉ちゃんの許しは貰えず、今後ロッティには1m以内に近づくなと言い渡されたよ!」
「時宗の姉ちゃん微笑みながらグリグリと容赦なく言葉の攻撃するからなあ~」
「姉ちゃんの微笑みは悪魔の微笑みだからなぁ~。でも、バカな男は簡単に騙されるんだよなぁ~。
特に藤春氏は絶対騙されて居ると思うなぁ~。可愛そうに……」
3. To give a pep talk.
第1回 特別クラス選抜者名
伊集院 誠
加藤 雅治
櫻 時宗
以上3名を、今期の特別カリキュラム受講生とする。
担任: 唯野 雄大
新設校舎図書館隣301号教室を特別クラスとする。
尚、特別教室への立ち入りは該当生徒に限り、それ以外の生徒は担任の許可を必要とする。
施行は6月15日より行う。
尚、毎年4月末に選抜テストを施行する。
唯野は3人の前の教壇に立つ。
「さて、3人揃ったな?今日からここがお前らの教室だ。これからお前らを海外の難関大学に通用する学力を付ける。
なので志望校と希望学部早急に提出するように。
後、この教室では英語が公用語だ。日本語は通じないないと思え!テストも会話も俺の授業は全て英語で行う。一部教師の例外を除いては日本語の使用禁止だ。いいな?」
「兄貴、無理だよ!俺、自信が無いよ~」
「【先生】だ!校内では【兄貴】と呼ぶな!時宗は何とか英語を克服したいんだろ?なら、やるしかないぞ!ここは日本じゃない。だから日本語は通用しない。いいな?」
「なんかスパルタだなぁ~。俺ら別に海外の大学なんかどうでもいいぞ?」と雅治は言う。
「お前ら今年の夏休みは、オーストラリア行きたいんだろ?」
「ん?まぁ本当は、沈没船探査だが」と誠は言う。
「沈没船はダメだよ!絶対に!俺は、箱根の修業には行かないからな!どうしても沈没船捜ししたいなら、お前らが資金を調達しろよ?」と時宗は2人を睨む。
「校長からお前らの頑張り次第で俺のオーストラリアの同行の許可出るぞ。
反対に協力しないと同好会の活動許可は出ない。学力に不安が有れば補習しろと言われて居るからな」
「えっ、卑怯な。交換条件かよ!」と雅治が言う。
「大人の世界はこう言うもんだよ!」
それから授業は勿論、試験問題も英語での出題になった。
「俺、狭い日本で十分かも。親父も世界を相手にしてないしな。この日本で十分に生きていくさぁ~」と時宗は弱音をはいて居たが、
「世界遺産巡りを日本語で、できると思うのか?英語が出来ないから世界中のあちこちに夢や希望があるかも知れないのに諦めるのか?時宗は桃源郷見ずに、世界を見ずにお前の人生終わるのかぁ?世界を目指せる男が狭い日本に留まるのかぁ~。それは、本当に【残念な奴】だな?」と唯野から叱咤激励を受け時宗は真剣に頑張った。
打てば響くと言った感じて3人の学力はめきめきと上昇していった。