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Nostalgia - 追憶 -  作者: 天野 花梨
The disaster occurred on their way home
29/40

That'll complicate.

1. Let me know enters.


 あの島では冬の訪れとともに山頂付近は白銀世界に様相を変えつつ島全体が厳しい冬の到来を感じるある日のこと。

挿絵(By みてみん)

 齋藤から藤堂のもとに緊迫した声で連絡が入る。

「十碧。統轄長に至急取り次いでくれないか?」

「どうしました?拓哉からこんな時間に連絡なんて。

 それに、何時になく落ち着かない声で何かあったんですか?」

 藤堂は親友のいつもと違う口調に違和感を敏感に感じ取っていた。

 すると齋藤は口早に事の経緯を説明する。

「今朝、唯野校長と伊集院教授と外国人客員教授2人と俺の部下の5人で島の山に入ったんだが、予定の下山時刻を過ぎても誰も降りてこないんだ。

 一応、俺の部下は山の地形をよく把握している奴を選んで案内役に付けて居たんだが……。

 無線を携帯させていたんだが、問いかけてにも応答がない。

 念のため何組かの部下を予定のルート付近を中心に捜索に行かせたが見つからないんだ。

 もう、日が落ちてかけていて捜索も難しくなって来ている。

 しかも悪い事に凄い勢いで夕刻より麓にも雪が降りはじめてる」

「なんで、拓哉が案内しなかった?いつもなら客賓はお前が案内しているだろう?」

「う~ん……。ちょっと体調がさぁ~良くなくて……。

 唯野校長が『無理しなくていい。誠は何度もこの山に調査に入っているから大丈夫だ。まあ人数多いから君の部下で1人程、山に詳しい人を案内役につけてくれないか?』と言われたので……。言葉に甘えて俺といつも同行している部下を同行させたんだ。

 だから俺はホテルの事務所内で作業して居たんだが……」

「体調が悪いねえ……。拓哉、差詰め最近釣りと料理に凝っていたから、釣りに行きまくって慣れない色々な調理で魚介類食べ過ぎ、貝にでもあたったんのではないですか?」

「………」

「図星ですか?」

「そんなことより十碧!一刻を争うんだ!

 島はメイン道路の一部分とヘリポート以外は街と違って街灯や家の灯りなんか全くないから陽が落ちると真っ暗になる。

 しかも、今日は悪い事に冷え込んでどんどん気温は落ちてる。天気予報では吹雪になりそうなんだ!早く見つけなければ大変な事になる」と事態の深刻さを告げる。

 藤堂は事の重大さをすぐに察知して親友に告げる

「そうですね。私から統轄長には、報告しますから、部下を総動員して捜索して下さい。手続きはこちらでします。

 二次遭難に、ならないようにちゃんと ホテルの事務所を基点として対策本部立ち上げて下さい」

「あぁ、加藤さんの部署にも応援頼めないかな?」

「調べて見ます。何時でも状況が解る様にして下さい。島の仮事務所では、一般電話は無いですからね。電波の加減で繋がらないと困りますから」

「わかった。よろしく頼むよ。あと何人か連絡要員の応援も頼めないかな?捜索以外の人手の欲しいとにかく人は多い方がいい。時間との勝負だ」

「手配します。しかし、私と統轄長は今シンガポール支社ですから本社の秘書室の誰かを対応させますから、少し時間下さい」と言い終わると藤堂は、溜め息をこぼしながら

「拓哉、焦って無茶するなよ。それと俺にもきちんと細かく連絡入れろよ。出来る限りの力になるから」と言い藤堂は携帯電話を切り統轄長室に向かう。



2.That'll complicate.


 統轄長室のドアを叩く。

「どうぞ」と声がする。

 藤堂が入ると時宗は書類を怪訝な顔で見ながらそれに対応している雅治がいた。

「あっ」と藤堂は思わず声を出してしまった。

 藤堂は予想外の雅治の存在に戸惑って居ると雅治と時宗の視線を浴びる。

「どうしたの?藤堂君」と時宗が不思議そうに問い掛ける。

「いえ、失礼いたしました。しかし加藤さん何時こちらに?」と藤堂は雅治がシンガポールにいることに動揺を隠しきれずにいた。

「さっきさ。この忙しい時期に電話一本ですぐに来いと時宗から直々に呼びつけられたのさ。

 かわいい女の子に呼ばれるなら、ともかくなあ~。

 まあ俺はしがないサラリーマンだからな。上司の命令には逆らえないさ」と雅治は上司の前でため息混じりにぼやく。

「雅治!お前は俺より好き勝手に自由に仕事してるじゃないか!何度お前の協力をしているか知ってるのか?」と時宗は大人げない反論をする。

 それをいつものように傍観していた藤堂は、はっと我に返り二人に齋藤からの報告を伝える。

「えっ?兄貴達あの島の山で遭難したの?

 でも、誠は何度もあの山に調査で探索に入って居るだろ?馴れた場所だよ?

 また、雅治の入院の時の様に誤報でないの?」と時宗は雅治を見ながら言う。

「おい、時宗。あれは俺のせいでは無いだろ?お前がちゃんと事実関係を調べないで噂に踊らされただけだろう?」と雅治は時宗に釘を指す様に言う。

「夕刻より、あの島には、雪が降って来ている見たいですし……。パーティの誰一人とも連絡が取れて無いようです。予定ではとっくの昔に下山して島の事務所にいる予定のはずらしいのですが……。

 拓哉が早めに機転を利かし部下を何人か予定していたルートを捜索に山に入っているみたいですが発見出来て無いようです。出来れば加藤さんの部署も捜索の応援頼みたいみたいなんですが。それと対策本部の連絡要員も欲しいみたいです」

「雅治、誠に連絡入れて、俺は兄貴に連絡して見る」と言うと時宗は携帯をかける。

 雅治も「仕方ないな。アレックスとラッセルも一緒に居るんだよな?」と携帯を出して連絡するが、誰の携帯も圏外か電源が入ってないとアナウンスが流れる。

「取り敢えず、最悪を想定して対策本部を立ち上げよう。雅治、お前の部下を出来るだけ応援に回してくれ、藤堂君も秘書室から応援を回して、私は、最悪の場合に備えて怪我人の受け入れに対応出来る様に和也の病院に依頼するから」と言うと皆頷き連絡を始める。

 全ての連絡をし終わった後、藤堂は時宗に報告を入れる。

「取り敢えず、秘書室分室の3名と玲音様と廉君の5名が直ぐに救援物資や捜査員の食料や暖房器具も用意してホテルに向かうそうです。玲音様はあの山を何度も探索しているのと地形を把握されてますから廉君と一緒に島での探索に参加するそうです。

 後の対策本部で3人で連絡対応を行います」

「俺の方もあの島近くの海域調査中の船を直接島に向かわせた。15名程乗っている。ホテル在留の事務所の人間は齋藤の指示に従うように言ったので船で島に向かわせた奴等の指示をそいつらを使って連絡させればいい。他に動ける奴らもホテルの事務所にすぐに行けと通達してある。海洋開発部のヘリとセスナも島の搬送に使えるようにパイロットとともに確保した。それをうまく動かせ。

 その旨を齋藤に言ってやってくれ」と雅治も報告する。

「和也が現地に応急措置班として千景君とナース1名と応急措置用の医薬品を持ってホテルに向かわせてくれるそうだ。ヘリでの搬送も何時でも受け入れ可能状態にしておくし、救急医も何時もより多目に配慮するとの事だ」と時宗が言う。

「それなら千景君達も玲音様と秘書室と合流して島に向かった方が言いかも知れませんね」と藤堂はまた電話する。

「しかし、誠と齋藤の部下1人付いて居たんだろ?

 兄貴程、慎重な奴が付いていて遭難するか?

 あー………アレックスか!う~ん…」と雅治は腕を組ながら考え込む。

「どうしたものかな?藤堂君。シンガポールの残りの予定は?」

「はい。あと、一週間程滞在予定で工場とかの現地視察が残っております」

「う~ん」と時宗も考え込む。

「今から急いで飛行機飛ばしても現地に着くのは深夜をすぎる。俺達が着くまでに見つからないと絶望的だな?となると俺達はここに留まってあらゆる可能性を考えて指揮する方が賢明ということだ」と雅治が冷静な判断をする。

「そう言えば携帯のGPSは機能している奴は居ないのか?藤堂!齋藤に部下のGPS調べるように言え!時宗、兄貴と誠のGPS調べろ!俺はアレックスとラッセルを調べる」3名は一斉に調べるが誰1人反応は無かった。

「藤堂君、至急リゾート開発部からあの島の地図と測量図のデータ送る様に指示してくれる?

 後、今日の兄貴達の予定登山ルートと、計画書も」と時宗が指示をする。

「あの島の手に入るだけの現地写真と今現在の島の予測積雪量と兄貴達の装備情報も頼む」と雅治が付け加える。

「はい。分かりました。至急手配します」と藤堂は部屋を出る。

「地図と写真と測量図だけで何処まで居場所突き止められるかな?」

 時宗は心配そうに言う。

「兄貴と誠の行動位なら大体の予想がつく。アレックスの好奇心は想定以上な事も有るが大体把握している。

 水と食料さえ装備していれば誠が居るんだ一晩位ならなんとかしのげるさ。大丈夫だ。

 それより誰も怪我してなければいいが……」と雅治は心配する。


 その頃、齋藤はホテルの対策本部を作り、自分の部下と雅治の部下とで捜索会議と現地捜索員の指示をしていた。

 そこに玲音達が海洋開発部のヘリで到着し、玲音から悠貴に連絡し、悠貴をはじめあの島の探索に関わった事のある考古学部の人員も集まっていた。

 ざっと100名弱の人員が動いている。

 齋藤は、ホテルのホールに捜索本部を起き集まって来た人員を名簿に名前と部所、血液型を記入させ班編成をしていく。

 玲音が島の地図と装備品を、廉がリゾート開発部と海洋開発部からかき集めて来たヘルメットと懐中電灯を捜索員に1人1人に配り、齋藤は各班の隊長に無線を渡す。

「みなさん!山は原生林で道と言う道は有りません。

 当然、街灯もありません。

 雪も降り始めています。

 足下に良く注意して行動して下さい。

 方位磁石を良く確認して二次遭難に気をつけて下さい。

 決して無理しないように。

 先程隊長に捜索範囲の分担を指示しました。

 これからヘリと船で別れて島に送ります。

 島事務所では携帯の電波が使えます。

 あと先程渡した地図に印されて居る幾つかの場所では通信会社に依りますが電波が届くエリアが有りますので無線と携帯上手く使ってこまめに捜索本部に連絡ください。

 連絡番号は地図に書いて有ります。

 島に着く前に携帯に登録お願いします。

 各班の隊長は携帯でも無線でもどちらかの方法で決められた時刻に定時連絡を忘れないようにお願いします。

 それではそれぞれ別れて捜索準備開始お願いします」

 齋藤は叫び各人員の行動を促す。

「秀一!対策本部は任せた。本部フロア内の指揮と十碧に定時連絡をまとめて状況報告を頼む。

 15分毎にパーティが所持して行った無線にも問い掛けしてみてくれ」と齋藤は周藤の傍に行き頼む。

「あぁ、わかってる。手筈通りちゃんとやるからこちらは心配するな。拓哉も気をつけていけよ」と周藤は齋藤を送り出す。


 齋藤達と捜索員達が島に着くと既に島全体銀世界が広がっていた。

 太陽熱蓄電の街灯がメイン道路には所々装備されていたので山の麓までは気持ちほど灯りがある状態だが山岳部はすでに暗闇が覆っていた。

 次々と到着した捜索員は割当てられた場所に向って行く。

「齋藤先輩、俺達のパーティは千景の準備を手伝ってから捜索に出かけるよ」と玲音は医療品を運びながら言う。

「あぁありがとう。俺も手伝うよ」と齋藤も、荷物を運びに出ようとする。

「先輩は、ここを中継地として機能させないといけないでしょ?その準備してて」

「そうだな。すまないがそちらは任せるよ」

「あぁ、灯油とか何処に置けばいいの?」

「裏の倉庫に。後から捜索員の水と食料もそこに入れるからあまり奥に入れると取り出せ無くなるから気をつけて」

「パンダ!この部屋を十分暖めて置くから、このストーブ3台全部使うぞ。だから灯油の消費量は激しい直ぐに無くなるから、直ぐに補給しやすい所に置いておけよ。湿度管理と湯の調達もこのストーブで賄うから、切れると困る」と千景はベッドに新しいシーツをかけながら指示する。

「了解。でも不幸中の幸いとはこの事だね。満月と積雪のお陰で日が落ちても思った以上に明るい」と玲音が言うと。

「いや、反対に足下が雪で隠れてかえってあぶないよ」と廉が言う。


 長い夜がこれから始まる。


挿絵(By みてみん)

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