Welcome party
1. He is a man who is impossible to hate.
日本櫻グループ統轄事務局ビルロビー
「マーサ!マーサ!」と1人の男性外国人が大声で叫ぶ。
「ん?」と雅治が振り返ると先程の大声を出していた外国人が満面の笑顔で手を振って居たが雅治がロビーで立ち止まると嬉しそうに雅治の傍に急いで歩み寄る。
「アレックス!こんな所で、でかい声出すなよ」と雅治は辺りを見ながら言う。
「マーサ、あの島に連れて行ってくれよ?」とアレックスは雅治の袖を掴み満面の笑顔で子供がテーマパークに行きたがる様に頼む。
「お前は、新しい繊維の研究に携わるんだろ?あの島に行ってどうするんだよ?なんも無い所だぞ?
それより、住む所は決めたのかよ?なんで勝手に俺の家に荷物を送り付けて来るんだよ!生活出来ないじゃないか!」
「マーサのコレクションも見たいしさぁ、
どうせならマーサの家の近くに住もうかと、だからさ一緒に家探し付き合ってくれよ?」
「なんで俺の家の近くなんだよ!大学からも遠いし、研究所からも離れているだろ。それに俺は一年の大半は船とあの島の近くのホテルに居るから意味無いぞ?」
「ええ俺、日本語全然分かんないのに、どうやって暮らすんだよ?」とアレックスは雅治に詰め寄る。
「知るかよ!ラッセルと相談しろよ。一緒に居ればいいだろ?。俺は、忙しいんだ。アレックスの面倒を見ている余裕は無いぞ。しかし、なんでお前、本社に居るんだよ?学園に挨拶に行ったのか?」と不審に思い聞く。
「マーサが、今日本社に来ると聞いたから学園が何処にあるか分かんないからマーサに一緒に連れて行って貰おうと待ってたんだ」と人なつこい顔で言う。
「残念ながら俺は、今日は学園に用事は無いぞ?」と雅治は困った顔をしながら言うと、アレックスはキョトンとした顔で「トッキーが困った事があれば何でもマーサに頼めばいいと言ってたぞ?」
雅治はそれを聞くとムッとして、受付ブースに向かい受付嬢には先程の表情とは正反対の満面の笑顔で「今日、統轄長は本社に居てる?」と聞く。
受付嬢はにっこりしながら「今は居られますが、もうすぐお出かけになる予定となってます」と答える。
「そう、ありがとう」と言ってエレベーターに向かう。
「マーサ!何処に行くんだよ?」
「アレックス、お前も来い」と言ってエレベーターに乗り最上階のボタンを押す。
エレベーターを降りて秘書室受付ブースを顔パスで通り過ぎ奥の部屋までいき、ノックをする。
「どうぞ」と声がし、中に入り込む。
「時宗!どういう事なんだ?」とアレックスを指差す。
「あぁ、雅治。ちょうどよかった。アレックスが雅治ご指名なんで時間を作って相手してやってくれよ?」
「アホか?そんな時間の余裕が何処に有るんだよ!ただでさえアイスランドに呼びつけてられて業務が押してると言うのに。お前が引っ張って来たんだ。お前が責任持って面倒見ろよ!」
アレックスは時宗と雅治が日本語で話してるので何を言い争っているのか解らず、傍のソファに腰かけくつろいでいる。
「まぁ、それはそうなんだけどさ俺も、ちょっとたて込んで居て……。
それにアレックスが雅治にと日本の案内役を指名してきたんだ。なんとか頼むよ?」と時宗は言葉を濁しながら雅治に言う。
「なら、今月予定の調査分は延期でいいんだな?台風やしけで、ただでさえ遅れている上、アイスランドに呼び出され俺が不在だったんだ。当然のその結果として、調査は進むわけがないよな?そのくらいお前も分かるよな?
その上、アレックスの世話させるなら益々調査は遅れるのは必然だろ。お前が、それを理解して調査の延長を許可するなら案内役を受けてやるよ」
「う~ん。それはそれで困るんだけどな?
雅治そこをなんとかしてくれよ?」と時宗は困った顔をしながら言う。
「アホか!できる訳無いだろうが!!そんな超人的な事を出来る人間が何処に居るんだよ!
もしも、俺がそれ出来るなら今頃俺は、悠々自適に遊んで暮らして居るさ。
今日も、くそ忙しいのに申請書類は今日迄に本社に届かないと受付は来月付だとか総務が言いやがって!アイスランドに行っててどうやったら出せるんだよ!
いくら言っても容赦無くダメの一点張りで、仕方なく無理矢理時間作ってここまで持って来たんだぞ!」と雅治は、かなり怒り心頭している。
「まぁまぁ、そんなに怒るなよ?申請書類は俺に言ってくれたらなんとかしたのにさぁ~」
「言うのが遅いわ!」
「仕方無い。取り敢えず、今月分の調査来月中旬まで延長認めるからさ。アレックス面倒みてやってくれよ?お前の友人だろ?」
「ラッセルは?」
「誠に頼んで居るよ。2人とも島と学園を同じ様に行き来する事になるからさ」
「ついでにアレックスも頼めよ!」
「アレックスは雅治ご指名なんだよ。雅治じゃ無いとイギリスに帰るってさ」
「時宗お前………。アレックスをこの会社にどういう引き抜き方をしたんだよ?」
「ん?雅治と、何とか一緒に仕事したいと言ってたからさぁ~。うちの会社に来ないかと」
「マーサ!何揉めてるのさ?早く学園に連れて行ってくれよ?」とアレックスは痺れを切らし雅治に言う。
「雅治、頼むよ。俺、これから外周りだからさ。俺も今色々と忙しいんだよ」と時宗が立ち上がり支度を始める。
「時宗!これは、大きな貸しだからな!」と言って雅治はアレックスに近付き「アレックス行くぞ!」と言って統轄長室から出る。
また総務に戻りメディカルセンターと学園の利便性のいい、賃貸物件の資料を請求する。
雅治は出された資料をざっと見て5件ほどチョイスし管理している不動産会社を聞いて昼過ぎに行くから案内するように手配している。それから、自分の部下に電話し、今日はそちらに帰れなくなったからと部下に作業指示を出す。
「アレックス、昼からお前の部屋探しするぞ。今日中に絶対に決めろよ!」
「やっぱり、マーサは頼りがいがあるね」と笑っている。
雅治はアレックスを車に乗せ学園に向かった。
「ここが学園だ。俺は、駐車場に車を停めて来るから大人しくここに居ろ。いいな?ここに居るんだぞ!動くんじゃないぞ?」とアレックスを学園の校門前で車から降ろす。
雅治が駐車場から急いでアレックスを降ろした校門に戻ると、そこにはアレックスの姿は既になかった。
「全くあの野郎、待てと言ったのにふらふらしやがって……」と雅治は悪態をついて大体検討がついているのか真っ直ぐ校庭に行く。すると花壇に座りこんでいるアレックスを見つける。
「こら、アレックス!生体観察している暇は無いんだ!ほら行くぞ!立て」と襟を掴みアレックスを立ち上がらせる。
雅治は真っ直ぐ校長に向かう。
「兄貴、アレックスを連れて来たぞ」と言いながら校長室に入るとそこには誠とラッセルが居た。
「雅治!ノックしてから入れよ!」ともういい加減いい飽きたと言わんばかりの表情で唯野が言う。
取り敢えず、そこからは唯野がラッセルとアレックスに学園の細々とした、規則、教育方針、学園施設利用方法やアレックス達の準備室及び学園建物の内部等を紹介している間、雅治は誠の準備室に転がり込んだ。
「時宗の野郎、全部俺に押し付けやがった!」と雅治が文句を言うと誠も、「俺にもラッセルの面倒見ろと押し付けられたぞ。お陰で作業を全部生徒に丸投げだ」
「それは、そうと、火山学者の長谷川氏は、何時から調査入るんだ?」と加藤が聞く。
「来週俺があのホテル迄は連れて行くよ。
雅治、島まではよろしく頼むよ」
「やはりホテル内に事務所置くのか?ラッセルも彼処に事務所置くんだろ?あのホテルはもう仮事務室のスペースの余裕無いだろ?」と雅治が言っていると、誠が
「ところで雅治、アレックスの家は、何処にしたんだ?」
「ん?この後、物件見て決めさせるつもりだが?」
「なら、ラッセルも一緒に連れて決めさせてくれよ」
「アレックスは独身だが、ラッセルは妻帯者だから見る物件違うから2人だと今日中には、かたつかないじゃないか!
俺、天候不良やアイスランドに行ったせいで全然予定の仕事出来て無いんだから、幾らなんでも明日は無理だぞ!本当は今日も午後から帰って作業するはずだったのに、仕方なく付き合って居るんだ。
それに、ラッセルの物件チョイスしてないだろ」
「やっぱり、無理かぁ~。発掘現場は、俺が居ないと作業させる訳にはいかないんだが、ラッセルの事でこの三日間作業止まっているんだよなぁ~」
「何軒か当たったのか?」
「あぁもう、10件は回ったよ。結構こだわりが強くて中々決めてくれないんだよ……」
「ラッセルは強く言わないとダメだぞ?この中から選べ位のこと言わないと一生決まらないぞ!アレックスはこのエリアに決めさせるからラッセルもこのエリアにしろよ。離れると後々面倒だぞ?一応ラッセルには俺からも釘差しておくよ」と雅治は物件の案内資料を誠に見せながら言う。
アレックスは雅治達と同じ歳だが、天真爛漫を絵にかいた様な人物でお人好しで少年の様な振舞いをし、年齢よりは若く見える。なんにでも興味を持ち時間の流れなど気に掛けない。
いい歳をしたそんな変わり者だから有名になるまでは、誰も一般の人は関わりを持とうとはしなかった。
そんなアレックスを雅治は学生時代から引っ張ってでも世話をしてきたので、アレックスは雅治の言う事だけは素直に聞き、安心して頼ってくる。
ラッセルは雅治達より2つ年上で、かなり神経質でこだわりが深く、気難しい面もある。本来、数学者に憧れて居たが志し半ばで挫折し、化学者になっている。
謎解きの遊びが大好きで学生時代から色んな人に謎解きを一緒に付き合ってくれと頼んだが、中々そんな面倒な遊び誰も興味を示さずやはり変わり者のレッテルを貼られ付き合ってはくれなかった。
しかし、雅治だけはどんな些細な謎解き遊びでも、なんやかんや言いながらでも付き合ってくれたので、ラッセルは名前の知れ渡った今でも、雅治と交友関係を大切にしている。
2人の変わり者の学者は、遠く離れた日本に大学卒業とともに帰ってしまった雅治をずっとなんとかイギリスに引き戻そうと考えて居た。
そんなある日、雅治から俺の大切な親友がお前らの力貸して欲しいと言っているから相談に乗ってやってくれと言われ。雅治から紹介された時宗と相談の最中、「雅治と一緒に仕事したいならうちのグループに入社すればいい、今と同じかそれ以上の研究施設提供するし、なにより、雅治はうちの社員だからこれからはなにかと一緒に仕事できるよ。特にメタンハイドレートは今雅治が調査しているからね」と言いくるめて引き抜いたらしい。
ただラッセルは、いくら雅治の友人と言っても時宗の言葉を手放しに信用せず、あの謎解きで本当に雅治がわざわざここ迄来るなら時宗は雅治にとって大事な存在だと認めようと言ったらしい。
なのであの四人は少なくともラッセルと関わりを持つ人物を呼びつけてラッセルの信用を取り付ける目的だった。
唯野から学園の説明が終ったと連絡が入り、雅治は校長室に向かう。
一応ノックをし、「兄貴、入るぞ!」と中に入ると、アレックスとラッセルと唯野が談笑していた。
「雅治ちょうどいい、こないだの課外授業の件、時宗から施設建設許可貰ったからこの2人と一緒に俺も、島に下見に行くよ。
なのでよろしくな。後、齋藤君にも打ち合わせの時間取って貰えるように伝言頼むよ」
「ああ、分かったが兄貴、今月はよしてくれよ?俺もだが、齋藤もアイスランドに行ったお陰で通常業務以外の時間を作くる余裕なんて無いぞ?
それに今、先にあの活火山の調査に長谷川氏が入るから齋藤はそれで手一杯なはずだ」
「そうか分かった。来月お互い時間を調整しよう」と唯野は言う。
雅治は、学園の用事が済んだのならアレックス連れて物件探しに行こうとする。
「ラッセル!あまり誠を困らせるなよ!俺の大切な友人なんだからな!アレックスさっさと家決めに行くぞ」と雅治が言うと、ラッセルが「俺の家探しも雅治、付き合ってくれよ?」と言う。
「ラッセルは誠がちゃんと案内してくれるから」と言うと、「アレックスと近い方がいいし、俺の好みは雅治が一番よく知っているだろ?」と食い下がる。雅治は誠の事も考えて仕方なく2人に「お前ら、絶対に今日中に決めろよ!明日は面倒見ないからな」と雅治はげんなりしながら言う。
雅治は本社総務に電話をし、「先程の同じエリアで四人家族が住める物件資料用意しておいてくれ」と連絡する。
雅治はアレックスとラッセルを車に乗せまた本社に向かった。
「今夜はマーサの家でパーティしようよ!とアレックスは楽しそうに言う」
「なんで、俺の家なんだよ!アレックスお前の荷物送りつけてて入れる訳が無いだろうが!それより、本当に今日中に部屋決めろよ!絶対だからな!さっさと荷物引き取れ!」と車内で3人は何時も様に会話をしていた。
雅治は本社からラッセルの物件をチョイスし、不動産会社に行き、順次物件を見る。
しかし、結局の所、雅治がいいと思う物件を選びアレックスとラッセルに納得させた。
2. Welcome party.
夕刻
「雅治!なんで俺の家で鍋パーティなんだよ!」と誠が雅治と一緒にに上がり込んだラッセル、アレックスを見ながら文句を言う。
「仕方無いだろ?俺の部屋はアレックスの荷物でふさがって生活出来やしないんだから。
ああ、そうだ今日は、俺、ここに泊めろよ!」と鍋の材料を誠に渡しながら言う。
「なんでだよ!ホテルにでも泊まれよ」
「面倒くさいじゃないか!それに今日はあちこち連れ回されて疲れたんだよ。アレックスもラッセルも物件決まったんだから明日からは、発掘作業に無事取りかかれるのは俺のお陰だろ?」
「しかし、アレックス達は帰るんだろうな?この家に全員泊まり込みは無理だぞ?」と誠に言われ、雅治はアレックス達を見る。
「ふむ、確かに……。帰れと言って素直に帰る奴等ではないな。仕方無い移動するか?」
「何処に?」と誠が不思議そうに聞く。
「隣に決まっているだろう。あそこなら後3人位増えても余裕で泊まれるだろ?
よし、決めた。アレックス、ラッセル移動するぞ!」
「ええ?どこに?」とラッセルはここが良いと言わんばかりに言う。
「マーサ早く【鍋】とやらやろうよ?」
「ほらほら、お前達。隣の家に移動だ」
「マーサの家?」
「違うこの家の隣のでかい家が有るだろ?そこに行くぞ。誠はどうする?」
「鍋か?俺も行く」
四人で隣の家に乗り込む。
インターホンを鳴らすと執事の後藤さんが出てきた。
「後藤さん久しぶり、時宗居る?」
「先程、戻られたばかりですが」
「そう、じゃあお邪魔するね」
「あの後ろの外国のお方は?」
「あぁ、こいつら?時宗の気紛れでわざわざ日本に呼びつけられた奴等だから、知り合いだよ」と話して居ると時宗が「どうしたの?」と玄関ホールにやって来た。
「トッキー!鍋パーティだよ!」とアレックスが材料の入った買い物袋を掲げ嬉しそうに言う。
藤堂と千景も騒動につられて玄関ロビーに集まる。
「これだけで、材料足りるかな?」と誠がいうと、雅治が「兄貴も呼んで、来る途中に材料買ってきてもらうか?」言うと、時宗が怪訝な顔で「おい、兄貴呼ぶのは構わないが材料調達なんか頼むと怒られるぞ?
この場合怒られるのは、どう考えても俺だろ?近くのスーパーから配達させるから。取り敢えず玄関で騒がずにさっさと中に入れよ」言う。
「鍋かぁ~。パンダ居たら喜んだのにな」と千景。
「あぁ、統轄長!拓哉呼んでもいいですか?」と藤堂が思い立ったように言う。
「齋藤君、こっちに居るの?」
「夕方、書類出しに来ていたのでまだ帰って無いと思いますよ」
結局、唯野と齋藤も時宗の家に呼びだし盛大なアレックスとラッセルの歓迎鍋パーティが夜通し行われた。




