Where there is a will, there is a way.
1.Where there is a will, there is a way.
時宗は父親に呼び出されていた。
「お前、学校の進路希望に何も書いて無いんだって?」
「いや、書いてはいるよ?具体的に書いて無いだけでね」
「何を、やりたいか決めて無いのか?丁度いいな。一族からなそろそろお前を後継者として育てろと声が上がっていてな。高校卒業したらオックスフォードに行って経済学部を中心に学びながら世界を見て来い」
「え?グループの統轄は姉さんの旦那にしてもらえば良いじゃん」
「香織はまだ、婚約しただけで結婚はしてないだろ?藤春君は若くしてグループの銀行の頭取まで上り詰めた男だが、グループ全体をまとめる社交性が欠けている。それに一族出身者でもないしな。うちの一族を他人が率いるには、少し荷が重い」
「無理、無理、俺の方がもっと重いよ。それに親父、きちんとした成績で将来、秀でた才能示せば好きな仕事していいと言ってたじゃないか?俺、ちゃんと成績は出しているだろ?」
「私も、好きな仕事させてやりたいと思っていたが、一族はみんなお前を押している。お前が、継がないとなった時、私の後を誰が継ぐかとなったとき無用な派閥争いが起きてあのグループは空中分解起こすだろ?そう言う事には、させない為にもお前が継いでくれると、上手く修まるんだよ」
「え~。嫌だよ!何の面白みもないじゃないか?俺より香織姉さんの方が社交性あるし、藤春氏のビジネス力とセットでまとめればいいじゃないの?姉さんはれっきとした一族出身者だから何の問題も無いだろ?」
「なら時宗、お前がグループ関係者を説き伏せたら好きな様にしてもいいぞ?でも、説き伏せられなかった時は、大学卒業後は私の傍でサポートとして働いてゆくゆくは継で貰うよ?」
「俺、まだ高校生だよ?まだ先の話じゃないか?」
「留学するにも準備が必要だろ?それに、時はあっと言う間に流れるさ。オックスフォードは簡単に入れる大学では無いぞ。今まで以上に勉強しないとな。しかし、お前が真剣に勉強している姿は、見たこと無いな。成績は大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ!雅治や誠とちゃんと分からない所教え合っているからさ。それと俺達3人セットだからさ誠も雅治も一緒に留学させてよ。あの2人は将来絶対グループの要になるからさ」
「それはそうと、なんだこれは」
父親は報告書の様な書類を時宗に差し出す。
「う~ん。夏休みの計画?」と時宗は満面の笑みで答える。
「お前と言う奴は………。去年は徳川の埋蔵金捜しだと言って重機やなんやかんやグループ会社からかき集めて二束三文の山奥の土地買わせて出て来たのは温泉だったよな?何?今年は沈没船捜しって………。道楽にも程が有るだろ?
お前が稼ぐ様になってから、お前の金でやりなさい。
この計画実行しようとすると億と言うお金が動くじゃないか?
見つかってもスペイン船と判明するとの所有権で揉めるの分かっているだろ?
見つかればいいグループの宣伝にはなるが見つからないと大赤字だ。
今グループも利益の不均等で経営が難しかしいんだ。子供の道楽にこんな金は出せない。お前は少し金を稼ぐ大変さを覚えないとダメだ。夏休みは事務局でバイトしなさい。秘書室に話付けておくからいいね?」
「え~。バイト?」
「嫌なら箱根の別荘で、じいさん達と一緒に夏休み過ごすか?」
「いえ、喜んでバイトさせていただきます」
中間テストの迫る数学準備室
「時宗、夏休みバイトだって?」
誠と雅治が数学準備室でくつろいでいた。そこに入って来た時宗に雅治が言う。
「お前らのお陰でな……。沈没船捜しの計画を言ったら案の定、高校生の道楽に大金を出せない。お前はお金を稼ぐ大変さを身を持って体験しろとさ。嫌ならじいさんの所に行けってさ」
「じいさんって会長だよな?」
誠が言う。
「ん?母さんの方のじいさんはもう、亡くなったからな。親父の方のじいさんだ。会長とは名ばかりで隠居して盆栽いじりしてるよ」
「確か、あのじいさん、お前には、かなり甘いじゃないか?前回の埋蔵金捜しも、じいさんの口添えだろ?今回も沈没船捜しの口添えして貰えよ」
雅治は名案だろ?とばかりに言う。
「アホか!箱根に行くと帰って来れないじゃないか!年寄りの相手も大変なんだぞ?ずっと昔話や同じ話を繰返し聞かないといけないんだ!それに、後を継げとか、そう言う話になるんだよ!
俺は今年の夏はオーストラリアに行きたいんだよ!前半大人しくバイトしておけば、後半に親父に黙ってオーストラリア行けるだろ?バイト代で」
「今年はつまらんなぁ~。俺もオーストラリアに行ってグレートバリアリーフにでもダイビングしに行くかなぁ~」
雅治はがっかりしながら言う。
「それ、面白そうだな?世界有数のダイビングスポットだよな?しかも世界遺産!」
雅治とは対照的に時宗は目を輝かせて言う。
「時宗、本気で世界遺産巡りでもする気か?」
誠は呆れながら言う。
「それもいいなぁ~」
すると数学準備室に唯野が帰ってきた。
「お前ら、もうすぐ中間テストなんだぞ。試験問題を作んなきゃいけないんだ。勝手に出入りするな!と言っているだろ?」
「兄貴、顧問してくれよ。そうすれば部室に行くからさぁ~」
「ん~!あんな部活が通るとは思えないが?活動内容も不明瞭だしな。囲碁将棋倶楽部にしておけば?」
「それはもう既にあるじゃないか?それに、夏休みに兄貴に同行して貰うのに囲碁将棋では同行してもらえないだろ?」
「おい、待て。俺を何処に連れて行くつもりだ?」
「何処にでも。アマゾンでもエベレストでも気が向けば~」
「アホか!薄給の俺にそんな世界旅行ができるかよ!却下だ!!」
「大丈夫だよ!スポンサーここに居るからさ~。旅費くらいはなんとかなるよな時宗?」
「ん?まぁそのくらいは親父も出すだろうが、今回の沈没船は無理だぞ。俺は、箱根で修行なんかする気は無いからな!」
「だから今年はオーストラリアにグレートバリアリーフにダイビングしに行こうぜ」
「オーストラリアかぁ~。いや待て、お前らの御守りはリスクが大きすぎる。俺1人では無理だよ!しかも、教師にとって一番幸せな夏休みのまったりした一時をなんでお前らに潰されるんだよ!お前らの事だから半月とか平気で行っていそうだしな」
「兄貴!よく考えてみろよ?教師の薄給で世界遺産巡りなんかこのチャンス逃すと一生無理だよ?」
「………………。いや、待て。お前ら、沈没船とかアマゾンとかエベレストとか言っていたよな?平凡な観光地じゃ無いだろ?」
「仕方無いなぁ~、兄貴の体力に合わした所にしてやるって」
「……………。まぁ、どうせ校長の設立許可出ないだろうしな~。好きにしろ。これから試験問題作るから、ほらさっさと出ていけ」
2.Proceed with the project.
唯野は後日、校長室に呼び出された。
校長室の入口付近に立ち
「あの?校長お呼びだと言われて来たのですが?」
部屋の奥の大きな机の前に校長が座り、隣には教頭が立っていた。
「唯野君そんな所に立って無いで中に入りなさい」
「はぁ」と唯野は渋々校長の目の前まで入って立つと校長から1枚の紙を差し出される。
『部活、同好会申請願』
同好会名: 暇潰倶楽部
代表: 櫻 時宗
顧問: 唯野 雄大
会員: 伊集院 誠、加藤 雅治
活動趣旨: グローバルな観点から空いた時間に世界を見つめる。
主な活動内容: 世界歴史探索、研究、世界遺産巡り。
スポンサー: 櫻グループ会長 櫻 嘉朗
「……………」
「これ、君が顧問を引き受けたの?」
「え~っと、引き受けたような?引き受けて無いような…」
「櫻氏からは、この学校に多大な寄付金頂いている。なので会長の名前が有ると却下もしにくいだが……。
それに趣旨は、立派な事を書いて有るが要約すると世界旅行だろ?君が責任持って連れて行くの?」
「え?俺がですか?」
「顧問は、君でしょ?一応、櫻 功氏に聞いて見たら、まぁ良識有る範囲での世界旅行は、今後の本人の人生に役に立つだろうから反対はしないが、時宗君の暴走をセーブする顧問を付けて欲しいとの見解の様なんだが?」と校長は言う。
「まぁ、この学校であの3人と対等に渡り合えるのも君位なもんだしね。許可する前に確認をしておこうかと」と教頭が付け足す。
「え~ぇぇ、許可されるんですか?休みの度に世界旅行しますよ?彼らは!」
「学校が費用出す訳で無いからね。制限はできないよね?部活内容を知って設立を許可すると」
「え?でも、私は?私の旅費、こんな薄給で付き合えませんって!それに俺は数学教師ですよ?世界史なんて詳しく知りませんし、地理とか生物学とか全然専門外ですよ?」
「しかし、君はハーバード大学出身だろ?専門外でも君の才能に、ここの教師でかなう者は居ないよ。
いくら有名私立高校だと言っても君の様な超有名大学出身の博士号持ちの人物が教師に来ている事、自体不思議なんだからね。君も変わって居るよね?まぁ、その点で言えば櫻氏の信頼は得やすいね。
ついでに時宗君達をオックスフォードに合格できるように個人指導して欲しいのだが?
その為に櫻氏から君に特別手当を提示されている。
一応加藤君と伊集院君も一緒にね。
あの2人が一緒に勉強すれば息子の頑張りが違うからと」
給料査定額の記載された紙を出される。
「え?ぇぇぇ桁が………」
「ちなみに、当然、私達の給料より上だからね……。いくら私立だとはいえ、一般教員が校長よりいい給料なんて前代未聞だよ?なんなら、あの3人を特別クラスとして分けてもいい。とにかく彼らの学力を伸ばしてくれ。才能は有るんだから無謀な事ではないだろ?
まぁこの学校からオックスフォードやケンブリッジに生徒を現役で輩出することが出来れば、願ったり叶ったりだ。いいかな?」
「いえ、よくは………」
「何が不満?何処に行ってもそれ以上の年収は無いと思うが?」
「いえ、教師になったのは、空いた時間に数学の研究したくてで……」
「彼らが無事入学を果たせたら櫻氏に口添えしてあげるから取り敢えず引き受けてくれ。それだけの給料3年貰えれば十分研究資金になるだろ?
後、彼らの学力あげる為なら在籍教師全てに協力させるから何でも彼らに指示してくれ。いいよね?」
校長は、ほぼ押し付けに近い。
「よろしく頼むよ。それだけのお金もらって失敗は出来ないからね」と教頭が不安そうに言う。
(金の力は凄いな、学校の体勢まで変えるのかよ。まぁ、俺の場合、高校からアメリカの学校に居たからな。親からもハーバード大学に入る様なカリキュラムの高校を選んでくれて居たが、かなり勉強漬けだったよなぁ~、その反動で教師しながら空いた時間を好きな研究しょうと思ったのだが……。
でも、彼らの才能には正直、興味がある。俺の教え方でどのくらい伸びるかやってみたい。【教師】と言う職業を選んだのだから……)