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Nostalgia - 追憶 -  作者: 天野 花梨
To find each other, and to feel.
15/40

To feel relieved

1.His sudden visit took me by surprise.


 櫻グループ海洋開発部門横浜事務所


 ある日、突然思いもよらない人から連絡が入る。

 雅治が横浜事務所の自分の部屋で雑務をしていると内線が入る。

「部門長、お電話が………。どういたしましょ?」と受付した女性社員が雅治に伺いをたてる。

 基本的に雅治は職場の電話には出ない。

 急ぎの連絡がある場合、直接携帯に電話してもらうか、番号を知らない者は伝言を聞いて貰ってから対処する。

「ん?何時も通り伝言を聞いてくれる?」と女性社員の何時もと違う対応に違和感を感じなら返答する。

「えっと……。統轄長の息子さんからなんですが………。どうしても直接お話しがしたいと……」と言葉から断り憎いですオーラ全開で言う。

 雅治は苦笑しながら聞く。

「ん?廉?玲音?」

「玲音様の方です」

「あぁそう、分かった出るよ。俺の部屋に回線まわしてくれる?」

「はい、解りました」と安堵の溜め息が聞こえそうな声がした。

「玲音か?どうした?俺になんの用だ?」

「加藤さん、親父に内緒で頼みが有るんだけど聞いてくれないかなぁ?」

「ん?また、何か仕出かしたのか?」

「う~ん、その表現で言うなら、どちらかと言うと今から仕出かすと言うのが正しいかなぁ?」

「どんな事だ?取り敢えず言ってみろよ」と雅治は話しを聞く。

「俺さぁ~。少しの間一人でのんびりあの島に旅したいんだ。でもあの島に渡るのは船か飛行機が要るでしょ?連れて行ってくれないかなぁ?」

「なんで、そんな事が時宗に内緒なんだ?」

「親父は何かと煩いからさぁ、それにまだ大学休みに入って無いし……」

「大学サボるのか?兄貴に怒られるぞ?」

「まぁ平たく言うと、そうなるね。俺は、今までちゃんと出席日数は稼いでいるし、成績もちゃんと残しているから大丈夫だよ?ただ、ゆうだい先生は俺に会え無くて寂しいかも知れないけどねぇ~。

 まぁ、戻ったらちゃんと顔出して相手するから少しの間我慢して貰わないとね。

 一応、齋藤先輩にも連絡してみたんだけど連絡つかなくてさぁ~。加藤さんに頼る他無いんだよ」

(兄貴は寂しいとは言言わず反対に喜ぶけどな?)と心で呟きながら続けて聞く。

「なんで1人旅なんだ?廉はどうした?」

「たまにはさぁ~。俺も1人になりたくてね」

「ふーん。まぁいい、詳しい話は後でゆっくりと聞いてやろう。取り敢えず横浜事務所迄1人で来れるか?」

「うん、子供じゃないんだから行けるよ」

「そうか、なら事務所まで来い。そこでゆっくりと話しを聞いてからだ」

「うん、分かったよ~。まだ親父や廉にも内緒にしてよね」

「あぁ、分かったよ!気を付けて来いよ」

 15分もしないうちに1階のロビー受付から内線で玲音の到着したと連絡が入る。

(もう来たのか?早いな……)

「取り敢えず俺の部屋に通してくれ」と内線に答える。

(やれやれ、どうしても今日中に事務仕事を片付けないといけなくなったなぁ~)と呟いて居るとノックの音がし、玲音が顔を出す。

「加藤さん来たよ~」と満面の笑顔で言いながら玲音が部屋に入って来る。

挿絵(By みてみん)

「早かったな?ほぼ近く迄来て連絡入れたな?俺が此処じゃなくホテルの方の事務所に居たらどうする気だったんだ?」

「ちゃんとその辺は調べてるさ。子供じゃないんだからさ、俺だってちゃんと考えて行動しているよ」

「そうか、悪いがこの仕事だけ片付けるから待ってくれるか?なんなら、玲音お前が仕事を手伝ってくれてもいいぞ。早く島に行きたいんだろ?」と雅治は玲音に報告書を渡す。

「相変わらず人に仕事を押し付けるのが上手いよね?」と玲音は苦笑しながら言う。

「苦情はお前の親父に言えよ。ハンパない仕事量を次から次へと出して来るんだからな」と言いながら仕事を片付けて行く。

 2人でフル稼働して小一時間でなんとか仕上げた。


「さてと、何が有ったんだ?。お前は、自分から1人になりたいとか言うような奴じゃ無いだろ?どちらかと言うと、反対だ。1人になるのが嫌な奴が1人旅とは、おかしな話しだ」と雅治が鋭く言う。

「まぁ後でゆっくり話すからさぁ~。連れて行ってよね?」

「まぁ、そこまで言うなら仕方無いなぁ」と言うと同時に携帯が鳴る。

「早速、お前の親父からだぞ?取り敢えず心配するからここに居ることは伝えるぞ?」

「う~ん……」と玲音は怪訝な顔をする。

「ちゃんと口添えもしてやるよ」と言い雅治は携帯に出る。

「なんだ?時宗。お前が、直々に電話とは珍しいな?」

「あぁ、そう言われれば、そうだな?

 所で雅治、玲音そちらに居るか?」

「あぁ、よくわかったな。居るぜ、代わろか?」

「そうか、やっぱりそこか!悪いが代わってくれ」

 雅治は玲音に携帯を渡す。

「何?親父」

「何?親父では無いだろ?一人で勝手に行き先言わずに出掛けるな!皆が心配するだろ?」

「ちゃんと手紙は書いておいたさ」

「行き先は書いて無かったろ?大学は?バイトは?無責任な事はするな。

 もう子供ではないんだ。責任ある行動しなさい。雅治に代わってくれ」と時宗は言いたい事だけ一方的に言う。玲音は携帯に向かって怪訝な顔をしながら雅治に携帯を返す。

「時宗、まぁそんなに怒るなよ。お前だって若い頃、散々好き勝手に姿消して居ただろう。お前と違って玲音は海外に姿を消さず、居場所もちゃんと分かって居るんだから少しの間、島に滞在させてやってもいいだろ?少しは息子の思うように自由にさせてやれよ」と雅治が言う。

「う~ん、仕方無いなぁ~。雅治がそこまで言うなら、悪いが玲音をよろしく頼むよ」

「あぁ、わかってるよ!それじゃあな」と雅治は電話を切り玲音の頭を撫でながら「親父の了解は無事得たぞ、さて当分の間、俺の仕事を手伝えよ?」と言う。

「う、う~ん。加藤さん俺、加藤さんの仕事を手伝う為に大学サボるわけでは無いんだけど?」と玲音が言うと、「俺も職務中なんだぞ?お前の我儘で職務放棄は出来ないだろ?でも、お前が俺の仕事を手伝えば職務の一環として大手振って連れて行けるだろ?」と雅治はもっともな事を言い玲音を言いくるめる。

「う~ん。加藤さんには敵わないなぁ~」と玲音は苦笑しながら言う。

「なら、取り敢えずホテルの事務所に向かうか?支度するからロビーで待ってろ」

 雅治は玲音を車に乗せて島方面に向かう。

 車内では、敢えて雅治は玲音に何も聞かなかった。なので玲音が一方的に雅治にたわいの無い話や質問、世間話をしていた。

「加藤さんの両親は弁護士なんでしょ?でも加藤さんはなんで弁護士を目指さなかったの?」

「玲音お前は、時宗の跡継ぎたいか?あのグループの統轄する仕事を魅力的に感じているか?」

「う~ん、どちらかと言うと、俺は、したくないな……」

「俺もお前と一緒で親の仕事を魅力的に感じなかったからだよ」

「ふーん、でもやりたい事を仕事にできるっていいね」

「そうだな。でも、それにはそれだけの努力と運が必要だな。

 そろそろホテルに着くぞ。今日はしっかり休んでおけよ。海の上は体力かなり奪われるぞ、明日朝9時にロビーに来い」

「うん、ありがとう」



2. To feel relieved.

挿絵(By みてみん)

 翌朝、玲音と雅治は島近くの海原に船ででかけた。

 船の甲板に加藤と玲音は並び海を見ながら雅治は玲音に言う。

「さて、何があったんだ?」

「う~ん」

「言えない事か?一人で抱え込んでも解決はしないと思うがな?」

「親父には、内緒にしてくれる?」

「あぁ。言って見ろよ」

 玲音は、廉の婚約騒動と自分の感情を話す。

「成る程な」

 雅治は、自分達3人の親友の信頼関係になぞり、玲音が廉との絆を再確認するように話しかける。


「廉はちゃんとお前を見つけたぞ?

 お前が何処に居るかちゃんと分かっていてくれてるじゃないか?

 玲音の事をきちんと理解して、信じている。少なくとも俺から見れば廉の心には、玲音が何時も居ると思うがな?

 玲音お前は、廉の事を見つけられるか?

 廉の心が何処にあるかわかるか?

 きちんと心を繋げているか?

 廉をもっと信じてやれよ?」と玲音の肩を叩きながら言う。


「そうだね。加藤さんの言う通りだ。

 ありがとう、スッキリしたよ!」

「そうか折角、ここまで来たんだ。海はいいぞ。この広い海原に居るとちっぽけな悩み事なんて、たいした事は無いと思えるさ。ゆっくりと心癒してから帰れ。

 そのついでに当分の間、俺の仕事を手伝って行けよ」と雅治は玲音に向かって楽しそうに言うと玲音は「仕方無いなぁ~。少しの間だけだよ?」と苦笑した。


 玲音は探査船の隅々を興味深く探険していた。その間、雅治は部下に観測箇所を指示しデータを取るように言う。

 雅治は自分の船室に戻ってみると、玲音が入り込み、ある一点を目を輝かせながら見ている。

 咄嗟に雅治はまずいと直感した。

「玲音、海底に潜って見るか?」と興味をそらそうとしたが、玲音は棚の中のライトセーバーのレプリカを指差し、「ねね、加藤さん!あれ見せてよ!凄くカッコいい!」

「う~ん。あれは俺の宝物だからダメだよ」

「え~。見るだけ、近くで見るだけだからさぁ~。お願い!」

「お前、見たら絶対に欲しくなるに決まっているからダメだ。これなら見せてやるよ。隅々まで心行くまで見ろよ!」とヨーダの等身大フィギアを机の上に置く。

「お!すげー。ヨーダだ!こんな大きなフィギア凄い!!」と玲音は釘付けになる。

「加藤さんはSTARWARSのコレクターなんだよね?ここにはこれだけしか無いの?」と聞く。

「無いよ。それにコレクターとはおこがましいな」

「ねね、今度加藤さんの家に遊びに行ってもいい?コレクション見せてよ!」

「見せるような物は集めてないよ。どうしてもと言うなら大学卒業したら海洋開発部門に来ると約束するならいくらでも来ていいぞ?部下を家に呼ぶのも上司の気遣いのひとつだからな?」と笑いながら玲音に言う。

 “A Jedi must have the deepest commitment, the most serious mind. ”

(ジェダイには固い決意と真剣な心構えが必要だ)

 と玲音はヨーダのフィギアを前面に出し声色を変えて雅治に言う。

 それからフィギアに向き合い

「…………。そんな約束したら親父と廉に怒られるじゃんかねぇ……… 。俺にそんな心構えは出来てないよね?」 とヨーダに話しかける玲音が居た。

「お前、よくそのセリフ知っているな?エピソード4の中のセリフだぞ?」とうれしくなり、つい釣られそうになる雅治が居た。

挿絵(By みてみん)

 玲音は船での生活が気に入ったようで文句は言っているが雅治の仕事を楽しみながら手伝っていた。

「加藤さん、このデータ何か変だよ?

 ほらここ。海溝でもあるんじゃない?」

「そうだな?無人の潜水艇を出して見るか?玲音このまま海洋開発に来いよ?」

「親父に怒られるよ」

「時宗なら俺が何とか説き伏せてやるよ」

「廉、居ないし。あっ加藤さんほらここ、やっぱり海溝じゃない?結構深そうだよ」

(廉と言う笹ないとやっぱりダメかぁ………)

「ん?そう言えばそろそろ定例会議じゃないの?」と玲音は雅治に向かって言う。

「そうなんだよな?面倒さいなぁ~」

「今回はどこでやるの?」

「確かロンドンだったはずだ。一緒に来るか?」

「嫌だよ!イギリス行くとじいさんの所に寄らなければ行けないじゃん」


 2人はたわいの無い会話をしながら作業を進めていった。


「はい、これデータ取れたよ」

「あぁ、ありがとう」

「加藤さん。そろそろ俺、島に行きたいんだけど連れてってよ」

「あぁいいが、あんなとこで何するんだ?」

「あの島、楽しいじゃん。特にあの道、バイクでとばすと気持ちいいもん」

 ”You will know, when you are calm, at peace, passive.“

(自然に分かる。心を平静に、無の境地にひらけば。)とまたヨーダのフィギアを使い物まねで玲音は言う。

「ああ、そうだな。彼処程、無の境地極めるにはいいかもな。齋藤に連絡しておいてやるから、この報告書を英語で書いてくれないか?ジェダイの騎士君」と笑いながら雅治は言う。


 すると、時宗から電話がかかる。

「雅治!玲音を取り込んでるだろ?」

「そんなことはしてないさ。ただ口煩い親父よりは俺と一緒に過ごす方が楽しいのかもな。俺達は win―winな関係を築いて居るだけだからな?」

「海洋開発部門にスカウトなんかしてないだろうな?

 もし、玲音が海洋開発部門に行くとごねたら、お前をガラパゴス諸島にでも、飛ばすからな?当分日本には帰さないからな!覚悟しろよ!」

「大丈夫だって、廉と言う笹が無い限り来やしないさ。それにガラパゴス諸島はお前の大好きな世界遺産じゃ無いか?

 お前を差し置いて俺だけ優雅に絶景堪能しながら過ごせるなら大歓迎だ。喜んで行ってやるぞ?

 しかし、そうなると誰がこの調査引き継ぐんだ?」

挿絵(By みてみん)

「………。試したなお前?」

「なんのことかな?」

「あと、定例会議の報告書を早く出せ、秘書室から文句が出てるぞ!」

「明日には送るよ。それと玲音は明日からリゾート開発部門に行くそうだ。

 これは本人の意思だかな?俺のせいではないぞ?」

「雅治、何とか玲音を東京に戻るように説得してくれよ?」

「いいじゃ無いか?たまにはゆっくりさせてやれば」と言い電話を切る。


「明日、島に送り届けてやるが、まぁ時宗も心配しているからほどほどで帰れよ!」と雅治は玲音の頭を撫でながら言う。


 翌朝、玲音と雅治はヘリで島に向かった。

「加藤さん、ヘリの免許は何時、何処で取ったの?」

「ん?アメリカだな。大学卒業後に飛行機の免許と一緒に取ったんだよ」

「いいなぁ~。俺も取りたいなぁ~」

「時宗に言えば良いじゃないか?あいつも、俺達が取るならと一緒に取ったぞ?」

「俺達??」

「あぁ、誠と3人で取りに行ったんだ。まぁ、最初に取ると言いだしたのは誠だったけどな」

「へぇ、親父、自分は取った癖に俺にはダメって卑怯だ!」と玲音は怒る。

「まぁ、玲音は自分が運転することは殆どないだろうから要らないだろ?時宗も免許は有るが全然運転してないから運転出来るか不安だぞ?」

「俺、免許取ったらちゃんと使うよ?」

「ふーん。成る程な」

「何?」

「多分あちこち運転して居なくなる可能性や事故が怖いから時宗はダメって言っているんだろうなと」

「そんな事言ってたら何処にも行けないじゃ無い?加藤さんからも口添えしてよー」

「急いで取る必要は無いだろ?それこそ海洋開発部門に来れば、俺の権限で上司命令として取らせてやれるがなぁ~。おっそろそろ島に着くぞ」と雅治は笑いながら島を指差す。

 玲音は島上空から以前来た時と様変わりに目を奪われながら見入る。

 島に着き玲音を齋藤に任せる。

「齋藤君、よろしく頼むわ」

「はい、わかりました」

「加藤さんありがとう。またよろしくね。今度は加藤さんの家に遊びに行かせてよ」と玲音は雅治に向き合って言う。

「まぁ、そのうちな。海洋開発部門に来るのはいつでも歓迎してやるし、飛行機の免許もとらせてやるぞ。じゃあな!」と雅治はヘリに乗り込んだ。


 (また、時宗の愚痴を聞くはめになりそうだな。)と深い溜め息をしながら雅治は戻って行った。


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