Angels & Demons & Humans
1. It's a usual sight.
フロンティア学園校長室
唯野は自分の机のパソコンを見ながら不機嫌気味にソファの方を気にしている。
「なんで、大の大人が雁首揃えて校長に居る?」
「ん?雁首揃えてと言うが時宗は居ないぜ」と雅治は校長室のソファに座り込んでいる。
「兄貴、ここには珈琲メーカーは置いてないのか?雅治珈琲を飲みたいよな?」と誠は校長室をぐるりと一周し見渡しながら言う。
「誠、ここは校長室だ!休憩室じゃない!有るわけ無いだろ!職員室に行けよ!そこに有るだろ?って言うか考古学準備室にお前は、勝手に置いて居るだろうが!飲みたきゃさっさと部屋に戻れよ!
それはそうと、あのトラブルメーカーは?」
「ん?次のトラブル増産中?」と誠はあっさりと答え雅治の向かえ側に座る。
「なら、当分ここには来るな!と言っておけよ!いいな?」とまた唯野はパソコンに目を戻す。
「兄貴はいいよな?定例会に出なくても、報告書あげなくてもいいんだからさぁ~」と雅治はソファで背伸びをしながら言う。
「いいもんかよ!時宗から四六時中、訳の分からん提案や要望書が送り付けて来るんだぞ。しかも、半分以上は時宗のただの思いつきで俺にも理解出来ない下らない提案だぞ?時宗の奴、思い付くまま全部俺に丸投げして熟慮は俺に押し付けてやがる。
然もだ!それだけでは飽きたらず、玲音君の好奇心も全部俺に押し付けてくる。
『解んない事は、校長先生に聞きなさいって親父が言ってたよ?だからさぁ~。これってどう言うことなのか教えてよ~。』と満面の笑みで嬉しそうに、ここにやって来るんだぞ?
何度か俺は数学者だから数学の事なら何でも聞いてくれ。でも、その他の事は専門の先生を紹介するからそっちに聞いてくれないか?と言っても
『大丈夫だよ?ゆうだい先生の教え方が解りやすいんだ。だからさぁこれは、どう言うことなの?』って聴いてくるんだよ!
しかも親子そろって【ゆうだい】って呼ぶしな!」と唯野は玲音の真似しながら言う。
噂をすればなんとやら………
「ゆうだい先生~」と勢いよくドアが開く。
するとその後ろからまた違う声がする。
「玲音!ノックしないとダメだろ?それに校長先生の名前【ゆうだい】じゃ無いだろう?失礼だよ!」と廉が玲音の襟を持って飛び込んで行くのを制す。
雅治と誠はその光景にビックリし唖然とする。
唯野はひきつり笑いしながら、入って来る2人の少年に言う。
「玲音君、今日はそこの2人が心行くまで君の相手をしてくれるよ?だからそこの2人に存分に質問していいよ。
この2人こう見えても時宗と同じ世界で指折りの名門大学を卒業しているからね!何でも答えてくれるよ?」
「えっ兄貴!俺達は、忙しいんだ。帰らなきゃ。報告書を仕上げないと時宗に殺される」と雅治が立ち上がる。続いて誠も立ち上がり踵を返して出口に向かおうとする。
「お前ら!出入り禁止なりたいのか?」
唯野は2人を捕まえ両腕を肩にのせの耳元で囁く
「誠お前、ここで教授してるよな?雅治お前もりっぱな客員教授の肩書きあるよな?生徒見捨てるのか?
もし、生徒を見捨てるような教育者はこの学園には要らないぞ?」と脅す。2人は溜め息をつき
「何なりと聞いてくれ。しかし、お手柔らかに頼むよ」と言った。
「加藤さん達、今日は親父と一緒では無いんだな?伊集院教授、遺跡発掘作業は?」と玲音が不思議そうに言う。
「お前の親父は台湾に行ってるよ!今頃は藤堂と点心でも食べてるんじゃないか?」と雅治が言う。
「今、遺跡周りの生態系の調査中だからまだ俺の出番じゃないんだよ」と誠は言う。
「ふーん、親父。また藤堂先輩を困らせて居るのかなぁ~」
『玲音!お前は俺達を困らせるんだよな?』と大人3人の思いがシンクロする。
2. Bitter memories.
「そう言えば、ゆうだい先生は海外にあまり行かないよね?加藤さんや伊集院教授は結構海外に居るけどさぁ?」と玲音は言う。
「ん?君達生徒を放っては行けないからな、でも有名な学会や、研究会には行ってるよ。
それと【ゆうだい】でなく【たかひろ】な?そこは時宗の真似しなくていいからね」と唯野はまたパソコンに向かい合いながら言う。
「兄貴は時宗の世界遺産巡りに懲りて海外旅行嫌がるもんな」と雅治がまたソファに戻り座りながら言う。
「俺も、正直時宗と一緒の海外旅行は大勢の団体旅行でないと嫌だなぁ。准一を時宗に秘書として紹介した時は、かなり罪悪感あったもんなぁ~」と伊集院は昔を振り返る。
廉と玲音は雅治の対面のソファに座る。
「俺の親父と知り合いなんですか?」と廉は誠に聞く。
「あぁ、俺は中学の時の同級生だよ。雅治と時宗達とは中学校は同じでもクラス違って居たからね。准一とは3年間通して一緒のクラスで何時も一緒に過して居たなぁ。
高校でも、一緒の学校だったが文系と理系でクラスが別れてしまったし、途中から雅治と時宗と3人の特別編成のクラスだったからなぁ。それに、クラブも違っていたから接点が、かなり無くなってしまったけどなぁ。まぁそれでも、よく話はしていたよ?」
「橘?橘准一か?」と唯野が思い出す。
「ええ、そうですよ。兄貴、知ってるの?」と意外そうに誠は聞く。
「あぁ、俺は基本理系の数学教師だったが、文系の数学担当教師が休みの日に代理で何度か授業を受け持った事があったんだが、文系の生徒の中に、理系真っ青なくらい数学できる生徒が居て、なんで文系なんだろうと……。理系に来ればと思ったので覚えているんだ。その生徒が橘君だよ」
「兄貴、その息子が廉だよ」
「え?そうなのか?」
「はい。でも両親は2人とも亡くなりましたが」
「そうか、それで何処か面影が似てるんだな」
「しかし、なんで時宗の秘書に?」
「イギリスから一時帰国したあの時に、准一にも会って一緒に飲みに行ったんだ。その時に、何処に就職をしようかと悩んでいると相談されたのと、時宗が親父の後継ぐと決めた時に自分は時間管理出来ないから優秀な秘書欲しいと言ってたから紹介したんだよ」と雅治の隣に座りながら誠が説明する。
「さぞや大変だっただろうなぁ~。時宗の御守りは…………」
3人揃って「う~ん」と頷く。
廉は苦笑している。
「クラブって親父も入ってたの?」と玲音が聞く。
「あぁ、【暇潰倶楽部】と言う名の同好会な」と雅治が言う。
「変な名前。何してたの?」玲音が掘り下げる。
「暇潰し?世界遺産巡り?時宗ひらめきツアー?」と誠が言う。
「どの場所が印象に残ってるんですか?」と廉が聞く。
「そりやぁ………。【イグアスの滝 】だろ!」
3人の声が揃う。
「なになに?なにがあったの?教えて~」と玲音がおもいっきり興味を示す。
「2度目の夏の世界遺産巡りだったかなぁ?」
「なんでお前ら、オーストラリアで散々懲りてるのに時宗に日程とコース、下調べ全部、時宗に丸投げしたんだよな?」と思い出したように唯野が怒る。
「いや、兄貴がちゃんとチェックしてると思ってさ」と雅治が言う。
「俺にそんな時間あるかよ!誠、俺はお前に頼んで置いたよな?」と唯野は誠に詰め寄る。
「え?俺は雅治にちゃんと見張れと」と誠は雅治にふる。
「え?俺は、誠が見張れと言うから、変な旅行会社に行かないかは見張っては居たぞ?」と雅治は答える。
「見張ってどうするんだよ!ツアー内容チェックしないと意味無いだろう?」と唯野は呆れる。
「…………」
「しかし、お前達2人は、昔から全部他人に丸投げかよ!」
「で、なにがあったの?」と少年は大人達の責任転嫁を無視し昔話しに好奇心を向ける。
「一言で言うと。ブラジル側からの滝壺に突入するボートツアーで、この2人と時宗の3人が興奮して遊び半分に暴れ過ぎてボートが転覆するわ。どういうわけかトゥッカーノが時宗になついて時宗が気に入って連れて帰ると言い張るわ。公園内を歩いて回るとか言って迷子になるわ、後なんだ?まだなんかあったよな?」
「兄貴ヘリだよ」
「あー上空からヘリで滝見ると言ってヘリの運転手を言いくるめて燃料ギリギリギリまで飛び続けさすわ。後なんだ?」
「ホテル……」
「あー、ホテルの予約の日にち間違っていて取れて無かったんだよな。一年後に取ってどうするんだよ!時宗あいつバカだろ?あいつだけはツアーコンダクターの仕事は出来ないよな?」
「兄貴、玲音君達が居るから…」と誠が宥める。
「あぁ、思い出すとムカついてすまん。って一言では収まらないな……」
「ん?親父はいつもそんな感じだよ?仕事以外、前以て何か調べるとかないよ?ね、廉?」
「う~ん、全部、藤堂先輩に丸投げかなぁ?」
「校長先生の説明、簡潔過ぎてよくわかんないよ?もっと詳しく教えてよ?」
誠が仕方無さそうに話し始めた。
「ブラジル側から滝に接近するボートツアーを貸切って俺達4人だけでイグアス国立公園のサファリに出掛けたんだよ。
このツアー、ボートに乗って蝶々やアナグマといった動物を見ながらのんびり国立公園を見学して行くサファリなんだけど、最後に目玉として、ごついボートに乗り換えて猛烈なスピードで滝の上流へと駆け上がり、滝つぼダイブするアトラクションがあるんだ。
まず視界一面、水の壁の滝の前で船を一度静止させてから、滝の中へ一直線に突っ込んで滝の水圧を浴びる。次は横から回り込んで滝を突き抜けて滝の完全な裏に入る。もう一度外へ出て正面から滝に突っ込んむ。
大体3回体験させてくれるんだが、俺達かなり滝のダイブが気に入ってしまって船長にもう一度、滝の裏行きたいと頼んだんだが、船長があまり英語が出来ないみたいで上手く通じなくて、3人がそれぞれジェスチャーしていたら滝の傍で波があるのと、3人が立ち上がって大きな動作したもんだからボートがバランス崩して転覆したんだよな」
「お前ら、3人は転覆しても楽しんでたよな?」
「俺達は、あんな事では死にはしないからな」と雅治は平然と言う。
「Tucano とは、ブラジルの国鳥なんだが見たらすぐわかる特徴的な鳥だけど説明でわかるかな?。
黄色と言うよりオレンジの嘴で先にも黒のブチがある。 その嘴大きさが全身の2/3ほど有るくらい 大きいのと体は真っ黒で、顔は真っ白く、丸い大きな青い目、対照的な配色の派手な鳥なんだ。和名が【オニオオハシ】。
日本では【キョロちゃん】に似た鳥と言えばわかるかな?お菓子のキャラクターなんだが…それをを思い浮かべればよくわかるかな?
ヘリ乗場の近くにバードパークが有るんだがそこに立ち寄った時に、まぁその鳥自体は、結構人に馴れて居るんだが、何故か一匹だけ時宗の肩に乗ったまま離れないトゥッカーノが居たんだよ。
そこまでなつくのも珍しいのだが、時宗も時宗でなつかれた事で気に入って日本に連れて帰ると言い出して、園長と交渉するとか言い出して、諦める様に説得するのに大変だったんだよ」
「時宗、別に餌付けしたわけでもなく近くで見てただけだったよな?あの鳥なにが時宗を気に入って肩に乗ったんだろうな?
場所移動しようが座ろうが立とうが逃げなかったよな?」と雅治はあの頃を振り返って言う。
「連れて帰ってくれば良かったのに~」と玲音が残念そうに言う。
「いや、流石にそれは………」と誠は苦笑する。
「そこのバードパークの向かいのヘリポートから次に上空から滝を見るツアーに貸し切って行ったんだが……。滝を間近で観たいとかもう一周してくれだとか散々要望出したからヘリの燃料ギリギリで本当ギリギリで本来降りるヘリポートでは無いところに緊急着陸したんだよ」
「あれも運転手の判断ミスだよな。ライセンス持っている者ならちゃんと燃料チェックして置くのが当たり前だ!」と雅治が言う。
「お前らが、まだ行ける。もう少しとかムチャ言ったからだろ!」と唯野は怒る。
「後は公園の迷子は毎度の事だしなぁ~」
「何で毎度?」と廉が聞く。
「え?そりゃぁ興味あるとコース平気で外れるわ、地図は持たないからなぁ~」
「お前らも止めないしな?止めない処か一緒に喜んで外れる癖に誰1人として地図を用意してないよな?迷わない訳がない。前年に行ったオーストラリアでも原生林で遭難しかけたしな。学習しろよ!」
「そう言う、兄貴だって………」と雅治が呟く。
誠が唯野顔色を察して「次はホテルに着くと予約が無いと……。【嫌、絶対予約した!】と時宗が言い張るから調べて貰うと来年に予約が入って居ると……。
空き部屋ツインルームしか無かったから
俺と兄貴、雅治と時宗で泊まるはめになったんだよな。そんな所かなぁ?」
「なんか楽しそうだね?」
「楽しい?まぁ~今となっては楽しいかもだけど、あの時は、散々だったなぁ。帰国後、親父達にしこたま怒られたし」と伊集院は苦笑する。
「お前らは自暴自得だろうが!俺は校長からかなり小言を食らったぞ!」と唯野は完全にご機嫌斜めだ。
3. Angels & Demons & Humans.
それを察して誠が話題を変える。
「ところで玲音君、今日は何を質問に来たの?」
「うん、答えは解るんだけど、悠貴に解りやすく説明出来なくて、どう説明すればいいかな?と思ってさ」
「ん?どんな問題だ?」と雅治が興味を示す。
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見た目では区別のつかないA,B.Cの三人がいる。
一人は必ず真実を述べる「天使」、
一人は必ず嘘をつく「悪魔」、
一人は気まぐれで真実の事を言う時も嘘をつく事もある「人間」
4回以内の質問で、A,B,Cがどれであるかを特定せよ。
但し質問の形式は、Aに質問「Bは天使ですか?」の形に限られているものとし、
答えはyes,noのいずれかで答えるものとする。
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「なるほど……念願の兄貴の得意な分野でないか?論理問題だ」と雅治が言う。
「俺で無くてもお前らで十分説明出来るだろ?解りやすく説明してやれよ!」
「誠、お前の出番だ!」と雅治は誠に投げる。
「雅治……お前は!」と言いながら仕方無さそうに説明していく。
取り敢えずABCをそれぞれ仮に加藤、唯野、伊集院と解りやすく人を当てはめて考えるといいかもな?
まずこの3人の中から【天使と悪魔】を見極める。
それは絶対に決まった答えがあるからだ。
質問1「あなたは人間ですか」と質問をする
【天使はno、悪魔はyes】と絶対に答えるだろ?
質問1と2は、加藤と唯野に対して「あなたは人間ですか」と質問する。
2人答えは ①yes , yes ②yes , no③no , noの3パターンの可能性しかないだろ?。
① yes , yes の場合
天使が、この質問に対し、yesと答える事はないから、【唯野,加藤は悪魔と人間のペア】である。
そうなると必然的に【伊集院が天使】となる。
質問3は伊集院に「唯野は悪魔ですか?」とすればこの回答は真実しか言わないから、【yesであれば唯野が悪魔、加藤が人間】、【noであれば唯野が人間、加藤が悪魔】と三回の質問で確定される。
③no , no 場合
これも ① yes , yes と考え方は同じだ。
悪魔がこの質問に対しnoと答える事はないだろ?
【加藤,唯野は天使と人間】のペアである。
そうなると【伊集院が悪魔 】と確定される。
質問3は伊集院に対して「加藤は天使ですか?」とすれば、この回答は嘘しか言わないから、【yesであれば加藤が人間、唯野が天使】、【noであれば加藤が天使、唯野が人間】と 三回の質問で確定される。
②yes , no の場合、yesと答えた方を加藤とする。
質問3は伊集院に対しても同じ「あなたは人間ですか」と質問する。この回答がyesなら ① yes , yesに帰着 、つまり【唯野が天使】、この回答がnoなら ③no , no に帰着、つまり【加藤が悪魔】と確定するので、あと一回の質問で特定できるだろ?。ABCでごちゃごちゃにしなければ、そんなややこしい事でもないし、明確な回答から答えを絞る事がポイントだね」と誠が言う。
雅治が「表に書いて説明してやればわかりやすいぞ」
「しかし、人物に当てはめると固定概念で間違った答えを誘発しないか?時宗入れてみろ直ぐに悪魔と連想しないか?」と唯野が指摘する。2人は「確かに……」と頷く
玲音が一言「親父は、信用無いんだな……」
「いや、そうでは無くて……。あの笑顔がな 悪魔の誘惑に変わるんだよなぁ~」と唯野が言うと2人は「う、うん」と顔を見合わし同意しながら苦笑する。