An inquiring mind
"The most incomprehensible thing about the universe is that it is comprehensible."
- Albert Einstein -
( 宇宙について最も理解しがたいことは、それが理解可能だということである。 -アインシュタイン-)
1. I am invited to the end of the universe.
「う~ん……」
13才の1人の少年が頭を抱えて悩んでいる。
「何、悩んでるんだよ?」
「ん?う~ん。ねね、宇宙の始まりはビックバンからなんだろ?」
玲音が廉の部屋で科学誌を広げていた。
「想像を遥かに超える凄い質量の小さな一点が爆発して宇宙が生まれたんだよな?」
「まぁ、そう言われているな?宇宙創生の勉強してるのか?」と廉が隣に座り雑誌を見る。
「ん?相対性理論というか。タイムマシンを調べていたら、宇宙の果ててどうなってるのかな?って思ってさ」
「宇宙は膨張し続けているからな?果てを探すのは一苦労だ」と千景がパソコン見ながら口出す。
「もし、宇宙の果てが見えると仮定しても宇宙が誕生したのが137億年前だから137億光年先それ以上先は無いと言うことになるでしょ?
でもビックバンで宇宙は等価距離に膨張しているのかな?」と玲音は言う。
「う~ん、今度おじさんに聞いてみたら?」と廉は匙を投げる。
「親父、化学とかには強いけど、宇宙とか物理は得意に見えないけどな?まぁいいや電話してみよう」と玲音は時宗に電話をかける。
「親父?今どこにいるの?」
「ん?東京にいるが?」
「なら丁度いい、そっちに行くよ!」
「え?何しに?」
「ちょっとさぁ~。聞きたい事有ってさ?」
「ええ、何?今、来ると言われても忙しいんだけど、すぐ済む話?」
「電話ではさぁ~。説明しにくいからさぁ」
「えええ?どうしても??急いでる?」
「だってママ今、日本に居ないし、ママだと多分専門外だろうし、気になるし……」
「何?何が気になるの?」と時宗は明らかに焦る。
「だから説明に行くって。じゃあね」
「えええ?玲音?玲音………。切った?」
(う~ん。何だろう…。凄く嫌な予感がする。)
携帯電話を見つめて居ると藤堂がやって来た。
「何をされて居るのですか?」
「う~ん、今、玲音から電話かかって来て聞きたい事が有ると……。何か嫌な予感がするんだよね?」
「これから上層部の戦略会議ですよね?
会議は時間かかりますよ?」
「そうなんだよ。それ言う前に切ったからさぁ~。藤堂君、玲音来たら相手してやってくれない?」
「何の用事なんですか?」
「さぁ?聞きたい事が有るとしか言わなかったから、ろくでもない質問する………。あっいや………」
藤堂が時宗を睨みつけて言う。
「そのろくでも無い質問を私に答えろと?」
「いや、ろくでもなくもないかもね?聞いても教えてくれなかったんだから仕方無いよね?」
「なら会議をずらす様に手配しましょうか?」
「いやぁ~。仕事を優先しないとね?いくらなんでも私用で他の社員を巻き込むのはね。あっこんな時間だ。会議室に行かないと。藤堂君よろしくね」
「………………。押し付けられた?」と藤堂ムッとする。
数十分後、玲音と廉がやって来た。
応接室に通され藤堂が相手をする。
「すいません。統轄長は会議に入られて時間が取れないので私でよければ聞きますが?」
「ちぇっ、親父の奴、逃げたな?」
ハハハと藤堂は苦笑する。
「まぁいいや、藤堂先輩教えて!」と相対性理論から宇宙創生の絡んだ質問を投げつける。
相対性理論の方は何とか答えられたが宇宙の果てとかブラックホールとワームホールの関係とか宇宙の終焉になるとお手上げ状態になった。
「う~ん。誰に聞けば教えてくれるかな?」
「う~ん。拓哉に聞いて見ます?私より物理学は得意ですから」と言って藤堂は齋藤に電話する。
「なんだ?十碧。こんな時間に、お前が電話して来るのは凄く嫌な予感しかしないんだけど?面倒な事では無いだろうな?」
「ん?拓哉。今、何処に居るんです?」
「ん?本社前………。いや島だ!」
「丁度いい。すぐに本社応接室まで来て下さい」
「いや、俺は書類と申請書を総務に提出しに来ただけなんだから、すぐ帰らないと」
「へぇ、それは残念ですね。今日は私が奢ってあげようかと思ったのですが?」
「えっ本当?今すぐ行く」
数分で齋藤が現れたが、玲音の質問にはやはり専門外な為、上手く説明出来なかった。
そこに休憩時間になった時宗が加藤と伊集院を連れてやって来た。
「会議は終わられたのですか?」
「いや、休憩だよ」と伊集院が答える。
ここぞとばかり藤堂が
「聞いて見ては?この御三方なら分かるかも知れません」といい。質問を説明する。
加藤は「海は海でも宇宙はなぁ~。俺が答えれるのは、もし仮に、宇宙の果てを見ることができるとして、相対性理論から推察すると、空間と時間は、お互いに関係しているだろ?光速に近い速度で空間を移動すると、時間の進み方が変るのは分かってるんだろ?タイムマシンの仮説の基だからな。
そこから考えるとこの宇宙空間から抜け出すには、この時間からも抜け出す必要があるんじゃないか?その方法は、俺に聞くなよ!」
伊集院は、「ブラックホールの存在は証明されて居るが、ワームホールはまだ仮説の段階だろ?ただビックバンが宇宙のはじまりなら宇宙の膨張から収縮に転じてブラックホールが集約して宇宙全体を飲み込んだ時が宇宙の終焉で、その一つに吸収されたビッククランチが次のビックバンへと続き、新しい宇宙が始まると言う仮説を聞いた事があるな。仮説だしな?それ以上は分からんなぁ」
「玲音、これは学校の先生に聞いたらどうだ?」と苦笑いしながら時宗は言う。
「中等科の物理先生に聞いたけど、ごまかされたもん」
「もしかして……。今度は、宇宙科学とかに興味持っちゃたの?」
「今の科学の解明からすると、タイムマシンの仮説は未来には行けるけど過去には行けないだろ?過去に行く方法を知りたいじゃん?」
「タイムマシンねぇ………。四次元の世界が解明されないとねぇ………。私が言えるとしたら次元と言う物はひとつ上の次元から下の次元を見ないと全貌は見えてこないんだよ?」と時宗は言う。
応接室に職員がやって来て、「統轄長が来ないと会議始められません」と苦情を言う。
「兄貴の所に行って見れば?数学も物理も紙一重だろ?」
「雅治、兄貴に一緒にするなと怒られるぞ。でも、そうだな。玲音、明日校長先生に聞きに行っておいで。話をしておいてあげるから」
「結局、唯野氏に押し付けるのですね」と藤堂が齋藤に小声で言う。
「藤堂君、聞こえて居るよ。まぁ戻らないと、玲音すまないけど明日校長先生の所に行って説明してもらいなさい」と言って会議室に戻っていく。
会議室に戻る途中、加藤は「親父は世界遺産で子供は宇宙かぁ。スターウォーズならなぁ何でも答えれるけどなぁ」
「まだ、宇宙に行くとか言わない分、親父よりはましだぞ?明日は俺、兄貴の所には近付かない様にしよう」と伊集院は呆れながら言う。
「このまま宇宙学を極めるとか言い出したらどうしょうかなぁ?廉もまんざら興味無さそうでは無いみたいだったし、2人で宇宙科学者になるとか言われるとなぁ~」と時宗は心配する。
2. An inquiring mind.
会議が終わり時宗は唯野に連絡する。
「兄貴?」
「時宗か? 何か…………。
"I have a bad feeling about this."(イヤな予感がする。)
却下だ!俺は受けない」
「何もまだ言ってないだろ?ひどいな………」
「俺は忙しい、次から次へとお前の変な要望書のおかげでな。これ以上は無理だ!」
「生徒の学問の悩み解決するのが教師の役目だろ?」
「別に教師でなくても親でも構わんだろうが!」
「しかし、専門的な学問は、親より教師が子供の探求心を伸ばすのが教育だろ?」
「……………。で、俺に何しろと言うんだよ!」
「玲音がさぁ」
「玲音君の方なのか?」
「ん?うん廉も気になっているみたいだから一緒に行くとは思うけど?」
「いや、時宗かと……。う~ん……。何?」
「あぁ、相対性理論や宇宙創生やブラックホールやなんだっけ?あぁワームホールとか宇宙の終焉や果てについて知りたいみたい。だから多次元の空間の解釈から教えていかないとね?」
「………………。時宗、俺は数学者だと言うことを忘れてないか?」
「多次元理論は数学の分野だろ?それに雅治が数学も物理も紙一重だと………」
「アホか!同じなら学問別ける必要は無いだろうが!」
「まぁ、取り敢えず話を聞いてやってよ!明日校長室に行くように言って置いたからさ。よろしくね」
「おい、待て!時宗!ちぇっ切りやがった。父親は世界遺産で子供は宇宙かよ。
何処まで俺に専門外の事を押し付けるんだよ!」と唯野は電話機を見つめながら怒鳴る。
3.four-dimensional space.
翌日、校長室のドアが叩く音がする。
「どうぞ」と言うと、2人の少年が立っていた。
「ゆうだいのおじさんこんにちは!今日は、弟も連れて来たよ!」
「玲音!校長先生だろ!すいません」
「ハハハ、いいよ。君が廉君?体調はどう?」
「大丈夫です。そうかそれは良かった」
「そこに座って、で何が聞きたいの?」
ソファへと3人は移動する。
「まず、宇宙の果てってどんなの?」と玲音は嬉しそうに聞く。
「そうだな、それにはまず【次元】の話をしよう。
0次元は点をあらわしているのはわかるよね?では1次元は分かるかな?」
「長さ、線です。二次元が平面で高さと幅……」と廉が答え、途中玲音が割り込む。
「三次元は立方体、空間だよ!」
「そう、高さ、幅、奥行、だね?
では四次元は?」
「三次元+一次元、時間軸?」と廉が答える。
「そう、時間とは何か?それは物体の運動。物体が移動するには必ず時間が必要なんだ。
では、そこまでのそれぞれの次元での【終わり】について考えて行こう。
0次元では点だ。点の終わりは?」
「ん?」と玲音は首を傾げる。
「0次元の点の始めと終わりは一次元から見ないと分からないよね?
0次元では点としてしか認識出来ないけど一次元では線になり、始点と終点がわかるよね。では一次元での線の終わり即ち太さは?どんな物にも太さはあるだろ?
それはも二次元から見ないと分からないよね?平面もそう。厚みは三次元からで無いと分からないよね。
では、今度はそれを踏まえて地球で考えて行こう。地面が二次元平面と考えて。実際は湾曲してるからまた、話が違ってくるんだけど……。まぁここでは平面ととらえてくれ、縦と横の広がりそれに高さが空で三次元の空間で考えてみよう。
二次元の地面だけでは地球の果ては解らなかったよね?
地球平面説の時代では三次元即ち上空から地面を見ることが出来なかった。 大地が丸いことの実際的な証明はフェルディナンド・マゼランとフアン・セバスティアン・エルカーノの世界一周旅行がなされてからだ。
でも、その時点では誰もその実像は見えてないだろ?海が繋がっている。世界を一週すると元の位置に戻って来るとわかっただけだ。この地球の姿をとらえた者は居ない。
この空間を、閉じた空間と呼び、その曲率は正になる。では、逆に曲率が負の場合、又はちょうど0の場合は、その空間は無限に広がることを意味するんだ。
三次元即ち上空から見てはじめて、地平線の果ての湾曲していて海が繋がっていると【世界の果ての謎解き】が理解できたんだろ?
でも、三次元からでも地球の全貌は見えてないよな?地平線が見えただけだからな。誰もが地球が球体で閉じた空間だとは認識出来ない。だから3次元の世界から見ることできる世界の果ては地球平面説の範囲だ」
「うん!」と玲音は目を輝かす。
「地球が閉じた空間であると謎解き出来たのは?
人類が宇宙即ち大気圏の外から地球全体を見ることが出来たからこそ誰にでも球体だと認証された。宇宙は、時間の要素が深く関わるだろ?四次元の世界だよね?
三次元の形を理解するには四次元に立たないと解らない。
では、今までの話を踏まえると四次元の全貌の【宇宙の果て】は五次元の世界から見ないと宇宙の果ては認識出来ないよね?」
「そうだね。うん!」
「今現在、五次元の世界は認識されていない。数学では多次元の概念が使われているがでも認識できるのは三次元、四次元までだ。まだ四次元も漠然とした世界だ。
だからその上の五次元の世界がどういった物か分からないと四次元の世界、宇宙がどの様な全貌なのかは見えてこない。
ただ、観測や研究で色々と解明はされて行くだろうがそれは、誰もがわかる様な物ではなく、地球平面説時代と同じ様に人類が試行錯誤しながら解明している段階と同じだ。
宇宙空間曲率はこれまでの観測で、ほぼ0、おそらく0であると認識されている。空間としては宇宙は無限大だと言えるかもな。
しかし、宇宙の始まりは137億年前と分かっているから、それ以前には宇宙は存在しない。ただ、膨脹し続ける宇宙の未来には果てがあるかどうかは不明だ。【時間が有限である】ということは、光速が有限である以上、【観測できる範囲にも果てがある】という事を意味する。【観測できる宇宙】の果ては、自分達を中心に137億光年先にある事になる。 瞬時に137億光年先の宇宙に行く事ができれば宇宙の果てを見ることが出来る。と言うことだ。
これでいいかい?」と唯野は宇宙の果てを説明した。
「うん!よくわかった。それでね!」
玲音の質問は続く。
唯野は顔をひきつらせながら何処まで答えられるかドキドキしながら2人の相手をしていた。
「玲音君と廉君は宇宙に興味あるの?
私も専門では無いからね?もっと深く知りたいなら大学の専門の教授に言っておいてあげるからそっちで教えて貰う?」
「宇宙と言うか過去に戻る方法が有るのか知りたいんだ。一応今の科学では理論上は未来には行けるんだろ?なら、過去に行く方法を知りたいんだ。そうそうワームホールは……」
うっ墓穴掘ったとばかり唯野は質問したことに後悔しながら2人の質問を延々と聞いた。
玲音は唯野の教え方を偉く気に入り、それから1週間毎日、放課後になると校長室に廉を無理矢理引き連れて遊びに来ていた。
「時宗!玲音君が、毎日校長室に通いつめなんだが?どうせ質問させるなら数学を質問するように言えよ。なんで毎日俺は宇宙科学勉強しなきゃいけないんだよ!」
「兄貴、ついでに宇宙科学の博士号でもとれば?いいかもよ?これからは宇宙の時代だしさぁ~」
「時宗!お前が宇宙科学の博士号とれよ!
非常勤講師で雇ってやるよ!」
「まぁ、玲音の事だからそのうち飽きるよ。宇宙より面白い事が、見つかればね」
「あぁそうか、わかったよ!数学の面白さ存分に教えて数学者にしてやるよ!」
「えええ?兄貴、それは困るよ?それだけは……。あぁ電話切らなくても……」
唯野はそれ以来、少年2人の興味を数学に向くする努力をした。
「玲音君、廉君、ある物理学者が数学の事を"Mathematics is a language."(数学は言語のひとつである。)と表現しているんだ。
数学は学者間では、自然現象を表現するための言語の一種なんだよ?学問の領域を超え、様々な分野を記述する為に使われて居る世界共通語なんだよ?
君達は日本語をはじめ英語やフランス語、イタリア語、ドイツ語ができるだろ?
数学と言う言葉で世界を表現してみないか?」と誘惑を試みたが……。
「世界共通語!」と玲音は一瞬目を輝かせ興味を示したが「でも、言葉だけでは、わかりずらいよね?目に見えないとさぁ~。数学は表すだけで映像には出来ないよね?
それに数学の研究は孤独なんだよね?1人で頭の中に数字を張り巡らせて頭の中で論理を組立る数学の中毒患者みたいな? 俺、1人寂しいのはいやだなぁ~」と拒否られた。
「いつか校長先生と一緒に数学の論理を証明を探す事ができると楽しそうですよね?でも、俺、数学は余り得意ではないから校長先生のお手伝い位しか出来ないと思います」と廉に言われた。
(う~ん、どうしたらあの2人の興味を数学に……)と1人画策する唯野であった。