It takes two to make a quarrel.
1. This is the origin of the affair.
(なんで校長の仕事って雑務が多いんだよ?時宗の奴、次から次へ要望を、送り付けやがって研究なんかできやしないじゃ無いか!)
唯野が書類の山に文句を言っているとノックがする。
「どうぞ」と少し不機嫌気味に言うと。
「校長!大変です。学園内で乱闘騒ぎが起きました」と中等科1学年の教育主任がやって来た。
「ん?怪我人は?」
「取り敢えず、みな擦り傷や切り傷、アザ程度です。保健医の報告ですが」
「そう、原因は?」
「なんでも期末テストにおける順位の不満とか?」
「乱闘と言うと喧嘩したのは何人?」
「7名です」
「何時も問題ばかり起こして居る子達?」
「いえ、ただ………」
「ただ何?」
「理事長の御子息が………」
「ん?廉君?」
「いえ、玲音君の方でして………」
「ええっ?玲音君?あの子が喧嘩なんかしたの?物腰の柔らかな子だよね?」
「はい、しかし、首謀者と言うか………中心になって喧嘩してます」
「ううむ。その場に駆けつけた教師をここに呼んで、後、喧嘩した生徒の担当教師もね。その時に騒ぎ起こした子の個人資料も持って来てくれ。それと該当の期末テストの関連資料も頼むよ」
「はい」
「後、騒ぎ起こした生徒の親御さんにも学園から連絡入れて、処分と事件の調査結果は追って連絡するのと、怪我しているので大事をとって病院で診察して貰うようにと連絡してくれ。」
「理事長の御子息には?」
「立場は関係無く、同じ様にすればいい」
「連絡先は?」
「あぁ、東京事務局の秘書室の藤堂君宛に入れればいいよ。日本に不在でも繋げてくれるはずだ」
学年主任は校長室から急ぎ出て行く。
数十分後、学年主任は言われた該当教師達と問題を起こした生徒の全ての資料を持って来た。
教師達は会議室に移り、緊急会議を執り行った。
ますば現場に駆けつけた教師の話を聞く。
現場に駆けつけたのは3人で成績順位を貼出し、道具を倉庫に戻しに行った帰りに騒動を見つけた2人の教師、現場近くを移動中に騒ぎに気付き駆けつけた教師1人だ。
3人が止めに入った時には既に取っ組み合いの喧嘩になっていた様だ。
次に担任から該当生徒の普段の生活態度、成績、今回のテストの変位を聞いた。
嘉川 純一、牧野 慎二、林 真人、浅野 寛の4人は成績が下方で低迷しており、なかなか成績が上がらずにいた。
特に嘉川 純一に至っては退学ラインのスレスレで何とか持ちこたえて居る様だ。
唯一、高城 隆史は20位前後を維持してるがそれ以上、上位には入り込めて居ない。
5人は友人関係で何時も行動を供にして居た様だ。リーダー的存在なのは高城 隆史。
唯野は報告を聞きながら資料に目を落とす。
乱闘騒ぎ該当者一覧
〇中等科1年
櫻 玲音
嘉川 純一
牧野 慎二
高城 隆史
林 真人
浅野 寛
〇初等科6年
下田 悠貴
(初等科の子はどういう関係なんだ?巻き込まれただけ??)
期末テスト順位
1.櫻 玲音
2.五十嵐 千景
3.山下 綾
4.野田 遠吾
5.橘 廉
6.松本 春菜
7.須藤 薫
8.伊崎 透
9.大野 哲
10.藤春 樹里亜
(へぇ~。玲音君は確か中間テスト25位だったよな?
確か数学が追試で、期末テストでは満点かぁ。流石、時宗の息子だな。頑固が上手くこうじたのか?玲音君以外は首位圏外か。
廉君も発作の関係で自習が目立つと聞いて居たが中間も期末テスト5位とはな事故前は30位前後と聞いていたが………。)
唯野は学年主任に質問する。
「どういう経緯でこうなったか子供達から1人1人理由を聞いた?
後、この初等科の子は巻き込まれただけ?」
「いえ、喧嘩を起こしたグループごとです。
下田悠貴君は櫻玲音君を兄貴と言って慕って何時も一緒に居る子です」
「そう、経緯は?」
「なんでも、玲音君と悠貴君以外の子供達が玲音君が25位から首位に、廉君が30位から5位に急に成績が伸びたのは理事長が不正工作行うように学園に言ったからだと掲示板の前で批判したそうです。それを聞いた玲音君が怒って言い合いになり、そのうち喧嘩にと………」
「そう、それは当事者から聞いたの?」
「いえ、その場に居合わせた生徒からですが、皆同じ様に言って居ます」
「その7人とそれぞれ1人づつ話できるかな?」
「校長が直接話をされるのですか?」
「1人1人きちんとそれぞれの言い分を聞かないと真実が見えて来ないよね?」
「分かりました。明日順次、お連れします」
各々の担任に生徒のフォローと当分の間の監督を指示し緊急会議を終えた。
2. It takes two to make a quarrel.
翌日、唯野は当事者1人1人と面談した。
唯野の質問に高城ら5人はそれぞれ口を揃えて『玲音と廉が急に成績が上がるのが、おかしいと思うからおかしいと正直に言った。』と言う。
唯野は優しくその子供達に「しかし、こんな校内のテストで不正して何になるの?」と質問すると「親の面子だ」とそれぞれが答える。
「ここの理事長はその様な面子に拘る人間だと思って居るの?もし、そうならこのまま学園に居続けると将来、君達はその人の下で働く可能性が大きいよね?いいのかい?
それに確たる証拠もなく憶測で誹謗中傷するのは良くないと思わないかい?
君達は理事長をはじめ、私や教師全員が不正に加担していると証拠もなく言ってるんだよ?
名誉棄損って言葉はもう知って居るよね?
証拠もなく誹謗中傷するとどうなるか?よく考えてから発言しないとね。」
それを聞いたそれぞれの子供達はヤバイと言う顔で謝る。
「頑張って、全教科満点取れれば不正云々関係無く君達が首位だ。変な憶測するより頑張ってそこを目指しなさい。いいかい?
今回は校内で暴力行使の件のみ当事者全員に同じ罰が下るけどそれは、誹謗中傷での罰でなく暴力に対するものだ。暴力はどんな理由があれ肯定されることは無いからね?そこもちゃんと理解してくれるかい?」と唯野は各々に諭す。
「はい」と素直に皆それに応じた。
玲音の番になった。
「久しぶりだね玲音君。今回は数学見事に満点だったね?数学の面白さを見つけたのかな?」
顔中痛々しいアザと傷だらけの男の子は目を輝かせながら
「うん!数学で世界を掴むんだ。数学は物事の心理を見分けるんだよ。糸口は必ず隠れている。
数学は生活に密着した学問なんだ!数学でこの世界すべてが説明できる。すごいと思わない?神様かくれた謎解きだよね?」と楽しそうに嬉しそうに語る。
唯野は玲音の言葉にびっくりした。
ついこないだまで顔をしかめて数学なんて苦手だと言って居た子供が半年もたたない間にメキメキと学力をつけ数学の魅力を語る。
「玲音君は、将来数学者になるかい?世界の心理を見極めて見ないかい?」
「ん?それはどうかな?数学の楽しさは千景から教えて貰ったけど、世の中もっと面白い事がたくさん有るかも知れないじゃん?
簡単に自分の可能性を決めつけちゃあさぁダメだと思うんだ」
「ハハハ。そう、その考え方お父さんそっくりだね?」と何処か少し残念そうに唯野は笑う。
「親父と?そうかなぁ……」と玲音は首をかしげながら言う。
「ところで、玲音君。その傷の訳を教えてくれないかい?」と先程とは少し厳しい顔で問いかけられる。
玲音は少しうつむき上目使いで弱々しい声でこたえる。
「う~ん、親父には内緒にしてくれる?」
「そうだね。極力はそうしてあげたいけど理由にもよるよ?暴力はどんな理由があっても肯定は出来ないからね?
でも、きっと玲音君には理由が有るんだろ?それを聞かせてくれないかい?」
先程まで楽しそうに唯野の顔をまっすぐに見て話していた玲音は凄く悔しそうな顔で少し下を見つめながらゆっくりと話しはじめた。
「廉が記憶障害の後遺症で苦しんで居るのに………。廉はね、授業中に発作起きて皆みの授業の妨げになるのも、同情されるのも嫌だから、1人で自習しているんだ。
多分それが自分の勉強のスタイルに合って居たんだと思う。放課後、悠貴や潤に試験勉強を教えて居るのもね。俺にだって分からない所を丁寧に解りやすく教えてくれている。
廉は、人に教えるには、自分が十分に理解していないと教えられないからと言ってちゃんと1人で勉強してるんだ。
それなのに、そんな苦労や悩みを知らない癖に、親父がたまたまこの学園の偉い人だからその力で不正して成績が上がったと………。授業も受けずサボっていると沢山の生徒の前で嘘をでっちあげたんだ!
僕の事は別に何言われても平気だけど………。ただでさえ記憶障害に苦しんでいる廉の事は………。
自分達の努力と廉の努力を勝手に相手の想像で量りかけて大勢の前で誹謗中傷した奴等に頭に来て、悔しくてつい、喧嘩してしまった。ごめんなさい」
「そう、謝るのは喧嘩相手に謝らないとね。理由はともあれ喧嘩両成敗だよ?暴力を使っては、いくら玲音君が正しい事を言って居ても誰も認めて貰えないよ?」
「そうだね。僕が間違ってた。」
「それをきちんと理解してくれるなら、私からは何も言うことは、無いよ。学園は楽しいかい?」
「うん!仲間がいる。大切なね」
「そう、ならもっと頑張って勉強してね。
ただし、今回起こした暴力騒ぎには何らかの罰はあるよ?」
「仕方ないね。でも、悠貴は僕を庇って巻き込まれたんだ。だから悠貴は関係ないんだ!後、廉は何も知らない。廉には言わないで傷つけたくないんだ」
「そう、廉君の事はできるだけそのようにするから、悠貴君とはちゃんと同じ様に話を聞くからそれで判断させて貰うよ。もう、2度とこんな問題を起こさないでくれよ?」
「うん!もう、2度としない。約束する」
「そう、ありがとう。話はこれで終わりだから部屋に帰っていいよ」
玲音はドアの所まで行き、くるりと唯野の方を向き
「俺がもっと数学が出来るようになったら、ゆうだい先生がもっと数学の面白さを教えてくれる?」
「あぁ、是非いつか2人で世界の謎解きに挑戦しょう」
「ありがとう。でもその時は廉も仲間に入れてね」
玲音はそう言って部屋から出て行く。
最後に悠貴の番になった。
「どうして喧嘩なんかしたの?」
「う~ん。ちゃんと理由を話すから廉先輩には何も言わないで、お願いします」
「橘 廉君?」
「そう、廉先輩は何も関係ないんだ。何時も僕に試験前に勉強を教えてくれるやさしい先輩なんだ。
その先輩を奴等が不正していると、僕の尊敬する玲音先輩までも不正していると、嘘を皆の前で言いふらしたから……。
僕達は、何時も一緒に勉強しているから先輩達の実力は十分に知っている。
絶対不正なんかしてない。何よりそんな卑怯なことする先輩達じゃない。
奴等が証拠も無いのに大勢の前で嘘をでっち上げるからつい頭に来て……。
玲音先輩は僕を止めようとして巻き込まれたんだ。なので僕が全部悪いんです。ごめんなさい」
「そう、玲音君は悠貴君が巻き込まれただけと言っているよ?」
「先輩はやさしいから僕を庇ってくれて居るんです」
「悠貴君の気持ちはよく分かったよ。でも喧嘩両成敗って事は知っているよね?
どういう理由だろうと暴力は肯定されないよ?暴力以外で見返す方法はいくらでもあるよ?」
「そうですね」
「努力していれば必ず報われる。今回の期末テストは、かなり頑張った様だね。これからも頑張って勉強できるかい?」
「はい、頑張ります」
「そう、学園は楽しいかい?」
「はい、僕には最高のヒーロー3人と親友が居るからこの学園に来て良かった」
「それは、幸せな廻り合いだね。応援しているよ。でも、残念ながら今回の暴力騒ぎは何らかの罰はあるよ?だからもう、2度と暴力を使ってはダメだよ?」
「はい、分かりました。ごめんなさい」
悠貴は頭を下げて校長室を出ていった。
(時宗には誠に雅治が居たが。時宗の息子達にはかなりの多くの原石が集まって居るようだな。
大きくなったら一緒に数学の謎解きしてくれるかな?あの子なら世界の真理が解けるかも知れないな。)
唯野は時宗に電話をかける。
「もしもし、藤堂です」
「あぁ。唯野ですが時宗は今電話出来ないかな?」
「いえ、代わります」
「お願いするよ」
「もしもし?兄貴?玲音がなんか仕出かしたって?まずい事?」
「お前のすることに比べれば些細な事だ。
玲音君を数学者にするか?俺が世界一の数学者に育ててやるぞ?」
「ん?玲音が数学者になりたいって?」
「いや、ただ楽しいらしいぞ」
「兄貴、無理だよ?玲音は何でもやりたがるんだから~」
「時宗そっくりだな?」
「そうかなぁ。照れるなぁ~」
「親バカは今も健在だな?しかし、玲音君は時宗お前以上の原石だぞ!潰すなよ?」
「兄貴に任せるよ!」
「お前はと言う奴は………。今回は子供の些細な喧嘩だ。お前も小さい頃は何度か雅治とか誠と殴り合いの喧嘩くらいしただろう?」
「雅治に勝てる訳ないから、そんな負ける喧嘩するわけないだろ?よくやって口喧嘩だよ?それでもあの屁理屈男に俺が勝てる訳が無いだろ?誠も同じだよ!」
「時宗。お前は喧嘩はしたこと無いのか?」
「無くも無いけど、かなり小さい頃だよ、負け戦はしない主義だからさ」
「…………。まぁいい、取り敢えず停学位の処分は出すぞ。ちゃんと暴力はダメだと教育しろよいいな?」
「分かったよ。あっそれより兄貴!」
「じゃあな!」と唯野は電話を切る。
「あっ、ちきしょー切られたかぁ~」と時宗は残念そうに電話を見つめていた。
今回の騒ぎを起こした以下7名を
停学3日とする。
〇中等科1年
櫻 玲音
嘉川 純一
牧野 慎二
高城 隆史
林 真人
浅野 寛
〇初等科6年
下田 悠貴
以上
7月20日より執行する。
停学中は、用意された課題を全て消化し停学解除日に学園事務局に提出する事で処罰を完了とする。
フロンティア学園 校長
唯野 雄大