ある有名な著者
ソラが今日読んだ雑誌の内容は、他の読者の間でもかなりの話題を集め、苦情や意見が殺到した。意見の大半が「ひどい内容」や世界樹を信じている人からは「世界樹をなんだと思っているんだ、この作者は」というものだった。当然この雑誌は廃刊がその日のうちに決定された。
「この作者、結局何を書きたかったんだろう……」
廃刊になって問題とされている雑誌。回収作業も行われているそうだが、コーベライトは買った雑誌をひそかに読んでいた。今日発売され、今日廃刊になった。そのことが衝撃的で、だが出版社の意見は正しいと思いながら、コーベライトはスッタードという人物の論文を読むのだった。
スッタードの論文の中には世界樹のイメージイラストが載っていた。そのイラストの世界樹は光り輝いていたが、何か受け入れがたいものがあった。何かが足りない、そして何かを助長しいているという感じと言うべきだろうか。何を助長しているのかはわからないが、そのイラストからはそんなイメージを受けた。
ベッドの上に寝転んで雑誌を広げ、コーベライトはイラストをじっと見ている。
見続けていると吸い込まれそうだ。だんだん気分が悪くなってきた。そう感じたところで雑誌をぱたんと閉じて読むのをやめた。それと同時にドアのノックが聞こえて「入ってもいい?」という高い声が聞こえてきた。
「うん、どうぞ」
ノックをしたのはフローライトだ。ドアノブがひねられてドアが開く。紅茶のセットを持ってきていたフローライトは、トレイにのせた紅茶のセットを床に置いた。
「その雑誌、廃刊になっちゃったね」
「そうだね……」
床に座ったフローライトの視線の先には、先ほど読んでいた雑誌。閉じた雑誌にフローライトが手を伸ばし、コーベライトが開いていたページを読む。
「この作者さん、何を伝えたかったんだろうね」
フローライトのその言葉に「んー……」と唸って「兄ちゃんにもわからないなぁ」とコーベライトは笑って返す。
「人の考えてることって難しいよな……フロラはそう思うことはない?」
ベッドから身を起こし、座って問う。フローライトは顔を天井に上げた後「そうね、あるかも」と笑った。
「お兄ちゃんにもあるの?」
口元に手を当てて笑うフローライト。コーベライトは「全部わかるわけないないよ」と笑った。
「例えばだなー。ヴィオラとか何を考えてるのかわからない!」
そう言って天井に向かって片手を伸ばす。笑いながら「人の考えてること全部分かってたら、それすごいよ」と言うのだった。フローライトも同様のようで、くすくす笑いながら「そうね、そうだよね」と言う。そしてフローライトの視線はまた先ほどの雑誌に行くのだった。
フローライトは雑誌を手に取り、ぱらぱらとめくる。世界樹について書かれているページを見、その他のページを開く。
「今思うと、結構変わった雑誌だったね」
それがフローライトの素直な感想だった。手にある雑誌は他のファッション誌みたいに写真がたくさんあるわけでもなく、文字ばかりだったので文集と言った方が正しい。この雑誌は時々楽しいコーナーや物語が載っていて、フローライトはそれを楽しみに読んでいた。それだけを見るとごくごく普通の雑誌なのだ。ただ、スッタードという人物の論文が異質すぎただけだった。
「小説が多いよな……この雑誌。なんで論文載せてたんだろう。ほら、この雑誌の論文ってスッタードっていう人のだけだろ?」
そう言われるとフローライトは「たしかに、一人だけよね」と納得する。そしてフローライトニは思う事があった。
「論文載せてる雑誌って珍しいよね」
「そうかも……」
コーベライトは納得する。お悩み相談コーナーならまだわかるのだが、論文はどうかなぁと買い始めた当時は思っていた。買い始めた当初はスッタードの論文も気味の悪い、問題作ではなく普通の論文だったのだが、いつからだろう、問題作と言われるようになったのは。コーベライトは記憶を探る。
「……やっぱりわかんない」
「何が?」
「うん?スッタードっていう人の論文について考えてたら、頭の中ごちゃごちゃになってきてさ……」
とりあえず、この雑誌は持っておいたほうがいいかも。そう言ってコーベライトは自室のあまり読まない本ばかりが置いてある本棚にその雑誌をしまう。本棚にしまいながら、ふと思ったことを口にする。
「なぁ、フロラ。……世界樹についての論文ってたくさんあるものだっけ」
その問いにフローライトはしばらく考え「ない……かも」と答えた。
世界のどこかにある世界樹について書く論文は、実はあまりない。世界樹に関連する情報事態が謎に包まれているので、実際に見たことのある希少の人しか論文は書けないはずなのだ。しかもスッタードの論文には「世界樹がエネルギーを吸っている」という、実際に見たことがないと書けないようなことが書いてあった。もし、本当に世界樹がそのようなことをしていることを書けるのならば。
「スッタードって人、世界樹見たことあるってことになるよなぁ……仮説だけど」
そんな話をしながら夕日が沈み、夜になって朝になる。




