表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/56

力の発動

 名を呼ばれて女はにっこりと笑う。その顔は何を考えているのか全くわからず、同時に綺麗な顔だとも思わせた。

 シルエット、と名を呼ばれた女は笑いながら大鎌を両手で振るう体制に入る。華奢な身体のどこにそんな鎌を持つ力があるのだろう。そう思ったが、鎌振り上げて構えたシルエットという女を見て「危ない」と心の奥で感じた。

「最近の卵を狙う奴ということで、指名手配されているな?」

「そうねぇ。ちょっとあたしの行動が大胆すぎたかしらぁ」

 ソラの厳しい表情の問いに、シルエットは笑顔で答える。指名手配という言葉を聞いて、ヴィオラは今自分達は危険な状態にあるんだということを認識した。

「さぁ。仕事よ、仕事」

 シルエットは黒いポニーテールをかき上げて翼を広げる。

「貴方、あたしのこと知っていたのねぇ。じゃあ話ははやいわねぇ!」

 大きな声で言い、校舎内にいる三人めがけて翼で飛び、突っ込んでくる。その途中で大鎌を振り上げる。鎌を振り上げた行動を確認すると、ヴィオラは地面を蹴った。

 ダァン!と大きな音がした。音の正体はシルエットが大鎌から三人めがけてはなった衝撃波だった。だが衝撃波は三人にも校舎内の植物にも当たらずに、彼女と三人がいる中間地点の空間で爆発した。

 爆発した衝撃で少しだけ地面が揺れた。

「ヴィオラ……?」

「この女の目的は、卵を奪うこと。……で、あっていますよね、先輩」

 コーベライトはヴィオラのかざした手のひらにある、少しひびの入ってしまった、護るように大きく半透明な青いシールドを見る。彼の背中にはシルエットと似たような、青を基調とした翼が生えていた。そしてコーベライトも立ちあがって手をかざして、自分の武器であるハンマーを出した。

 シルエットは自分の攻撃を止められたことにびっくりしているようだったが次の攻撃態勢に入る。

「ヴィオラ君、ありがとう!」

 ソラは走りながら手をかざして背中に翼を生やす。その翼は水色を基調としたもので、やはりこの大陸でよく見かける機械の翼だった。そして彼はシルエットのもとへと素早く飛ぶために地面を勢いよく蹴った。

「甘いわねぇ」

「コーベライト君!卵をお願い!」

 ソラが叫ぶ。コーベライトも自身の黄色を基調とした翼を作り上げると、卵を護るように卵の周囲に半円状のシールドをはった。

 ソラが翼を作ってヴィオラの応戦に入る。シルエットはもう一撃、というように衝撃波をヴィオラの作りだしたシールドめがけて打つ。先ほどの攻撃でひびが入ったヴィオラのシールドは、二発目の衝撃波の攻撃を受けて砕けるように消えた。

「っつ……!」

 シールドは自分の中にあるエネルギーから作り出されるものだ。少量であるが、シールドというエネルギーの塊を壊されたヴィオラは地面まで落とされる。受け身をとってなんとか叩きつけられることは免れたが、シルエットの前にはソラしかいないことに気がつく。サポートとして入ろうと思い、また地面を蹴った。

 一方シルエットはヴィオラのシールドを壊したことにより、エネルギーを直に受けた。それによって彼女は少しバランスを崩したが、すぐに体制を立て直して大鎌を振り上げる。

 ヴィオラは戦うために、握りしめていた手をかざした。その手には青い光があふれるように出、次の瞬間にはヴィオラの手の中にも大鎌が握られていた。それはシルエットの物と似ていて、ヴィオラも「こんな鎌だったっけ」と今まであまりよく見ていなかった大鎌を見ながら呟いた。

「ヴィオラ!大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ。だから心配するな」

コーベライトに背中を向けたまま言う。だがヴィオラのシールドを割られたのは体力を削られたのと同じで、彼の吐く息は荒かった。それでもヴィオラは戦うために地面を蹴る。

 シルエットと戦うソラは武器を出さずに、空中で格闘技のように手と足を繰り出して戦う。空中なので着地する場所がない。だからソラは壁や自身が作ったシールドという足場を作りながら戦う。一方相手のシルエットはソラの重い一撃一撃を鎌で受け止めては流し、先ほどからソラの攻撃をかすりもさせない戦いぶりをみせていた。

 さすが賞金首狩りを幾度も倒してきたという戦いのプロだ。攻撃が全部読まれている。

 そう心中で思う。そして同時に焦りを覚えた。ソラが飛びかかって拳を繰り出すと、シルエットの顔すれすれにまでは届くのだが避けられる。足技を出すと鎌で攻撃を抑えられた。シルエットの動きには無駄の隙もない。戦い慣れしている彼女には、戦いにはつきものだと言われている緊張というものがないのがわかった。

 このままでは無駄に体力を消耗するだけだ。

 そう思って彼女の攻撃全体をふさごうと思って鎌の柄に手を伸ばし……。

「やっぱり、甘いのねぇ」

 ふふっと笑うシルエットは隙あり、という風にソラの脇を抜けた。

「しまった……!」

 身体を反転させるとシルエットが狙う先にはヴィオラがおり、コーベライトがおり……そしてソラが護りたいと思っている卵がある。急いで追いつかなくては。風を切る音を感じながらソラはシルエットを追いかけるように急降下すると、また衝撃波の音が上がった。今度の衝撃波は、衝撃波同士のぶつかる音だった。ソラは一瞬何が起きたのかわからずにいると、シルエットの黒い光の衝撃波とコーベライトの放った黄色い光の衝撃波がぶつかったのを見た。シルエットの衝撃波をコーベライトが相殺させたのだと理解した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ