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人生なんてうまくいかない

五、


 目を開けるとベッドに寝ていなかった。俺はどうやら葵により落とされてしまったようだ・・・。その証拠に上から葵の寝息が聞こえる。

・・・・いや、どうやら葵が俺の体の上に乗っているようだ。


「・・・葵、重いからどいてくれないか?」


「・・・・すぅ。」


 返事もしてくれない。まだ寝ているようだが俺はこのままではおばさんに怒られてしまうのだ。毎朝俺は町内を走らないといけないのだ。これは基礎体力をつけさせるための特訓らしい。

 俺は葵をどかしてさっさと立ち上がり着替える。今日は休日なので学校はない。だが、窓の外を見ると雨が降っていた。まだ小雨なので大丈夫だろうと俺は雨具を身につけ外に出た。


「さて、輝さん行きましょうか?」


 何故だか知らないが葵までついてきたのだった。さっきまで寝てたと思ったがいつのまにか玄関のところで待っていたので正直驚いた。とりあえず大きな木がある近くの山に登って降りることにした。


「いやぁ、雨はうれしいですねぇ!!」


 葵はしきりにはしゃぎながら俺の後ろをついてきている。朝飯もまだ食べてないのにあんなにはしゃいでいて疲れないのだろうか?




 俺は昨日のことを忘れていた。あれは嘘なんかじゃないとこのあと俺は知る。そう、ある程度山を登った時に雷が鳴り出したのだ。


 ごろごろ


「輝さん、雷が鳴り始めましたよ。」


「そんな事言わなくてもわかるって。」


 どうやらかなり近いところで鳴っているようだ。しかし、もう少しで大きな木がある折り返し地点だ。このままいけば間に合うかもしれない。だが、考えが甘かった。


 がしゃーーん


「・・・輝さん、どうやらここから見える大きな木に雷が落ちたようですよ?よかったですね、慌てて近づいてなくて・・・今ごろおいしくこんがりなってたかもしれませんねぇ」


 まるで人事みたいだ。ちなみにいうなら死ぬときは葵と一緒だったに違いない。うんうん、こんがりなるのはもしかしたらおまえかもな。

 俺は好奇心から大きな木を目指して思いっきり走り出した。雷がこんなに近くで落ちるなんて生まれてこのかたあったことがない。

 木には火がついていたのだが、急に大雨となったのですぐに消えてしまったようだ。だが、俺の目の前に広がっている光景はそれだけではない。


「・・・・あ、輝さん。」


「・・・ああ、なんだあれ?」


 紫色の塊が、バチバチと音を立てて俺たちの前にあるではないか・・・ちょうど木の中心部分にあるということは間違いなく電気の塊に違いない。・・・・いや、そんな訳ないか?


「あ、あれ動いてますよ。」


 紫色の塊はうねうね動いている。そして、俺が近づくとそれはどこかで見たことがあるような形になったのだ。いや、昨日見たばっかりだ。


 それは、はじめ黄色い蛇に見えた。


「・・・葵、お仲間さんか?」


「いえ、知りませんよ。」


 こちらを敵意のこもった目で睨んでいる。体の周りには戦闘開始の準備か知らないがバチバチと音を立てて電気の塊のようなものが浮かんでいる。

・・・・こういうときはあれだ、手を後頭部の後ろに持っていって相手に向かってお知りを向けて無抵抗のポーズ!!

 葵も真似をしているようだ。だが、黄色い竜は段々こっちに近づいてくる。その気配は一向に変わっておらず、どうやら機嫌が悪いようだ?


「・・・もしかして・・木が一発で黒焦げにならなかったからか?」


「しゃー!!」


 どうやら図星のようだと俺は思った。・・・どんまい。そしてこれは相手が見せた隙に違いなかった。俺は後ろを向いている状態からまわしげりを竜の顔に打ち込んだ。さらに竜に飛び乗り頭を押さえつける。


がぶぅ


 竜に腕をかまれた瞬間、体に電気がほとばしったのを感じて俺は気を失った。



「・・・輝、おまえは馬鹿か?」


「・・・うるせぇ爺さん。竜に喧嘩を売る馬鹿がどこにいるんじゃ?」


「正当防衛を主張する。」


「馬鹿者、あれのどこが正当防衛じゃ?いっぺん天国に来てみるか?」


「・・・ごめんなさい。」


「わかればよろしい。それとわしが頼んだ本を必ず忘れるでないぞ。」


「へぇへぇ、ちなみに聞くがあの黄色い竜もこの前みたいに唱えたら姿が変わるのか?」


「・・・さて、試しにやってみたらどうじゃ?」


「『我が名において命ずる。真の姿を見せよ。』」


「ちなみに責任はおまえが取れよ。」


「・・・爺さん、そういうことは先に行ってくれないか?」


「ふん、青二才目が・・・それだから彼女もできんのじゃ!わしは天国のプリティ〜なお姉ちゃんとスキンシップを取るのが忙しいからこれで失礼するぞ。」


「うるせぇ、無責任な爺さんなんて早く捕まっちまえばいいんだ!!」


「お前さんはすでに一度死んでいる身じゃよ。さっきの電撃をもろに心臓に喰らったからな。だが、わしが閻魔様に頼んでこの世にとどめておるのじゃ。感謝しろよ。」


「・・・ありがとうございます。」


「うむ、よろしい。(実はおまえが来てわしのハーレムを取られたらたまらんからな。)」


「爺さん、一つ聞いておきたいことがあるんだが・・・・」


「なんじゃ?天国には天使のお姉ちゃんがいっぱいいるがその中の誰かを彼女にしたいのか?」


「いや、そうじゃなくてだな、いったい竜って何だ?」


「・・・・さぁ?」


「とぼけんなよ!!」


「悪いがわしはどうやらボケちゃったみたいじゃ・・それではのう。シーユーじゃ。」


「嘘つけ爺さん!!こら、まちやがれぇ!!」


耳に誰かの鳴き声が聞こえる。すぐ近くでないているようだが・・・体が痺れている俺にはわからない。ああ、とっても刺激的な一撃だったなぁ。


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