表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/28

顔が怖い人は災難が多い

三、


 俺は葵を連れてさっさとおばさんがいる所から退いた。逃げたのではない、戦略的撤退だ。勝てない相手に会ったら逃げろ!!勝てない相手には頭を使って勝て!!これがあのおばさんから教えてもらった二つの極意である。矛盾しているような気がしてならないのは俺だけか?


「さ、私に部屋を案内してください。」


「・・・・さっきまで居ただろうに・・」


 俺はため息を出したい気分だぁ。夕陽に向かって走りてぇよ。海に向かって叫びてぇよ。こうなったらやけだ。


「・・・お客様のお部屋はこちらでございます。」


「いえいえ、どうもありがとうございます。」


 俺は先ほど降りて来た階段を再びあがり自分の部屋の扉を開ける。


「こちらがお部屋となっております。どうぞお入りください。」


「ふ〜ん、結構綺麗なんですね。さすが輝さんです。」


 何がさすがなのかわからないが俺は葵を先に部屋に入れる。どう考えてもおかしいだろうに・・・年頃の男子がいる部屋に女の子をおくのは絶対におかしいと思うぞ。・・・まぁ、俺はどちらかというと一人のほうが好きだ。小さいころから転校の繰り返しだったからなぁ。うん、俺だったら襲うなんて事はしないだろうね。大体相手が人間じゃないし・・・


「意外に輝さんって細身ですけど筋肉あるんですね?」


「そりゃまぁ、筋肉をある程度はつけておかないとおばさんからのしつけとやらに対抗できないからな。」


 今葵はベッドに座っている。外はまだ夕焼けが残っていて散歩したら楽しいかもしれない・・・ここは葵と外に出てみよう。


「なぁ、散歩しねぇか?」


「ええ、いいですよ。」


 うん、あっさりしているのもたまにはいいかもしれないな。俺は葵より先に部屋を出た。なぜだか葵は俺が動かないと動かないようだ。

 やはり外はきれいな夕焼けが出ていた。俺は葵の隣で夕焼けを見ている。そして、葵は俺とまったく逆のほうを見ている。


「・・・・なにしてんだ?」


「輝さん、あれって誘拐じゃないんですか?」


 なるほど、葵が指差す方に黒い服を着て白いマスク、サングラスをしている大人が少年を一人車に入れようとしている。身代金目的の誘拐だろうか?


「葵は今すぐ警察に行ってきてくれ。俺はその間に車の番号を見たあとでなんとかするからな!!」


「わ、わかりました!!」


 俺は少年を今にも連れ去ろうとしている人物の車のナンバーを覚え、その黒い男に静かに近づく。


「・・・雅彦、何度言ったら早く帰ってくるんだ!!外には怖い大人が多いんだぞ!!」


「いやだぁ、もっと遊ぶんだぁ。」


・・・どうやらこれは単なる誘拐事件ではないような気がするのは俺だけだろうか?こうなったら意を決してたずねるしかない。


「・・・すいません、どうかしたんですか?」


 俺がそのように尋ねると少年を抱えていた大人はこう答えた。


「ああ、すいませんねぇ。ほら、雅彦画素直に言うことを聞いてくれないからお兄ちゃんに迷惑をかけてしまっただろう。」


「だってまだ家に帰りたくないんだもん!!」


 大人のほうはため息をついてサングラスとマスクを取った。俺は少々驚いた。なぜならその顔はかなり凶悪そうでサングラスとマスクをつけていたほうがまだましである。なるほど、何でこのおじさんがこのような格好をしていたかわかった気がする。・・・・でもどっちにしてもこれじゃあ誘拐にしか見えないなぁ。


「・・・・すいませんねぇ、騒音であなたがたのデートの邪魔をしてしまって・・・本当に申し訳ありません。ほら、雅彦も謝りなさい。」


「はい、ごめんさい・・・」


 少年はそういうと自ら車に乗った。そしてその顔がとっても怖いおじさんは再び頭を下げて車に乗って俺の前から姿を消した。


「・・・・よかったですね、誘拐じゃなくて・・・」


「・・・・!?」


 俺の隣には葵が立っていた。警察に行ったのではなかったのか?


「どうして警察に行ってないんだ?」


「・・・別にいいじゃないですか。そんなことより散歩の続きをしましょうよ。」


 今日は本当に無性に疲れる一日だと俺は思いながら再び歩き出した。そんな俺の隣を葵が今度は俺を見て歩いている。


「・・・・なんか御用ですか?」


「いえ、なんでもありませんよ。」


 葵が夕日を見ている可能性はゼロだ。俺がいるほうに見えるのはからすの集団と電線ぐらいなものである。


「・・・ところで聞きたいんだが・・・おまえは何で橋の下にいたんだ?」


「名付けてくれた輝さんがおまえと呼ばないでください。」


 おおっと、これははじめてみる表情だ。とっても怒っているように見える。まぁ、俺のほうも無粋な真似をしたからなぁ。


「すまん、それじゃ、改めて聞くがなぜ葵はあの場所にいたんだ?」


「あそこは私が生まれた場所だからですよ。ただそれだけです。」


 葵はそう言って今度は夕日を見た。その横顔は綺麗だった・・・かな?


「んじゃ、そろそろ帰ろうか葵・・・」


「はい、わかりました。」


 回れ右をして俺と葵は再び歩き出した。普段は俺一人が歩く道を今日は二人で歩いている。こんなことは生まれて初めての事だった。


「のわぁ!!」


 隣で葵が転ぶ。その足元にはバナナの皮が転がっていた。・・・・バナナの皮で転ぶ奴もはじめて見た。しかもパンツ丸出しだ。


「いたたたぁ。」


「なにやってんだか・・ほら、掴まれよ。」


 俺が差し出した手を葵が掴む。その瞬間になぜだか知らないが葵の頭の中を見たような気がした・・・


 今日の夕飯はなにかなぁ・・・


 うわ、どうでもいいことだ。


「・・・・輝さんのスケベ。」


・・・どうやら葵の頭の中にも俺の考えていたことが伝わったらしい。ちなみに俺が考えていたことは・・・


 やっぱり葵だけにパンツの色も青いんだなぁ


 もしかしなくても俺はだめ人間かもしれない。さっきから葵は俺の顔を見ているし・・・・・





 いやいや、面白いかどうか自分でわからないもんですね。今のところはできるだけ続くようにがんばっていきたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ