ああ、どうなるのだろか?
二十六、
まぁ、とてもうれしいようなことがおきたその日の部活。その日は加奈と一緒に近くにある道場に向かうこととなり、二人でその道場に向かう道を歩いていた。
「加奈、何で今日は皆俺の部屋にいたんだ?」
「・・・・はは、恥ずかしいけどね、多分、皆輝の夢を見たんじゃないかな?」
お、俺の夢を見たのか?そりゃもう、夢の中では夢を見てる本人の好きなように出来るらしいけど・・・・つ、つまりそれは・・・・。
「と、とりあえずどんな夢だったんだ?」
俺はあせる気持ちを沈めて加奈に聴いた。
「・・・・・輝がね、誰かに負ける夢で・・・そうだね、私の記憶しているのは輝がぼろ雑巾のように転がってたんだよ。」
ひ、ひでぇぇ!!あんまりだろ、それは・・・・。
「そこで夢はおしまい。私は心配になってとりあえず輝のところに行ったんだよ。」
そ、そうなのか・・・・はぁ、まぁ・・・・皆俺のことを心配してくれていたのは嬉しいな。
「加奈、心配してくれてありがとうな。」
「ふふ、いいわよ。」
全く、まるでお姉さんみたいだな。さて、そうなると他の竜たちも俺が散々に負けて使い古された雑巾のようになった夢を見たのか?そしてもう一つ、それは俺が見た夢と関係しているのかもしれない・・・・・なんだか、波乱の幕開けのようだ。
「あ、ここだよ。」
「・・・・・ここは銭湯だろう?」
「いや、まちがってないわよ。ほら、こっちのほうに奥のトイレより右のほうに銭湯拳をおしえていますって書いてるじゃない?」
加奈が顧問から渡された紙を見ながら俺に言う。いや、本当にこの土地は凄いね。これはどっからどう見ても風呂屋だろう?それに銭湯拳って何だよ?
「ま、さっさと看板を持って帰ろうよ。それが無理だとしても話ぐらい聞けると思うからね。」
そういって加奈は一人で銭湯の中に入っていく。俺もとりあえずその後に続くことにして、再び、銭湯をみるがどっからどう見ても銭湯だ。
だが、番頭さんに案内されて初めて気がついたが、なんだか殺気立ったものを感じるようになった。
「・・・・どうぞ、こちらでございます。」
そうして、俺と加奈は銭湯の中にある道場の中に案内された。そこには、ありえない相手が正座をして精神を集中していた。
「ば、ばあちゃん!!」
「・・・・久しぶりじゃ、輝・・・」
そう、そこに座っていたのは俺の親父側の母親であった。爺さんも親父側なのであの爺さんの妻にあたる。最後に見たのは・・・・俺が今住んでいる家に来たときだな。そのときはばあちゃんと来たんだが、ばあちゃんはすぐにいなくなったんだよ。行方不明だったと思ったんだが?
「輝よ、近頃お前の夢にあのスケベジジイは出てきたか?」
「え?う、うん・・・近頃は良く出てくるけど?」
「そうか、今度あのスケベジジイの墓をもう一度破壊しておこうかの?ま、それはいいとして輝の隣にいる可愛いお嬢さんは竜だろう?」
「!!わかるの?」
はっきりいっておくが、ばあちゃんはあの爺さんより数倍は強い。新型エンジンを積んだガンダ○並だろう。まぁ、そんなばあちゃんは爺さん意外には優しいのだ。
「・・・・・ふぅむ。お前もようやくあの意味のわからない拳法が少しは使えるようになったようじゃな。まぁ、とりあえずどれだけ強くなったか見せてもらおうかの?」
そういわれて俺は白旗揚げて土下座して謝りたくなった。まぁ、昔の話だが・・・・一度爺さんがちょうど家にいなかったとき、爺さんの代わりにばあちゃんが手合わせしてくれたのだが、その結果として俺は一ヶ月ぐらい入院していたらしい・・・・俺はばあちゃんと向かい合ったところまでは覚えているのだが、それ以降の記憶を忘れている。
「・・・・輝よ、男というのはな、砕け散ってこそ華なのだ。つまり、玉砕覚悟の気持ちを持って何事にも挑むべきなのだ。」
「・・・・はい、わかりました・・・・」
俺は銭湯の中にある道場にて、この前も勝つことが出来なかった爺さんより数倍強い敵を相手に正直ビビッている。簡単に想像するなら、雨の中、不安と恐怖に震えている子犬みたいなものだ。とても優しい飼い主が現れるならいいが、今俺の前にいるであろう、ばあちゃんの場合の優しさはちょっと違う。武士の情け・・・・つまり、これ以上苦しむことがないように震えている子犬をしとめようとするのだ!!
「ほら、仕掛けてこないならこっちからいこうかの?」
そういうと、あっ!!という間にばあちゃんが目の前にいた。速い、速いよ!!
そして、俺の体もそのスピードで後ろのほうに吹っ飛ぶ。建物の中には限りがあるので壁に激突。俺は思いっきり背中を強打し、少しの間呼吸をすることが出来なくなった。・・・・手加減して多分このレベルだろうな・・・・。遠くから加奈が驚いてあげている声が聞こえる。
「輝、何かあのスケベジジイから教えてもらってないのかい?」
「?いや・・・・どうだったかな・・・」
「そうか、じゃ、いっぺん会ってきなされ。」
ばあさんは先ほどと変わった呼吸法をした後、冷徹なオーラでもまとっているのかとてつもなく怖い顔となった。
「・・・・・今から輝に打ち込む技はな、死者に会いに行くというものじゃ。」
「・・・・つまり、俺の息の根を止めようということですか?」
ばあちゃんはぞっとするような微笑を浮かべて・・・・何も言わなかった。そして、俺が瞬きしたら俺の視界から消えており、気がついたときには懐に入り込まれていた。
「・・・・『阿野世遺棄』!!」
「・・・・輝、生きとるか?」
「・・・・いや、爺さんに会ったということはどうやら死んでるようだ。というより、殺されてしまった。」
「まぁ、あれじゃ・・・・元気を出せ、これからお前にいろいろ教えてやるからな・・・あのにっくきくそばばあを倒してくるんじゃぞ?いいか、絶対に息の根を止めるなよ?もしも息の根を止めたら間違いなく、わしの命はない。」
「・・・・いや、爺さんはもう死んでるだろう?もう殺されるわけないと思うんだが?」
「甘いぞ、あの婆は人間ではなく、竜なのじゃ・・・・。」
「う、うそぉ!!」
「嘘ではない、わしも生きていた頃はまだまだ青二才じゃったな・・・・若さゆえにあんな凶暴な竜を娶ったのだからな。今覚えば、過去に戻って人生をやり直したいものじゃ。ドラ○も〜ん!!たすけてぇえ!!」
「まぁ・・・爺さん、とりあえず俺に何か教えてくれないか?そのために俺は死んだみたいだからな。」
「・・・・よし、それではこっちについてきてくれたまえ。」