ああ、謎の部活発足?
二十四、
俺の近くにいた人外の者たちは俺の敵となった。左右から腕をつかまれ、葵は珍しく俺をにらみつけている。そして俺は脂汗を顔に出しまくっていた。
「・・・・最後に言い残したことはありますか?」
「・・・別にいいじゃん・・・い、いや!!嘘です嘘!!」
葵は近くにあった掃除道具の中からモップをもってきて俺に狙いを定める。
その狙いはどうやら俺の額のようだ。
・・・・とある人物は手足を狙うなどをして相手を傷つけないようにするそうだ。だが、ある日それを逆手に取られて寒い海に沈んでしまった。死んでなかったのが不幸中の幸いだ。いや、そんなことより今の俺の身の安全は誰がしてくれるのだろうか?よ、よし、俺の腕をつかんでいるどちらかを買収しよう。まじめな穂乃香ちゃんでは駄目だろうからまずは加奈からだ。
「か、加奈ちゃん・・・言うこと聞いてあげるからこれをといてくれないかな?」
「う〜ん?私を呼ぶときはいつも呼び捨てなのにこういうときだけちゃん付けするんだ?いいご身分よね。」
あわわわ・・・最後の頼みの綱も切れてしまった。ああ、爺さん・・・・あなたの孫はあなたと同じところに行こうとしています。こんな世の中なんて仕分けしてリサイクルに出すべきだ。
「・・・・葵さん、どうやら輝も反省しているようなので許してあげたらどうでしょうか?」
いやいや、どうやら世の中はまだまだリサイクルするべきではないようだ。ごみの中にも使えるものがいるようだ。いや、きっと枯れてしまった花とドライフラワーを間違えたに違いない。
「・・・・本当に反省してるんですか?」
大体、何で俺は怒られているんだ?まさかばれるとは思っていなかったのだが・・・・どうしたもんだろうか?もしかして葵の夢に爺さんでも出てきて隠し場所を告げたとか?
「はい、これから先はばれないように・・・・いえ、二度とそんな不純な本は買わないようにします。」
「はい、約束ですからね?もしも破ったらその命、私がレンタルしますから・・・・そのつもりでいてくださいね。」
こうして、俺は釈放されたのであった。ああ、加奈がいてくれたおかげで助かったぜ。もし、加奈がいなかったら今頃爺さんと話し合っていたに違いない。
「・・・皆さん、遅かったですね?」
ようやく第二生物室についた。着いたのはいいのだが・・・・こんな地下の実験室みたいなところでどんな部活をするんだ?まぁ、きっと文化部なのは間違いないだろう。
「・・・・碧先生、いったいこの部屋でどんなことをするんですか?」
穂乃香ちゃんがそのように尋ねる。そりゃそうだろうな。何をするか決まってないならそれは部活動じゃないだろう。
「・・・ふふふ、じつはですね、この学校の歴史を探っていたらかなり前に廃部となったとある部活があるんですよ。その部活の名前は『秘鑰部』。」
ひやくぶ?ちなみに秘鑰というのは秘密を明らかにする方法、手段などである。
「・・・で、名前はわかりましたがどんなことをするのですか?」
「そのままです。秘密となっていることを私たちの手で明らかにするのです。」
そう意気込んで力強く宣言する碧さんの姿はどこかの軍のお偉いさんのようであった。たしか、ジ×ンだったかな?ああ、ちょうど色もあってるからちょうどいいな。
「・・・秘密を明らかにするって具体的にどうするんですか?」
「簡単ですよ、穂乃香ちゃん。たとえば、加奈ちゃんのスリーサイズや輝君が隠している本の数、青いチャンがしとめてきたザリガニの数などそんなどうでもいいことから、人ではない竜の生態などです。それに、椎名さんから聞きました輝君が使っている謎の拳法などのすべてを明らかにするのです。」
うん、前半はどうでもいいね。一つ目は期待したら裏切られそうだし、二つ目は絶対に秘密にしていたい。最後のはもはや数えるのも無意味だ。近頃、ザリガニを近辺の川で見ることがなくなってしまったからな。もしかしたらこの地域のザリガニはすべて絶滅しているかもしれない。
「・・・・碧さん、俺から提案があるんですけど?」
「はい、どうぞ、輝君。」
「とりあえず何かのテーマを決めませんか?ほら、月で変えるとかどうでしょう?」
「ああ、いいですね!!それでいきましょうか?」
こうして、かなり適当に方針は決まった。その後もいろいろと話し合った結果、次のような役職が出来上がる。 顧問 碧 部長 穂乃香 第一副部長 俺 第二副部長 加奈 裏の部長 葵
なんだかよくわからないのも混じっているかもしれないが、そこは愛嬌だ。勘弁してほしい。そして、最後に今月の目標を皆で決めることとなった。これにもなかなか時間がかかる。とりあえず、顧問の意見を聞いてみることにした。
「・・・・まずは輝君の頭を解剖してみましょうか?」
「いや、戻せるならいいですけど・・・誰もいないでしょ!!」
「じゃあ、とりあえず加奈ちゃんあたりを三角のいすに座らせて反応を見るとか?」
「そんなことしたら警察に捕まります!!第一、あなたは変態ですか?」
「じゃあ、葵ちゃんのザリガニをすべて川に返してあげるのはどうかしら?」
「いい考えですけど、すでに生きているザリガニは家にいません。生きているとしたら葵のお腹の中です。」
「じゃ、穂乃香ちゃんと輝君を本気で戦わせるのはどう?」
「それじゃ、部活ではなく、ただの決闘です。」
さっきから俺と碧さんしか喋っていない。他の部員たちは蚊帳の外だ。
「・・・・じゃあ、この町には数えるのが面倒なくらい道場があるから、なぜそんなにあるか調べるのはどう?凄い秘密があるかもよ?」
「まぁ、それはいいですよ。」
しかし、それはただ単にあるだけではないのだろうか?
「皆、今月の目標はこの町の道場の秘密よ!!明日からいろいろ調べてもらうからその気でいてね。今日の部活はここまで。」
一方的に本日の部活は終了した。ある程度決まったからいいだろうが、これからどうなるのだろうか・・・・。まさかとは思うが、碧さんはこの町について何か調べているのではないだろうか・・・・。きっとおばさんにいろいろそそのかされたに違いない。
「・・・アキ、顔色悪いけどどうかしたの?」
「い、いや・・・・ちょっと考え事してただけだ。」
「?ならいいけど・・・」
俺たちは来た道を再び四人で歩き出した。なぜだか思う・・・。俺は誰かの手のひらの上で踊っているだけではないのかと・・・。つまり、俺の隣にいる竜たちと出会うのは仕組まれたことではないのかと・・・・いや、考えすぎだ。これはサスペンスでもなんでもない、ただの学校生活のはずだ。うん、そうに違いない。
「輝さん、考え事ならこれを飲めばいいですよ。」
心の中から心配そうな顔をして、葵は俺の手にひとつのビンを渡してくれた。だが、それには蛇が入っているのであった・・・・。はぁ、不安だ・・・いろいろと。
さいしんするのが遅くなりました。すいません。