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爺さんの遺産(後編)

二十二、


 爺さんの行動には隙が多い。そう思っている俺は間違っているようだ。この拳法の主体はどっからどう見てもカウンターで攻めには向いていないように見えるのだが・・・。とりあえず爺さんの隙を狙って攻撃しようとするとその攻撃をつぶされた挙句にその部分に強烈な一撃を爺さんは打ち込んでくる。


「ほれ、どうした?わしはまだまだ元気じゃよ。」


「ぐぅう・・・このくそジジイめ。それ!!」


 爺さんの体に掠りそうになるのだが、あたらない。これではほとんど意味がない。


「ほれ、これで最後じゃ。」


「ぐはぁ!!」


 爺さんの拳から繰り出される決定的な一撃を俺は頭、胴・・・・


「・・・・これはおまけじゃ。」


 そして股間に食らって倒れた。ぐ、爺さんめ・・・いつかぜってぇ、あんたの玉をつぶしてやるぜ。


「うむ、なかなかいい動きじゃったよ。後は実践で慣れればそのうち体がついてくる。さすれば・・・誰にもばれずに女湯を覗くことなど朝飯前よ。」


 俺はそんな爺さんのたわごとを聞きながら気を失ったのであった。


「ぐぅぅ!!っつつ・・・」


 次に目を覚ましたのは・・・一度しか行ったことがない保健室であった。二つあるうちのベッドのひとつに俺は寝ているようだった。体がいたるどころ痛い・・・・。特に爺さんに食らった最後の一撃が・・・強力だった。いや、マジで女になるかあの世にいくかの瀬戸際だったぜ。


「・・・・少年、大丈夫か?」


「あ、はい。」


 俺の目の前にやってきたのはどうやら保健室の先生らしい。身長が高くて顔色は悪い。どちらかというとどこかの研究所にいそうな雰囲気を出している。


「君は屋上で気絶していたところをたまたま通りかかった生徒によってここまで運び込まれたのだよ。どうやら頭に何かあたったみたいなのだが・・・それがよくわからなくなってしまってね。」


「あ、もう大丈夫です。失礼しました。」


 俺は急いで保健室を飛び出す。なぜ、急に飛び出したかというと・・・・あの保健室の先生の背中に・・・女の幽霊に違いないものが見えたからである。くわばらくわばら。たたられたらたまったものではない。保健室からある程度はなれたところで碧さんにあった。


「輝君、ちょうどよかった。今からよびに行こうと思ってたのよ。」


「どうかしたんですか?」


「ええ、輝君には悪い知らせだけどね・・・・部活に今から一週間以内にはいらない生徒は放課後補修となったのよ。」


 ヴぇえ!!まじですか!!


「とりあえずね、何か部活にはいるか、新しく部活を発足させないといけなくなったの。私としては新しい部活を作ってくれるとうれしいんだけど・・・・どうかな?」


「ええ、俺はいいですよ。だけど部活ってどうやって作るんですか?」


「私がやっておくから大丈夫よ。それじゃ、明日の放課後は第二生物室まで来てね。」


 第二生物室?そんな教室がこの学校にあったのだろうか・・・。俺は不安に思いながらも・・・すでに放課後になって人気がない教室までかばんを取りに戻ったのであった。さっさと家に帰って体を休めよう。だが、人生そういかないらしく、教室には人が一人俺を待っていた。いや、女子が俺のために残っていたらうれしいのだが待っていたのは見知らぬ男であった。


「やぁ、君が白川 輝くんかい?」


「そうだけど?あなたは誰?」


 俺は見知らぬ人物にあまり名乗りたくない。今まで見知らぬ人たちに名乗ってきていいことはなかったからだ。それはさておき、このきざったらしい男は誰だ?こんな男は俺の脳内に記録されていないようだ。


「ふ、僕の名前は黒河くろがわ あんさ。」


 うわ、すっげぇ・・・嘘くせぇ。俺の名前に対抗でもしてるのか?みれば見るほど俺よりかっこいいから腹たつわぁ・・・・。ま、こんなやつの相手をしてないで帰ろう・・・


「じゃ、黒河・・・俺は用事があるから先に帰るな。」


「ああ、気をつけて帰りたまえ・・・・いや、ちょっと待った。」


 俺のかばんを引っ張って俺の動きを邪魔する黒河。はぁ、近頃本当に変な連中に会うな。


「・・・・で、あんたは俺に何かようか?」


「ああ、君ほど鈍くて鈍感な男がいるなんて嘘だろうよ。僕みたいなクールな男が気味みたいな熱血少年を教室で待っているときのこの後の展開がわかるだろう?」


 ま、まさか・・・・


「すまんが黒河とやら、俺は男に興味はない。」


「君は馬鹿か?ライバル宣言をするだろう!!」


 クールボーイは顔を真っ赤にして否定してくれた。ああ、よかった。


「で、そのライバルとやらは俺になんでそんな宣言をする?俺が知っている宣言はポツダム宣言だけだが?」


「そうだな、仮に『影でモテル男ナンバーワンを取られた男の挑戦宣言』とはどうだ?」


 はぁ、やっぱりこの高校を選んだのは間違いだったのかもしれない。


「・・・・別にいいが・・・長すぎるから『KNT』でどうだ?」


「うむ、どことなく無理やりでまったく美しくない気がするがしょうがない。いいだろう。」


 うわぁ、こいつとぜってぇ、友達になりたくねぇ。俺はこの変な知り合いができるだけ登場しないように祈りながらその『KNT』をした相手から逃げるように学校を飛び出した。

 校門のところには葵、加奈、碧さん、穂乃香ちゃんが立っていた。どうやら俺を待っていてくれたようだ。


「輝さん、遅いですよ。」


「すまん、いろいろあったらから遅くなったんだよ。」


 別に待ち合わせていたわけではないが・・・待っていてくれたのでお礼だけはいっておこう。


「みんな、まっててありがとな。」


「いいですよ。」


「そうだよ。」


「そうですね。」


「ま、当然だよ。」


 俺と四人?(いや、四匹か?)は夕日を背に家に向かって歩き出した。俺は思う・・・こうして日々が続けばいいと・・・だが、股間を蹴られるのだけはその日々に入れないでほしい、いまだに痛いから・・・・。


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