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おばさんはおばさん


二、


「・・・・ん・・」


「輝さん、起きて下さい。誰かが下から呼んでますよ。」


「・・・ん??」


 寝ぼけているのか知らないが俺の目に映る人物を俺は知らない。俺の目に映る少女を知るわけがない。俺には妹などいないし、姉もいない。ちなみに兄もいないし弟もいない。更に言うと彼女もいないのだ。というより知り合いの女子もほとんどいない。


「・・・・どちら様で?」


「なに言っているんですか?私を連れてきたのはあなたですよ。」


・・・・俺が女の子を家に入れた?んな馬鹿な事があるわけがない。いや、事実嬉しいのだが、俺は人知れずに犯罪を犯すような人間ではない・・・と思っている。


「もう忘れたんですか?パンをくれたじゃないですか?」


 パンで女の子が口説けるなら安いもの・・・・?ん?ま、まさかこの女の子は・・・もしかして・・・


「・・・俺が・・連れて来た竜?」


「はい、そうです。」


・・・あっさりしているなぁ。なんて人だ。いや、竜だ。竜はみんなこんなにあっさりしているのか?


「というより・・早く膝からどいてくれませんか?寝るときから私の上に乗ってたんですよ。」


 ああ、だから彼女の顔が横にあるのかぁ。通りで柔らかいと思ったよ。いやぁ、竜に膝枕されているなんてもしかして人類初か?ま、とりあえずはさっさとどこうかな?

 ベッドの上に座って今俺の前にいる少女をまじまじと見てみる。うーん、髪型はポニーテールでかなり黒い感じの青色である。うんうん、意外と胸がでかいなぁ・・・じゃなくて・・・


「・・・というよりなんで俺についてきたの?」


「それはですね、初めて私にやさしくしてくれた人間ですからね。これからよろしくお願いしますね?」


・・・は、なにを?この子は何を言ってるの?


「・・・何をよろしくお願いするんですか?」


「はい、これからはずっと一緒ですよ。」


「なんで?」


  俺は何か間違いを犯したのか?若さゆえの過ちを犯してしまったのか?それ故にこのような訳の判らん少女を世話をしなければならないのか?すべての責任は・・・・俺なのかぁ?


「ま、あなたの家に住む人が許可すれば私はこの家に住むことにしますよ。」


 おお、意外と常識的だぁ!!これは早速おばさんとおじさんに聞いてみよう。

ここで説明しておくが俺の母さんと父さんはいないのだ。小さいころ、天に召されてしまった。それ以後俺は爺さんに育てられていたが爺さんがいなくなると爺さんの紹介により血の繋がらない家に送られたのだ。別にいやだとかそんな感じはない。おじさんとおばさんはやさしいし・・・理解もある人物だ。


「輝さん、そういえば先ほどから一階であなたを呼んでいる人がいますよ。早く行きましょうよ。」


 俺は頷いて先に階段を降りる事にした。このかわいそうな竜には悪いがここは俺の家ではないので選択権はあのおばさんとおじさんにある。ま、どちらかというならおばさんが決めるに違いない。


「輝、一回呼んだらすぐに降りてこいと言っただろう!!またこの前みたいに関節外されたいのかい?」


「はい、ごめんなさい!!」


 ちなみに今怒っているのはおばさんの方だ。

口は悪いし、口より手が早いときがよくある。

しかし、俺は実はこのおばさんはやさしいことを知っている。

あれは俺が中一のころ、上級生の不良グループにぼこぼこにされた時におばさんはその相手に仕返しをしてくれたのだ。そして、優しさ故にその後、俺にいろいろと相手をぼこぼこにする技を教えてくれたのだ。・・・・そりゃもう、教えてくれる度に体中に打撲ができてます。ちなみに心配してくれるのはおじさんだけです。


「で、後ろにいるそのかぁいい女の子は誰だい?まさかダンボールとかにはいってたんじゃなかろうね?それともなんかものでつってきたのかい?」


 うわ、微妙に鋭いなぁ。その鋭さは銃刀法違反じゃないだろうか?


「はい、私の名前はですね・・・私の名前は・・・」


 俺の裾をちょいちょい引っ張って寄せて耳打ちする。


「名前を決めてくださいよぉ。」


「え!!なんで?」


 うーん、いきなり言われても困る。だが、名前を付けてくれと言われたら付けるしかないだろうなぁ。


「・・・あおいなんてどう?」


「・・・ほんとに考えているんですか?」


 ちょっと適当だったかと思い、やり直そうともしたがおばさんの耳も鋭かった。


「ほぉ、葵かいい名前じゃないか。それでその葵ちゃんは輝のなんだい?」


 これにて名付け完了。半ば強制的に竜の名前は葵と名付けられたのである。・・・俺のせいじゃないもーん!!俺の声が大きかったわけじゃなくてあのおばさんの耳が悪いんだもーん。


「・・・わ、私はですね、その、ここで生活したいんですよ。」


「よし、いいだろう。」


・・・・・おいおい、もっと深刻に悩みましょうよ。二行で即決。この人の頭の中はどんな構造になっているんでしょうか?誰か教えてほしい。

  喜んでいる竜を横目で見ていた俺だが、身構えていた。このとぉってもやさしいおば様がただでこんな得体の知れない少女を家に置くわけがない。


「だが、条件がある。」


 ほら来た。きっと凄い奴が待ってるぞぉ。葵の顔をどことなく緊張しているし、もし葵がその条件を拒否すればおばさんは気が短いから間違いなくここを追い出されてしまうだろう。


「・・・悪いがその輝と同じ部屋だ。今のところ部屋に余裕がないんだよ。」


「はい、ありがとうございます。」


・・・・わお!それ俺にとってかなり拒否したい条件じゃん。だが、ここで俺が文句をいえばどうなるであろうか?試してみたいがそのときは竜が住んでいた橋の下で過ごすしかないかもしれない・・・・


「・・・・輝、なんか不満でもあるのかい?」


「い、いえ、おばさんの優しさに感謝しているくらいでございます!!」


 し、しまったぁ!!おばさんの前では『おばさん』と呼んではいけなかったんだぁ!!


「ほぉ、私の年をもう忘れたのかい?私はまだ二十二だ!!」


 俺は言葉で一発殴られたのである。そりゃもう、もらしそうになっちゃいましたよ。



 

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