未来予想図?3
十九、
加奈が俺に対して雷をまとったまま突撃してくれたおかげで俺は今、体がしびれている。死ななくてよかった。いや、ほんとによかったぁ。
「・・・加奈、もう大丈夫か?」
「・・・うん・・・」
泣きやんだ加奈を離して家に帰らせることにした。誰か知らないが加奈のことを小学生したらしく、そのため、この晴天の中ものすごい雷が落ちたのだ。とりあえず加奈の機嫌が直った事でよしとしておこう。これ以上何かを求めたら俺は神様に怒られてしまうに違いない。
「加奈、ちょっと散歩しようか?」
「・・・・いや、いいわよ。私は先に家に帰っておくから・・」
そういって俺からぱっとはなれて家のある方向とはまったく違うほうに駆け出す加奈。
「おーい、家はあっちだぞ?」
すでに見えなくなってしまった加奈はほうっておいても大丈夫だろう。あの子は小学生ではないから・・・
「さて、俺もおばさんから言い渡された課題を考えよう。」
〜碧の場合〜
「輝君、朝ですよぉ?」
碧さんが俺を起こしにやってくる。ふすまが開く音がして、足音が俺の隣で止まる。
「ほら、おはようございます!」
俺の顔のすぐ傍でそんな事を言っている。だが、俺としては甘えていたい・・・・。
「・・・・輝君の寝顔は本当に可愛いですねぇ。とっても魅力的です。」
がぶり!!がじがじがじ・・・・
「いたいたいたいたいたい!!」
「輝君、おはようございます!!」
どうやら強硬手段をとられてしまったようだ。俺は噛みつかれた頭をさすりながら体を布団から起こす。ベッドではないのは碧さんが意外に布団のほうがいいと言ったからである。そんなことはさておき、俺はまだ痛む頭をさすって立ち上がろうとする。
「ほら、輝君・・・」
しかし、碧さんが俺の体を寄せて抱きしめるようなことをする。そして、俺の頭・・・齧られた部分を手で撫でる。
「ほら、もう大丈夫かな?」
「は、はい!!起こしてくれていたのに気がつかないですみません。」
もとはといえば俺が悪いのだ。ここは素直に謝っておこう。だが、碧さんはそんなことを別に気にしていなかった。
「・・・もうちょっとこうしていたいなぁ。ね、いいかな?」
「もちろん・・・。」
だが、こんな良い雰囲気は俺にはもったいないのかとあるものが俺と碧さんを引き離した。
ピーーッ!!
「あらら・・・大変。やかんがなってるわ・・輝君、もう布団に戻ったら駄目だよ?」
そういって碧さんは全く慌てていないような感じで俺から離れていった。たかがやかんごときで俺の朝の心安らぐ時間を引き裂くとは・・・・・。俺は立ち上がりパジャマを脱ぐ。そして、スーツに着替えようとして手を休める。今日は休日であった。
「輝君、朝食ができたわよ?」
「はい、今行きます。」
食卓の上には和食の朝である味噌汁やご飯がのっていた。どれも豪華ではないがおいしそうである。
「はい、輝君・・あーん!!」
こんな嬉しいおまけまでついているから俺にはもったいないと思う。だが、世の中ギブアンドテイク。
「いや、碧さん・・・それ無理!!」
何も魚をそのまま俺の口の中に押し込めなくては良いのではないかと俺は思う。そりゃまぁ、してくれるのはとっても嬉しいが・・・・その大きさでは俺の口の中におさまることはないだろう。食道の途中で止まってもしかしたら死んでしまう可能性もある。
「そうですか?」
「はい、ちょっと無理だと思います。」
碧さんのいいところは相手にだけさせることはしない。自分でもチャレンジするのだ。そして、俺にはできないことを彼女は軽々やってのけた。そして、行儀よく口の中にきれいに収まった魚を胃に入れてから俺に話しかける。
「ほら、私でもできたんだから多分大丈夫ですよ。」
「いや・・・多分じゃなくて絶対無理ですよ。」
「できますよ・・・だって私の輝君ですから・・・」
顔を赤くしてそんなことを言う碧さんに俺は無理を承知で魚を口に押し込めた。顔を赤くした彼女は俺の宝物だ。だが、人間ならできないことはやらないほうが良い。
「むぐぅぅ!!」
「きゃぁ!大変!!人工呼吸しなきゃ!!」
「嬉しいけど・・・まずは何か飲み物をください!!」
〜碧編終了〜
うん、あの人なら天然で俺を殺しかねんな。きっとこの後俺は口を塞がれて嬉しい感じで爺さんが待っているところに召されるに違いない。
「輝君、顔色が優れないんですが・・・どうかしたんですか?」
「あ、碧さんじゃないですか・・・」
天然で人を殺せる竜が俺の顔を心配そうに覗き込んでいた。その手には本を持っている。
「それより碧さんはどこに行ってたんですか?」
「ええ、ちょっと本屋にいってたんですよ。先生になるには人工呼吸や心臓マッサージを知っておいたほうが良いといわれたんです。」
そういえば碧さんは偽者かどうかはわからないが先生であった。
「碧さん、頑張って下さいよ?」
「はい、輝君がそんな状態になったらがんばりますね?あ、試しに人工呼吸をしていいですか?」
俺が必死に遠慮したのは言うまでもない。なぜなら、彼女が買ってきた本はまだ封を切られていなかったからである。このままいくと俺は数分後に爺さんに会いに行かなくてはいけないだろう・・・・。