飼い犬に手をかまれる・・・・
十六、
中はこの前の道場と打って変わってかなり大きかった。池もあり、鯉が悠々と泳いでいる。
「・・・・ここって道場って言うよりは日本庭園じゃない?」
「言えてるわね。」
そんなことを加奈と話していると奥の扉が開いて誰かがやってきた。
「・・・・ようこそ、私の道場へ・・・愚かなネズミたちは黒焦げになってもらおうか?」
どっから見ても危険なにおいがする人物である。俺としてはこんな相手が持っている看板を持って帰るのは気が引ける。
「君たちには新型兵器の実験台になってもらおうか?なぁに、痛いと思っている暇はないように改良されているからね。」
こんな相手と話している時間があるくらいならしりとりしているほうがまだましだ。俺はおもむろに彼に近づきしゃべっているのを承知で頭を思いっきり殴った。
「んがぁ。」
「・・・・すいません。看板はもらっていきますね。」
こんな相手ならこの前の道場の何とか先生のほうがかなりましだ。まぁ、このまま看板をぱくって持って帰ってしまおう。
「加奈、先に看板を持って家を目指していてくれないか?俺は救急車を呼んでおくから・・・」
「わかったわ。」
俺は道場の中に入り電話を探した。中は外見から想像できないほどに文明化が進んでおり、目を奪われるようなもの結構ある。
「・・・くくく、自らわなに飛び込んでくるなんて間抜けなネズミさんですね。ここには侵入者を撃退するように作られた『電撃君一号』が多数配置されているのですよ。ここに入ってきたものは・・・」
ぴぴーっ
ばりばりばり・・・・
俺の目の前でここの持ち主は黒こげとなって倒れた。だが、その目にはどうだといわんばかりの色が宿されている。
「・・・・このようになるのですよ。がくり・・・」
うわぁ、きっと彼は今、身を持って自分が作った『電撃君一号』を自慢したに違いない。すげぇガッツだ。俺だったらすぐに逃げ出すと思うね。
「っと、そんなこと思っている場合でもないみたいだ。」
俺の周りには数個の侵入者迎撃装置が俺を狙っている。
丸い体の中央には大きなカメラが設置されており、体はプロペラで浮かんでいるようだ。しかし、思っていたみたいに俺に積極的に攻撃しようとは思っていないのか俺の周りを旋回しているようだ。先ほどから頭にはこれ以上近づいたら攻撃を開始するという文字を浮かべている・・・・と、その一個が電撃を放ち爆発した。
「輝,大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。多分、」
これで俺たちは間違いなくやつらの敵である。今まではこれ以上の進行をしたら電撃を放つようになったが攻撃をしたのではっきりやつらのおとなしそうな青い目は赤く点滅しており、俺たちをにらんでいるに違いない。
「加奈、走るぞ?」
「え・・・私走るの苦手・・・」
そんなことを言う加奈の体を抱えて出口に向かって走り出す。先ほどまで俺がいたところには強力な伝劇が当たっているようで耳を劈く音がしきりに聞こえている。
「・・・・ぐぁぁぁぁぁぁ!!」
どうやらひとつが自分たちの主人に当たったようだ。断末魔のような叫び声を上げている。まぁ、悪いのは俺たちかもしれないが今回だけは大目に見てほしい。
「輝、助けてあげたんだから私のお願い聞いてくれる?」
いやいや、たとえるなら俺ががけに捕まっていたところをお前は俺の手を踏みにじった挙句にその崖から突き落としたのだと言いたくなったが・・・・純粋に俺を助けようとしたので今回だけは見逃してやろう。俺は首を縦に動かした。
「輝、今回は加奈と一緒に行ったのかい?」
「はい、いろいろとありましたが看板はゲットすることに成功しましたよ。後これはお土産です。」
俺の手に握られているのはあの道場にいた大きな鯉である。これを売ったら結構な額になるかもしれないと思ってバケツに入れて連れ帰ってきたのだ。
「ほう、すまないねぇ。まぁ、これで私の夢にも近づいてきたことだし・・・輝が知りたいことを何か教えてやろう。」
やった!!俺として走りたいことが多すぎるのでどれにするか迷うのだが・・・ひとつだけ気になることがある。
「竜って何ですか?」
「ああ、簡単なことだよ。想像上の生き物・・・つまり、誰かが作り出したものだ。あんたになついている竜はその昔・・・・どこかの実験の結果として生まれたものだ。意外に最先端なのかもしれないねぇ。さて、今日は鯉の分としてもうひとつだけ質問に答えてやろう。」
「さすがおばさん・・・三段腹ですね。」
「それをいうなら太っ腹だ。ふざけると明日は来ないよ。」
「冗談です。おばさんは看板を集めてどうするんですか?」
「この世を統一する。」
は?この人はそんなことをほんとにしようとしているのだろうか?疑問が残ったのでもう一度俺はおばさんに聞こうとしたがおばさんは晩飯の準備をしに部屋を出て行ってしまった。
今夜のおかずは鯉こくであった。・・・・・もしかしてこの鯉は俺が盗ってきた鯉か?まぁ、鯉は財布の中に入らずに俺たちの腹の中にその優美な姿を消していった。
「輝、一緒にお風呂に入ってよ。」
「ああ、わかった・・・!!なにいってんだ?」
「お願い事聞いてくれるって言ったじゃない。」
結局のところ、俺は加奈と一緒に風呂に入ることになった。
俺としてはかなり不満だが・・・いや、別に加奈の幼児体系が問題ではないのだが・・・・まぁ、もうなんだかどうでもよくなってしまった。これからの俺の人生は流されていくだけに違いない。流されていく果てにあるものは何なのか俺としてはまったく想像したくないのだが・・・できるならハッピーエンドになってほしい。
「輝、今度は一緒に寝ましょうよ!!」
「うぇぇぇ!!もしも・・・まさかのまさかで・・・間違いが起こったらどうするんだよ!!」
いや、俺にハッピーエンドはむかないのかもしれないな。
ちょっと遅くなってしまいました。すいません。だけど今度からはがんばっていきたいなぁ。