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襲撃者の少女

十三、


 三人が住所、年齢、過去を偽装してしまった一日目は意外とあっさり過ぎていった。それに関しては何も言う事はない。ただ、三人が学校に行く二日目となる朝の出来事が正直びびった。その日の朝、やはりおばさんに朝の挨拶を継げて家を出ると今日は覆面をつけた襲撃者がいた。


「覚悟!!」


 襲撃者は手に持っていた木刀で俺の頭に一閃を喰らわせようとする。だが、剣のきれいな切っ先は虚空をかすめ、地面にあたる。意外と・・・・よけるのは簡単だ。いや、縦一閃ではなくて横一閃だったらちょっと俺としては避けづらい。

 さて、こういう場合は相手に時間を与えてはいけない。体任せの体当たりは芸がないが健全な生徒を木刀で襲う襲撃者にはうってつけだと俺は思う。といっても、倒してしまえば馬乗りになっているほうに分がある。こうやって組み敷いてから顔を覆っている布を取らせてもらおうか?


「・・・・やっぱりアキは強いねぇ。」


 布を取った相手は女の子であった。ああ、よくあるよくある。いや、これは俺の過去ではよくあったことだ。


「・・・穂乃香ちゃん・・か?」


「あたりだよ。」


 俺は押し倒して馬乗りになっている相手を見る。

彼女と最後に会ったのは小学三年生くらいだったかな?その頃爺さんが死んでしまい・・・・俺は今の家にいるのだ。ちなみにいうなら両親が死んだのは小学一年の冬だったらしい。まぁ、今となっては知らないがこれは爺さんが言っていたことなので嘘かもしれない。さて、余談はこのぐらいとして俺は気になることがある。


「なぜここに?」


「うん、引っ越してきたんだよ。だけどあのアキがこんなに強くなっただなんてうれしいなぁ。」


 穂乃香ちゃんは遠い目をして話し始める。


「・・・・朝行くときは私が木刀を持ってアキをコテンパンにしながら学校に行ってたのにねぇ・・・。」


「それは小学二年生までだろう・・・」


 うんうん、なつかしいなぁ。穂乃香ちゃんはなぜだか知らないが小学三年になると俺を叩くのをぴたりと止めた。それはそれで嬉しい事だったのだが・・・・爺さんから余計にしごかれ始めた。その昔・・・いや、いまもだが俺はなんだか怪しい拳法みたいなものを習っているのだ。


「それよりさぁ、そろそろどいてくれないかなぁ?」


 道行く人たちは俺たちを見ている。そりゃそうだ・・・朝っぱらから女の子を押し倒している光景だからなぁ。


「・・・・わかったよ・・・」


 手を貸して立ち上がらせるときに何かが起きた。誰かの考えていることが俺の頭に入ってきたような感覚に襲われたのだ。


 押し倒されるならそんな関係になってからがいいなぁ。


 いや、ちょっと朝っぱらから誰がこんな危ないことを考えているんだ?誰だ?そしてこんなことが前にもあった気がするのは俺だけか?


「・・・・アキは・・・ちょっと失礼だね・・・」


 穂乃香ちゃんは俺を睨むような目で見ている。その目には少々、恥ずかしそうな顔が入り混じっている。


「私のこと胸が小さいって思っているでしょう?さっき伝わってきたよ。」


「え・・・ええぇ!!」


 いや、確かに小さいと思ったけど・・・口に出してないし・・・もしかして・・・さっきあんなデンジャラスな事を考えていたのは・・・目の前にいる小さい胸の女の子なのか?


「あ、また思ったでしょ?」


 いまだに手を持たれていたので俺はさっさと手を放した。そりゃそうだ・・・これ以上変なことが相手に伝わったりしたら間違いなく目の前の少女は俺に襲い掛かってくる。


「さ、早く学校行こうよ?」


「ああ・・・わかったよ。」


 先に走り出した幼馴染を追っかけていこうとして気がついた。なぜだかほとんど思い出すことができないのだ。彼女との思い出は木刀で叩かれていた事ぐらいしか頭に浮かんでこない。


「・・・・アキ、あぶないっ!!」


 ぷっぷー


 道の真ん中で突っ立っていたのが間違いだったようだ。俺は右から迫る車にはねられてしまった。

 車のスピードはあまり速くはなかったが俺の体は中を舞い、近くのガードレールに頭らからぶつかってしまった。いやいや、ほんとについてないねぇ。


 道を渡るときはすばやく、注意してわたろうね?



「・・・今度は交通事故か?いいご身分じゃのう?」


「うるせぇ。ちょっと思い出してただけだ!それになんだか知らないが俺は穂乃香ちゃんとの思い出を思い出すことができないんだよ。」


 爺さんはおもく頷き、何かをしゃべり始めようとしたのであった。(今日はなぜだか今までのように白い着物を着ておらず、アロハシャツであった。)


「・・・じつはなぁ、わしがすばらしき世界に旅立ったあと、わしは思い出したのじゃ。」


「なにを?」


「わしがよく見ていたビデオの隣にな・・・面白いものがあるのじゃが・・・」


「どうせスケベビデオだろ?」


「いや、それはわしにしては珍しい、ものであった。おまえの小さい頃のビデオじゃ。ある人物がお前の24時間を撮影しており、何があったのかもわかるという、すぐれものじゃ。」


「・・・・俺って監視されてたのかよ?」


「まぁ、爺のお節介じゃよ。そんなことより、今、ここに天使のお姉さんに準備してもらったビデオがある・・・。」


「よし、早速見よう!!」


「わかったわかった。それ・・」


 ぽち!!


「・・・・爺さん、ちょっとこれは違うんじゃないか?」


「すまん、これはわしのお気に入りの一品じゃった。おお、こっちじゃった。」


「・・・全く、何文章でも表現できない危ないビデオを俺に見せてんだよ。」


「まぁ、これもわしなりのユーモアじゃ。きっと輝も大人になったらわしのようなかっこよくてもてもてのいい男になるぞ?」


「・・・・いや、いまだに女子と話したことはほとんどないからわかんねぇな?」


 爺さんは黙ってそのままビデオをセットし、スイッチを押した。今度は間違いないようだ。


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