勢力、拡大中!
十二、
「・・・・ふぁぁぁ。」
目を覚ましてあたりを見渡す。まだ少し暗い。だが、そろそろ起きる時間だ。学校に行く前に走ってこないといけない。俺は布団から抜け出して制服を探す。
「ああ、そこにあったのか・・・」
埃かぶったダンボールの上においてある俺の制服を摘み上げ、おまけとしてついてきた埃をはらう。俺の部屋はまだ掃除が終わってないので埃だらけだ。このままこうしていたら間違いなく埃アレルギーになってしまう。
着替えて一階に向かうとすでにおじさんは仕事に行っているらしく、姿が見えない。起きているのはおばさんと俺だけだ。
「・・・輝、おはよう。」
「・・・はい、おはようございます。」
俺の今日の朝食はパンとサラダとetcである。それをさっさと食べ終わり、学校に向かう。
「いってきます。」
「ああ、そう言えば今日は転校生がくるかもしれないと右隣のおばさんが言ってたぞ?」
おばさんが言った事を深く考えずに走り出す。おばさんは冗談を言うのが大好きだ。
チャイムがもう少しで鳴るところで学校についてみるとこの前同じクラスとなった奴が俺の近くによってきた。(中学の頃から俺はいろいろと他校に行ったことがあるのでクラスの男子のほとんどと知り合いだった。)どいつもこいつも休日は彼女とデートの約束があるとかで俺の遊びの約束を足蹴にしやがった薄情な野郎どもだ。
「・・・白川、今月中に転校生が来るらしいぜ?まぁ、そんなことより聞いてくれよ、昨日のデートは結構いい雰囲気だったぜ。」
「・・・ふん、うるせぇよ。俺には関係ないことだ。」
こいつは中学の頃から友達だったやつで常に何かを俺に自慢してくる嫌な奴だ。こいつの名前など教えておかなくてもいいと思うのであえて名前は伏せておく。
「しかしまぁ、お前は鈍いやつだなぁ。この前の昼休みだっていろいろと見られてただろう?」
「上級生のこわーい、お兄さんがたにか?」
「いや、違うって・・・。クラスの女子からだよ。」
「・・・・俺はまだ何か犯罪的な行為は行っていないはずだぞ?なぜそんな睨まれるような事にならないといけないんだ?」
「だから鈍いっていわれるんだよ。」
へ、勝手に何とでも言いやがれ!!どうせ俺にお似合いなのは恐い顔した連中さ。だが、腹いせとしてそんな連中に手を出すと後でおばさんに何をされるかわからない。
キーンコーンカーンコーン
「はーい、皆さんごきげんよう!!」
チャイムと同時に飛び込んできた人物は白衣を着ていた。一瞬、俺の目がおかしくなったかと思った。
「君たちの元担任は行方不明となったので私が代わりに先生となりましたぁ。名前は緑山 碧でぇーす。理科の担当をさせてもらってますのでよろしくお願いしますね?」
クラス一同、ぽかーんとしている。ちなみに言うなら俺がその中でも特に驚いている。だが、驚きはこのままでは終わらない。
「さて、今日から皆さんの仲間になる人物が二人います。さ、二人とも入ってきてください!!」
一人目はポニーテールをしている女の子で二人目はツインテールをした女の子であった。この時期に二人の転校生・・・ありえる確率はいかほどのものだろうか?俺はそんなこと考えずにただただぼさっと教壇を見つめていた。
「青柳 葵です。みなさん、よろしくお願いしますね?」
「新原 加奈よ。よろしく。」
「さぁーて、二人の席は・・・・まぁ、空いている席にちゃちゃっと座ってね?」
空いている席などないと思われたが・・・・いつのまにか俺の席の近くに設置されていた。うわぁ・・・これはどういった状況だ?
「碧さん、これは何かの冗談ですか?」
「輝君、先生に向かって何を言っているのかな?ちゃんと碧先生と呼んでくださいね。」
「・・・・碧先生、これは何かの冗談ですか?」
俺の質問に何人かの生徒が頷く。
「いえ、そんなことはありませんよ。さて、ちょっと輝君には後で話があるので職員室に来て下さいね。あ、後は転校してきた二人もついでに来て下さい。これで朝のホームルームを終わります。」
そういって白衣の似合う先生は教室を出て行った。俺はしょうがなく、二人と共に教室を出て振り返り二人に聞いた。
「・・・・なにがあったんだ?」
「さぁ、それが椎名さんが昨日、学校に私たちを連れて行ったんですよ。」
椎名とはおばさんの本名だ。いや、多分これも偽名と思われる。去年までは美香と名乗っていた人なのだ。
「椎名さんはこの学校の理事長と知り合いらしく・・・とりあえず輝の動向を気にしろといったのよ。」
・・・・・俺の生活は監視されているのか?
「まぁ、今は碧さんのところに向かいましょう。」
「・・・・ああ・・」
俺はため息を出したい衝動に駆られながらも廊下を職員室に向かって歩き出した。まぁ、別にいいだろうな。
碧さんからはおばさんからのきまりを言われるだけとなった。といっても、遅刻をするなと授業中に寝るなの二つだけだったが・・・・。
「白川、あの二人と知り合いなのか?」
「ああ、ちょっとな・・・・。」
俺は今、くたびれて机に突っ伏している。今日の朝に走った距離が長かったのかもしれないがそれだけではないと思われる。そして、今日の朝おばさんが言ったことを思い出した・・・。
「なるほど・・・だからあんなことをいってたのか?」
そこまで思い出してはっとなった。俺の家の右隣は空家だったはずである。なぜそんなことをいったんだ?
「しかし、おどろいたなぁ・・・・転校生が二人も来るなんてなぁ。しかも今日だし・・・」
「そうだなぁ・・・・俺は明日だと聞いたんだが・・・・」
さらに俺の周りに男子が集まってきていろいろと話し始めるのであった。そして、俺はなんだか奥歯に魚の骨がつまったような顔をして考え込むのであった。俺の考えていたことが現実になってしまったときはちょっとびっくりした。