五十七章 情報収集 1
*第十幕 あらすじ*
助手として働きだして二週間目。未だ事件の手掛かりを掴めない中、情報収集と日々を送る流衣。そんな折、新たな犠牲者が現れて……。
魔法学校で助手として働き始めて二週間目の光の曜日、先週と同じく助手の仕事と聴講を終え、セトの研究室に向かっていたら、やや慌ただしげな足音が後ろから追いかけてきた。
「助手サン!」
足を止めて振り返ると、流衣を呼びとめた少年は少し表情を明るくした。
彼は、流衣が魔法学Ⅰを聴講している時の隣席であるファリド=エネという外国人だ。
耳飾りや首飾り、指輪とあちこちにつけたじゃらじゃらとしたアクセサリーと猫っ毛の金髪が、褐色の肌に映えて派手そうだが、やや垂れ目がちな赤茶の目や低めな鼻のせいか大人しそうな性格に見える。いや、物静かで真面目そう、と言い変えておこう。同年代くらいな気がするが、ひょろっとした痩せ型なのに身長があるから判断出来ない。流衣より頭半分は大きい。
「何か用ですか? ファリド=エネ……さん」
「君」か「さん」か悩み、もし貴族だったら面倒なので「さん」付けで呼ぶ。
「ファリドでいいヨ」
ファリドは左腕に抱えた本を、樫の杖を手にした右手で支え直しながら言う。声も落ち着いたトーンだ。
「ね、もし時間あったら、昼食後、昼休みに中庭に来る、ない? スコシ話したい」
「来る、ない?」っていうのはつまり、「来ない?」なんだろうなあ。流衣は心の中で訂正を入れつつ、特に問題もないので頷く。
「いいですけど、中庭って傘のついたテーブルが並んでる所ですよね? 僕が使っていいんでしょうか」
「問題ない。オレも平民、でも、使ってる」
やや片言の言葉で、ファリドは薄らと笑みを浮かべた。表情が読み取りにくいが、笑っているのだと思う。
「じゃあ、昼食後に、また。この学校、留学生と話す人、少ない。助かる」
ファリドは片手を軽く上げると、食堂のある方へと足早に去って行った。
流衣はその背を見送りつつ、一人ごちる。
「留学生だったのか。学生の間でも格差あるのかな、オルクス」
『あの言い分ではそのようですね。隣席になった坊ちゃんと友人になりたいのでは?』
言葉の通じない土地に勉強に来たのに、その学校で親しい人がいないのなら、貧相な助手少年でも話し相手に選んだとしてもおかしくはないのかもしれない。
お弁当を食べ、簡単な雑用をしてから約束の場所に行くと、ファリドと似たような見た目の色をした二十代程の青年侍従が茶の席をセッティングしていた。
侍従はモレクというらしく、使用人としてついて来たファリドの年上の友人で、ファリドと同じくルマルディー王国の風土を学びに来たらしい。
それで、テーブルについた流衣が二人はどこの国の人なのかと問うたら、大袈裟に驚かれた。
「え? 見て分かる、ない? シルヴェラント国だヨ」
「そうなんですか」
「アナタは、どこの出身?」
「名前のない小さな島国です」
流衣は堂々と嘘をついた。あとはいつものように、魔法の実験トラブルで飛ばされた話をする。面倒事に巻き込まれない為とはいえ、だんだん慣れてきた気がするが、やはり嘘をついていることで良心は痛む。
「だから、セト先生の、助手?」
ファリドは驚いた顔をしたが、すぐに納得した様子を見せた。
「そうです」
ストロベリージャム入りの黄葉茶を飲みつつ、流衣は頷く。食後にちょうどいい、ほんのりと甘いお茶だ。
「ところで、どうして僕と話したかったんですか?」
流衣の問いに、ファリドはやや眉を寄せた。
「その話し方、分かる。この国の親しい人達は、もう少し、“くだく”……? “柔らかく”? “簡単に”? ええと、話す」
「くだけて話す?」
「そう、それ」
思わず指摘すると、ファリドはうんうんと頷いた。
「シルヴェラントの人、隣人を友として大事にする。席が隣りでも、同じ。もし良いなら、くだいて話す、いい」
「くだけて話す、ですよ。うーん、まあいいですけど」
「それ、くだけて話す、ない」
「分かったよ」
重ねて指摘され、流衣は折れた。望み通り“くだけて話す”と、ファリドは満足げに頷いた。
「故郷では、黒い目は、災いを弾く色といわれてる。隣人が黒目で、オレは運が良い」
「はぁ……」
よく分からないが、シルヴェラント人は迷信深いのだろうか。
「まさかそれで話したかったとか?」
「それもある。でも、さっきのが大きい。それに、ここの貴族は冷たい。シルヴェラントには王はいるけれど、貴族はいない。どうして冷たくされるか分からない。でも、アナタは平民だから、気が楽」
「じゃあ、王様以外はみんな平民なの?」
ファリドは頷き、睡蓮の絵が描かれた白磁のカップを傾けた。
「平民というより、民で、部族。シルヴェラントは砂漠ばかりで、四つの部族がいて、それぞれオアシスを、面倒見る……いや、管理する。王様はその中の一番大きなオアシスにある神殿にいて、皆のために祈って下さっている。争いが起きたら仲裁するのも王様の仕事。この国みたいに、血族でつながってる王様、違う」
流衣が首を傾げると、ファリドは更に続けた。
「王様は、四つの部族から順番に出る。補佐も一つの部族で占めることはしない。あと、王様はトカゲ族の獣人が選ばれるのがしきたり」
流衣はだんだん訳が分からなくなってきた。
「ええーと、つまり、トカゲ族が偉い?」
「違う」
え、違うのか。
「トカゲは故郷では聖なる神の使いなんダ。だから、神に祈るには一番ふさわしい」
「ああ、なるほど」
つまり、貴賎のない土地だが、王様はトカゲ族で、政治をするというより司祭のような位置の人らしい。
「偉いのは、武器を持って勇敢に戦う人。だけど、それと同じくらい魔法使いは尊敬される。だから、オレみたいな国費留学生は、この国に魔法の英知を授かりに来る」
「え、何で?」
「シルヴェラント人は魔法を使えない人が多い。だから魔法の知識がない。この国は、魔法に長けた人が多いから、学ぶのに最適」
そうなのか。外国のことまで詳しくないので、目から鱗が落ちる話ばかりだ。
「助手サン、もし良ければ、隣りの席のよしみで手助けしてくれないか。言葉が変なら、正す、嬉しい」
「それくらいなら構わないよ。じゃあ早速。それを言うなら、“正してくれると嬉しい”だよ」
「分かった。正してくれる、嬉しい。いい?」
真面目に頷いて微妙に間違って言うので、流衣は思わず吹き出した。
ところどころ言葉遣いがおかしいが、大部分は話せているのだから、少し指摘すればすぐに上達しそうだ。きっとかなり頭が良いのだろう。
「正してくれる“と”嬉しい、ね。あと、僕のことも流衣でいいよ。“助手さん”じゃなくて」
ファリドは指摘された文を何度か口の中で呟き、やがて納得すると、次からそう呼ぶと答えた。
「ルイ、さっそくあちこちで取っ掛かりが出来ているようだな。実に頼もしい限りだ」
机に本を積み重ねながら、セトが機嫌良く声をかけてきた。
セトの研究室でプリント整理や床の本整理をしていた流衣が振り向くと、セトが書類を右手で持ち上げながら言う。
「中庭で茶会をしていただろう。見かけたぞ。一年のレヤード家臣三人組といい、留学生といい、果ては悪童サイモンとも知り合うなんて流石だな」
誰のことを指しているかは何となく分かるが、サイモンという下りには否定しておく。
「サイモン君は、ここに来る前から知り合いなだけです。親しいわけじゃないです、そんな恐ろしい……! クレオ君達はたまたまで、ファリド君は隣の席ですよ」
「私の見解では、サイモンが怪しいと思うのだがね。まあ、生徒が例の薬を流通させるなら、だが」
「そうですか……? サイモン君なら、気に食わない相手に薬なんて使わずに、自分でどうにかしそうな気がしますけど……」
有言即実行なだけに、正体を見せずに暗躍する事件の犯人とサイモンでは性質が違う気がした。とはいえ、否定は出来ない。何故ならサイモンは〈悪魔の瞳〉の幹部だからだ。教祖が言っていたように世間を騒がせることが目的なら、騒ぎにならず隠蔽されているとはいえ、ほとんど成功しているといえる。
「ふむ。一理あるな」
セトは顎に手を当て、短く息を吐いた。
「それに、サイモン君絡みで、オードという貴族に目をつけられちゃって……。散々です。出来ることなら関わりたくないです」
切実に言うが、セトの返事はにべもない。
「君は助手なのだから、関わりたくないなら自分で立ち回りなさい。教師と違って、その辺の自由はきく」
「……ですよね」
「まあ君の気持ちは分からなくはない。生徒には公平に接するようにしている私でも、彼は苦手だ。この学校で起きるトラブルの中心には、八割の確率で彼がいるからね……。彼は平民だが、自分より弱い者をけなした目で見るからな。平民を下に見る貴族が、平民に侮辱されたと衝突が起きるわけだよ、全く。面倒だよ本当に!」
大きく嘆息するセトを見ながら、流衣は単純な疑問を覚えた。
「それだけ問題を起こしているのに、退学にならないんですか?」
「ああ。学校内では口喧嘩で済んでいるからね。敷地外のことには学校側はいちいち関与しない。生徒同士のことなら口も出すが、貴族が雇ってけしかけたごろつきと、それを撃退しての騒動まで面倒をみる気はない。あの怠惰な校長が、重い腰を上げて対処する程ではないってわけさ」
セトは頭が痛そうにこめかみに親指を押し当てる。あの校長が……と憎々しげにうなりだす。ゴーストハウスの管理者であるヨーザみたいな反応だ。セトも苦労しているのだろうか。
「ああ、そうだ。ルイ、少し雑用を頼まれてくれないか」
「いいですよ、何ですか?」
「うむ。この本を図書館に返却してきて欲しいのだ。ついでに図書館も見てくるといい」
そう言って、セトはずっしりした分厚い本を三冊、流衣に手渡した。受け取った表紙に手が滑って危うく足元に落としかけ、流衣はしゃがみこんで足に落とすのを回避する。そして抱え直すと、立ち上がった。少し持っているだけなのに手首が痛い。重すぎだろう。
「そういう重い荷物を持つ時は、浮遊の術だよ。中級の魔法だ。そういえばまだ教えていなかったな。明後日の講義はこれでもいいか」
「じゃ、行って決ます!」
ぶつぶつ呟いて次の講義の授業内容について検討を始めるセトに一声かけ、流衣は研究室を後にした。これを持ったまま考えが終わるのを待っているのは無理だ。
『坊ちゃん、今回はわてが魔法をかけて差し上げますよ』
そして人気の無い廊下に出るや、オルクスが浮遊の術を使ってくれたので楽になった。事情を知らない者の前ではただのオウムみたいに大人しいオルクスだ。大人しくするという約束を守ってくれていて嬉しい。
「ありがとう、オルクス。さあ運ばなきゃ」
宙に浮かんでいる本に左手を添えて運びながら、流衣は足を踏み出した。
図書館で本を返却した足で、そのまま図書館内を見学することにした。いい本があったら貸りて行こう。
「広いな……」
正方形の形をした吹き抜けの図書館では、重厚な石造りの中央の床に、屋根のステンドグラスで飾られた採光窓から零れた柔らかい光が落ちている。光が落ちる所にだけ観葉植物が置かれ、影になる周囲に明かりの魔法道具が置かれた一人掛けの閲覧席が並び、四方には本棚が林立していた。二階から四階まで、壁には本棚が埋め込まれ、その前にはテラスのような廊下が張り巡らされている。上の階に行く階段はがっしりした樫材で、焦げ茶色で統一されているインテリアの為に落ち着いた空気を作りだしていた。
「魔法学校なのに、魔法のエレベーターってないんだね……」
階段なのにちょっとがっかりした。四角い板があって、そこに乗ったら魔法陣が光って、それで二階まで行けるなんていうファンタジーな展開にはならないらしい。
『エレベーターって何ですか?』
オルクスが小首を傾げる。そもそもの問題のようだ。
流衣は知らないならいいやと小声で返した。
まだ授業中なので、館内には生徒はほとんど見かけない。いるのは白いマントを着た年上の生徒が数人程度。閲覧席に本の塔を築いて、紙に書きとめたり、頭を抱えて考え込んだりしている。教養科の上に三年ある研究科の生徒だろう。
(えーと、転移や召喚の魔法書は……と)
本棚をぐるりと見回す。魔法書や歴史書、植物や鉱物などの博物誌、物語などの分野に分かれているようだ。
司書の説明だと、助手の閲覧可能区画は二階までとのことだった。魔法書は二階だから、階段を上ってそちらに向かう。
転移魔法はセトが開発した魔法だからか、そんなに冊数はないが、召喚魔法は結構な蔵書があった。比較的新しそうな基礎を纏めた本を一冊引き抜いて目を通す。
(ふーん、アルが前に言ってた召喚魔法の基礎になる物質転移って、昔は召喚魔法に区別されてたのか)
物の移動自体は昔から魔法が存在していたらしいが、人間や動物を移動させる魔法はなかった。生きているもの相手だと、魔法が作用しないか、移動の負荷に耐えかねて内側から爆発するらしい。
流衣は顔をしかめた。どうか試した人間がいませんように。
物質転移は、目印から目印へ物を移動させる魔法で、その際に光に溶けるような状態を見せるので、恐らく魔力で一度分解したものを再構築して呼び出しているのだろうというのが研究者の考えだ。
では今の転移魔法はどういうものかというと、風系統と記憶読み取りと伝達の術を組み合わせたもので、記憶にある映像を風の精霊に魔法で伝達し、それによって風の精霊が該当の場所まで送り届けるという、いわば精霊の補助により成り立つ魔法らしい。記憶があいまいだと妙な場所に転移される欠点があり、たいていの者は目印を用意してそこを思い浮かべるようだ。だからか、「風運びの術」と呼ぶ者もいるらしい。
(だから、一度自分の目で見た土地じゃないと転移出来ないのかな……)
理屈はなんとなく理解した。
(じゃあ、転移魔法で地球に帰ろうと思ったら、地球の場所を想像して、そこまで風の精霊に運んでもらうってこと? そもそも地球に精霊っているの?)
先行きが不安になってきた。
アルモニカが作っていた、遠距離転移を補助する魔法陣は、魔力の補充と目印なんだろうとは思うが……。セトが神の園に残る召喚魔法陣を利用して、遠距離転移に組み込めないか研究しているというのがよく分からない。
今度は召喚関係の本を見る。概略を黙々と読む。
(ええと、召喚は、使い魔を呼ぶ魔法のこと、か。じゃあ勇者召喚は?)
勇者召喚について書かれた項目を見つけ、そこを見る。
(神様が勇者を召喚するのは、勇者を召喚する為のある条件があって、それに見合った者を呼び寄せる形になっているのだろう、か。推測か。そうだよね、神様のしてることが理解できる人間がいるとは思えないし……)
だって神様だよ。人知を越えた存在だよ。あっさり分かるような単純なことをするだろうか。
(じゃあ何でレシアンテ様は僕に神の園を辿れなんて……)
召喚した対象しか帰せないってツィールカという女神は言っていた。だからおまけの自分は帰れないわけだ。
だが、それから分かるのは、条件指定があるとして、それで返還も出来るということだ。
(うー……ん?)
勇者の召喚をした土地である神の園を辿れということは、そこにある魔法陣が関係してくるのだろう。
(つまり、魔法陣は召喚と返還のどっちも使えるものってこと? 地球から来た勇者が使ってた魔法陣を見つけて、それを使えば、似たような方法で帰れる……かも)
違う場所なら無意味そうな気がする。ただの勘だが。
流衣は溜息とともに本を閉じる。
(どっちにしろ、セトさんの研究の閲覧は必要かな。それに召喚と転移の魔法の知識もないと帰れなさそうだ)
結局は、そこだ。
流衣は転移と召喚の基礎が書かれた本の中で、分かりやすそうな物を選ぶと、貸りるべく階段を下り始めた。
(それと、過去に召喚された勇者の記録も……あればいいけど)
貸出のカウンターに向かう前に、一階の歴史書コーナーにも立ち寄ることにした。
記録に残ってる分で、勇者が召喚されたのは十回。今回、川瀬達也が召喚されたことで十一回になる。その一回分は除いた十回のうち、ルマルディー王国建国後が四回だ。
魔王の出現の地はラーザイナ・フィールドのどこと決まっているわけではないが、何故かルマルディー王国の北部に多いようだ。
そして、魔王は小鳥や大木が意思を持ったものがほとんどで、人の姿をしていたという記録は三百年前に出現した一度だけだ。驚いたことに両親のいる人間がたまたま魔王になったとか。どういう理由で魔王として宿るのかは不明だが、ラーザイナ・フィールドという世界に満ちた負の要素が形を成してあらわれるというのが定説らしい。
(えーと……伝説が書いてあるな)
流衣は歴史書に視線を落とす。
神殿が管理している託宣の言葉を綴った聖典の記録では、初めのうちは神達が地上に光臨し、魔王を浄化していた。しかし一度、強い力を持つ魔王が生まれて激戦となり、その影響で大地が荒廃してしまった。激しい戦いに疲れた神達は、休む為に天界にいることが多くなり、地上に光臨する回数が減っていった。
光臨する代わりに、神の声を聞くにふさわしい純真なる巫女を選び、託宣を与え、神達が浄化する代理として勇者を呼び出し、聖具を与えた。
(記録がなくても召喚された勇者がいるって分かるのは、聖具が代々伝えられている為か。始まりの勇者は異界の住人だと伝えられている、ね。異界って地球なのかな。他の世界かなあ。地球だったら、この人も可哀想だな。でも、もしその人が古代人だったらびっくりしただろうなあ)
ただし、始まりの勇者は召喚されたのではなく迷いこんできた異邦人だったらしいが。
神様と勇者と魔王の歴史はここまでにして、勇者が現れた土地について探す。封印の形式こそ、大昔から聖地としてあった場所に六大神殿が建っているだけで変わらないが、託宣の巫女が坐するカザニフで勇者召喚が行われるようになったのは、ルマルディー王国建国後かららしい。それより前は、と。流衣は、まるで聖地のように輝かしく記された土地の名のうち、異界から召喚された勇者の現れた土地を選んで読む。
(青の山脈の中の洞窟と、今のセナエ王国があるブロウサ森林地帯の遺跡と、今のルマルディー王国南西部の、海岸洞窟?)
流衣は三回程繰り返して読み、急に不憫になった。
(か、可哀想! 急に呼び出されて、最初に見るのが洞窟!)
だが、笑えない。
流衣もこちらの世界に来た時は、視界が変わったと思って気付いたら、洞窟内にある遺跡にいたのだから。なるほど、黄昏の遺跡のような場所か。黄昏の遺跡は、召喚に使われた聖地である「神の園」ではなく、単なる聖地「神の庭」だそうだが。単なるというのも奇妙だけれど。
洞窟や遺跡なので、詳しい地名までは分からないが、そこまで行けば何か手掛かりがあるのかもしれない。
(あ、頭痛くなってきた……)
セトはこんな厄介な場所に残る魔法陣を研究しているのか。あのがっしりとした体躯は魔法陣探しの旅でもして身につけたのかもしれない。どこか肝が据わっているし、実はかなりの強者だったりして。
(セトさんの研究で、何か分かればいいんだけどなあ)
これで駄目なら、神の園巡りだ。考えるだけでへこんでくる。
それには先に、魔力増幅剤についての情報集めからしなくては。
あまりにも続きを書けなくてへこんでました。
説明多い上に分かりにくくてすんません。
あと章題がいいの思い付かなかったので、もしかしたら後で変更するかもしれません。