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地球で見たいもの

登場人物


ブレイズ [BLAZE]

あだ名 イズ


インペリアル [IMPERIAL]

あだ名 ウミネコ

この世界は平和だ。

人々が助け合っている。

本当に理想郷のような世界だ。

いつも通りに動いて働いて、勉強して…。

そんな世界が何故か俺は好きになれなかった。

俺は昔から自然が好きだった。


『いつか地球に行って、教科書で見たような壮大な大自然が見たい。』


これが俺の夢であり、目標だ。

そのせいで、”今の時代“では気味悪がられることも多いのだが。

自然とか、そういうのは古臭いらしいので好むものはもの好きしかいないらしい。

俺は別に他人の趣味を他人がどうこう言う筋合いなどないと思うのだが。

でもそれが”常識“という概念の一つに当てはまるのだとすれば、常識はクソだと思う。

常識は人の自由を妨害するものであるのは確か。

常識が絶対に駄目ってことではない。

そうなれば、この世は犯罪だらけになるだろうからな。


いつもこんなしょうもないことを考えているのだが、考えているうちに分からなくなってくる。

言葉とは考えるほど謎が深まるのが面白い。

考えても考えても考えきれないのだ。

…これでも一応、変人だという自覚はある。


「また、変なこと考えてるんでしょ?」


ぼーっと窓から外を眺めていた俺は、声が聞こえた後ろを向く。


「まぁ、いつも通りだze?それで、何か用があるのかインペリアル。」


声をかけてきた女子…インペリアルは俺の幼馴染で一緒に地球へ行こうと約束している唯一の人物だ。

コイツは自然…というより、海に興味があるらしい。


「用は別にない。ブレイズが寂しそうにしてたから声かけてみただけー。」


隣にやって来て、2人で窓から外を眺める。

外、と言ってもコロニーの中だ。

俺達はまだ17歳の学生だ。

今は2人揃ってバイトをしたりして金を稼いでいる。

いつか地球に行くために。


「私、地球にある海で大っきい生き物が見たいんだ。人よりも何十倍も大っきい生き物。

あと透明な生き物もいるらしいからそれも!」


インペリアルは海のことを話してる時が1番生き生きしていて楽しそうだ。

それこそがインペリアルの生き甲斐っていうヤツなんだろうなと思った。


「ブレイズは?」


「何が?」


考え事をしていて聞いてなかった。

いつものことのようにインペリアルは聞き流してもう一度言う。


「地球で何が見たいとか、何がやりたいとか、なんかあるんじゃないの?」


なるほど、そう言う類か。


「ただ、普通すぎるのが嫌なだけだze?

全人類よりも膨大な世界を見てみたいと思っただけで…。」


言っていて思った、見たいという気持ちはあるが、理由が分からない。無いかもしれない。

何もかもがどうでもよくなってほしい、ただそう思っただけで。


「ふーん…。

まぁ、それも悪くないね。」


「なんだ、揶揄っていたのか?」


「べっつにぃ?」


予想だが、心を読まれていた気がする。

こういうところで女って、なんか鋭くて。

別に差別とか、否定している訳じゃない。

得体の知れないものだ。


「人間とは、不思議なものだze…。」


それから数分、2人で窓から外を眺めて、インペリアルは口を開く。


「それで、何割くらい貯まったの?」


例の地球へ行くための費用のことだ。


「あと2割ってところだな。2ヶ月で予備も貯めておきたいze。そっちは?」


「今月の給料日で丁度。2ヶ月余裕あるなら私も予備で貯めるけど。余裕ある方が良いもんね。」


割と給料の良いバイトについてはいるが、それでも目標の費用まではざっと2年はかかった。

どのみち親には反対されるのが目に見えている。

気づかれる前にさっさと高校中退して地球に行ってしまいたい。

インペリアルについてもそれは同様だ。


「シャトルでアメリカ行って〜…海行って〜…

ぐらんどきゃにおん?ってところ見たいし〜…ハワイも行ってみたい!

海って青いんでしょ?空って黒じゃなくて青いんでしょ?楽しみだなぁ〜。あと月も綺麗だとか!本物の重力ってやっぱりコロニーと違うのかな!?地球って宇宙よりあったかいらしいし!」


「結局地球に移住するようなもんだから、向こうでも働かねぇと何ねぇけどよ…。

多分、楽しいほど大変だze?」


予定では、地球で二人暮らしして、働くつもりだ。

もっともまだ移住先は決まっていないが。


「それは行ってから考えるし、もう決めたことでしょ?承知済みでしょ?」


「まぁそうなんだが…。」


人のことは言えないのだが、インペリアルは異常なほど地球への執着心が強い。

それも海にだ。

幼い頃に写真で見て好きになったのだろうが、それにしては異質な気がする。


「絶対、いま良くないこと考えてたでしょ!

顔に出てるから分かるんだよね!」


うん、やっぱり女って怖いze。

普通に怖すぎるze。

もう勘が良すぎる。


「ほらやっぱり、悪口に近いこと思ってるでしょ!」


やっぱり心の声聞こえてるんじゃねぇか?



△▼△▼△



本当は地球に行くのに軌道エレベーターって手もあったのだが、空の旅も楽しみたいってことでシャトルで行くことになった。

料金はあまり変わらないし、ほとんどの人が軌道エレベーターを好むため、シャトルに乗る人は少なく全席個室で割と良い。


ちなみに家は、はっきり言って家出して来た。

手紙は置いた。

家に帰るつもりももうない。

親孝行とは言えないだろうが、少しばかり仕送りはした。これで許せとは流石に言わない。

少しばかりの感謝だ。

今まで育ててくれた分の感謝はしてもしきれないのだが。


「んまー!これ美味しいよ、ブレイズ!」


そう言いながら、本物の苺が使われているタルトを頬張る。

フルーツ類はコロニーでの栽培がまだ難しく、高級なものなので2人はまだ人生で一、二回程しか食べたことがなかった。


「地球でならフルーツ沢山食べられると思うze。」


ブレイズの言葉を無視してパクパクと苺タルトを頬張るインペリアル。

そんなインペリアルを呆れて見ながら、まだ口を付けていないチョコレートケーキを眺める。

ケーキ類はそうよく食べるものではない。

チョコレートはカカオから出来るというが、カカオ自体、地球でももう珍しくなっているそうだ。


「それ、食べないの?」


苺タルトを食べ終わったインペリアルが物欲しそうにチョコレートケーキを眺めている。


「食べるが…一口?」


あー!と口を開くので、フォークで一口分のチョコレートケーキを切って乗せて、インペリアルの口に運ぶ。

それをパクッと、インペリアルは食べた。


「んー!美味しい!」


「美味しくなけりゃ、頼まねぇし食べないze。」


面白くもない正論を適当にぶつけて、ブレイズもチョコレートケーキを頬張る。

確かに美味しい。


「ブレイズって割と気にしない方なんだ。

いや、これは私をそう見てないって意味だな…?」


「?」


「間接キス気にしないんだなって。」


いきなり何を言い出したかと思えば…。


「インペリアルもそこまで気にしてないだろ。

それに、俺にとってインペリアルは妹って感じだze?」


幼少期からずっと一緒だった幼馴染だ。

そういう(恋愛)感情“は抱こうとしても抱けねぇって感じっつうか…。


「俺にとってはお前はまだまだお子ちゃまなんだろうze。」


「悪口すぎて引くわ〜…。」


それは俺も違う意味で引いてるからお互い様だ。

その後、2人でスイーツを注文して食べまくったり、軽く冗談を言い合いながら過ごしていると、シートベルト着用マークが表示された。

着用マークが表示されたということは、大気圏突入の反動で飛ばされない為…つまりもうすぐで地球に着くのだ。

インペリアルは颯爽とシートベルトを着用すると、窓辺に張り付く。

負けじとブレイズは後ろから少しばかり身を乗り出して覗き込む。


「ねぇみて、ブレイズ!凄く蒼い!」


返る反応は無い。

ブレイズとインペリアルはその後、目を食い入るように地球を眺めていた。


数分後、全ての窓にシャッターがかかった。

身を乗り出していた体を元に戻した。

途端に振動が椅子越しに伝わる。

大気圏に突入したのだ。

数分しか眺める事が叶わなかったが、それでもブレイズとインペリアルはとても満足だった。


「ずっと地球でも良いなって思ってたけど、たまには宇宙旅行しに行くのも悪く無いかもしれないね。」


「分かってるze。またいつか、あの景色を見にな…。」


少しの間の振動を堪能し、2人は地球の地上へ降りていくのだった。

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