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月夜譚 【No.301~】

後夜祭 【月夜譚No.380】

作者: 夏月七葉

 緊張で手が震える。それを抑えようと両手を握り締めたら、余計に震えているのが判って逆効果になってしまった。

 背後を振り返ると、生徒が数名、彼女と同じような顔をして佇んでいる。

 ステージの方でわっと歓声が上がって、はっと正面に向き直る。袖から見えるステージ上では大粒の涙を流している女子生徒と真っ赤な顔をした男子生徒が寄り添っていた。

 文化祭最終日。その締め括りとなる後夜祭で、毎年恒例のイベントがあった。希望者を募り、全校生徒の前で好きな人に告白をするというものである。

 今日、彼女はここにいるつもりはなかった。しかし、少し前に気になる男子生徒が他の女子生徒と楽しそうに話しているのを見てしまい、このままでは駄目だと自分を奮い立たせてここに立っている。

 ここまできたら、逃げ場はない。だが、緊張と衆目と悪い結果の妄想に足が竦む。

(……何の為にここにいるの)

 深呼吸をし、どうにか逃げたい気持ちを抑え込む。

「――よし」

 名前を呼ばれ、足を踏み出す。

 照明に照らされたステージは、とても眩しかった。

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