第04話 魔法少女ものがたり論
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二人目のヒロイン、登場です。
妹、リリーが魔法少女で俺達家族を洗脳していたという衝撃の事実が発覚した、翌日。
不思議ノ大学『ふでん研』で、俺は同期に事の次第を話し伝えた。
「なるほど」
同期……歴史学科一年調部つむぎは、メガネをくいっと持ち上げるインテリキャラお約束のポーズを取った後。
「確かに、それは稀人族支配型の魔法少女に違いないな」
もう一方の腕で彼女自慢のバストをぐっと持ち上げながら、真剣に頷いてみせた。
『不思議ノ市伝承研究室』――略して『ふでん研』。
ここは、俺こと御伽守陸人と調部つむぎの二人で運営している研究サークル。
いかにもお堅い研究部のような名で、よくよく見れば、ファンシーなグッズやフリフリ衣装の女の子のイラスト本やら、似つかわしくない物がそこかしこに紛れ込む謎空間。
「……実にワンダフル!」
そんな『ふでん研』の研究対象は、不思議ノ市特有の伝承群“女性活躍伝承”と、現代のエンタメジャンル“魔法少女モノ”。
これら二つを掛け合わせ、その先にある真実を探し続けている。
それ即ち――。
「この私、天・才! 調部つむぎの仮説通り……魔法少女は実在した!!」
――何を隠そう“不思議ノ市に存在する(だろう)魔法少女の実態の探求”である!
※ ※ ※
「魔法少女とは、不思議な力を持った女の子の総称である」
ホワイトボードに魔法少女・不思議と書きながら、つむぎが解説し始める。
不思議ノ市と魔法少女に関する知識量に関して、俺の知る限り彼女以上の存在はいない。
彼女が語る話には、聞き逃せない価値がある。
「予言の力を持つ邪馬台国の卑弥呼や、独自の舞で人々を魅了した出雲阿国。彼女達のように異様な出自・才覚、特異な要素を持つ女性を特別視する歴史が日ノ本にはある。その中で生まれたものの一つがこの“魔法少女”という概念だ」
つむぎがホワイトボードを叩くと、その衝撃で彼女の癖っ毛な紫色の長髪と豊かな双房が揺れる……ワザとだ。
「魔法少女といえば、現代では不思議な力で悪と戦う女の子というイメージが一般化しているかもしれない。だが、元来の魔法少女は多種多様な力や役割を持った不思議な存在だった」
つむぎが腕を組む。胸を持ち上げ強調するように……ワザとだ。
「純然たる魔法を扱う異なる世界の住人であったり、先祖伝来の忍術や錬金術などを用いる技師、超科学に由来するオーバーテクノロジーを魔法と称して操る戦士だったり、挙げだしていけば枚挙に暇がない」
つむぎが頭を振る。ウェービーロングが大きく揺れて、髪色に合わせたのだろうラベンダーの香りが鼻をくすぐる……これもワザとだ。
彼女はいつもこうやって、あの手この手で俺の事をからかってくる。口元がニヤついてるのがその証拠だ。
とても困る。それが嫌じゃないもんだから、困る。
せっかく有意義な解説をしてくれてるんだから、聞くのに集中させて欲しいなぁ!
「ふふんっ。それら魔法少女の持つ不思議な力は、確かに彼女達を表す上で欠かせない要素ではあるが、それは彼女達の本質ではない。この意味が分かるかい、助手くん?」
椅子に座った俺のそばまで来て、鼻先が触れそうなくらい顔を寄せてくる。というかほぼほぼ抱き着くような格好で、彼女の大きな双丘が思いっきり俺の胸へと押し当てられている。
俺は努めて平静を装って、こちらを楽しげに見つめるクリアパープルの瞳に向かい合い、口を開いた。
「……能力を基準に魔法少女を語ろうとすると、評論がただの強さ談議になるから、だよな?」
「その通り! 能力ベースで彼女達を語ると、魔法で何でもできる子は戦わないがとても強い、なんて、戦いを忌避するような子をさも武闘派のごとく扱う事にもなってしまう! 『アニーちゃん』が『アニー・ザ・マジシャン』になるポテンシャルを持っているから同格を超えて最強と語るようなものさ!」
「あれはあれで好きだがな」
「私も! だがあれはあくまでスターシステム、本質的にも魔法少女分類的にも別の存在だと言わせてもらおう! アニーちゃんは言うほどバトルはしないんだ。言うほどには、ね!」
俺の答えに満足してか、つむぎが距離を取り、にんまりとした笑顔を浮かべた。
キランと輝く彼女のメガネは、オシャレ用の伊達である。
「さて、先ほども語ったが魔法少女の在り方には多様性がある。それらに対応するためには、能力をベースにした分類ではカバーしきれない! そ・こ・で・だ!」
言いながら、つむぎがテーブルの上で束になってる資料を叩く。
「我々『ふでん研』は、多様な魔法少女という存在を能力による分類よりもより分類し易い指標を使って、彼女ら個人個人を対象に仕分けられるようにした!」
続く言葉は、資料の最上部にもデカデカと記されている。
「その名も――“魔法少女ものがたり論”!! ワンダフォーー!!」
物語がひらがな表記なのは、つむぎの趣味だ。
そしてワンダフルは、彼女の口癖だ。
調部つむぎは、その天才的な知力と大人びた所作とは裏腹に、どこか幼く純粋さのようなものも持ち合わせた女性だった。
「はっはっは! ここまではいいかな? 助手くん!」
テンションが上がってノッているのか、幼子のように無邪気な笑顔ではしゃぐつむぎ。
これもギャップって奴だろうか。俺は彼女のこういった大人っぽさと子供っぽさが共存する姿が、すごく魅力的に思えた。
大学の同期で、魔法少女に強い関心を持った同志。
彼女とはまだ2ヶ月くらいしか交流を持ってないが、俺のこれまでの交友関係で最も深い理解を示してくれて、そして最も距離の近い人物だった。
※ ※ ※
「さぁ助手くん、続きといこう!」
魔法少女研究家、調部つむぎの解説はなおも続く。
「我々が提唱する“魔法少女ものがたり論”。その名の通り、魔法少女と物語を扱うワケだが……なぜ“魔法少女”と“物語”なのか? 答えられるね?」
「ああ。魔法少女と物語には切っても切れない関係性があるから、だな」
「ワンダフル! その通り!」
祈るように重ねた手をぶんぶんと左右に振り、つむぎが喜びを表現する。
腕が振られた分彼女の一部もゆさゆさ揺れるが、これは本人も意識してなさそうだ。無邪気な笑顔が眩しい。
「魔法少女は超常の存在、我々の常識では測れない位置に立つ存在だ。そんな彼女達が我々の世界で何かをすれば、それ自体が大きな意味を持つ事になる……即ち、物語の創造だ」
俺達の世界に不思議な何かが混ざりこむ。関わる。
その結果生まれるあれこれを、調部つむぎは物語と定義した。
実際、魔法なんてものがこの世に存在するなら、ただの日常だって物語になる。
世の魔法少女モノにも、そんな話がいくらでもあるのがその証拠だ。
「彼女達の持つ不思議な力との向き合い方、使い方、果ては力に関わる彼女達の振る舞いのすべてが! 物語となるパワーを持っている!! ゆえに魔法少女と物語は切っても切れない関係にあると言え、ひいてはそこに働く力の向きこそが、正しく彼女達を分類する基準となり得るんだ! 即ち、物語の流れ、ストーリー!」
瞳を輝かせ、両手の平を天井へ突き上げて、つむぎが謳う。
「特にこの町、不思議ノ市には現代にも観測される数多の不思議と“女性活躍伝承”が残されている! それらは60年以上の歴史を持つ創作ジャンル“魔法少女モノ”との類似点を数多く持っており、これは現実の出来事と創作がリンクしている部分がある事の証左だ! そこに“確かに不思議はある”! ゆえに私は、この町には複数の魔法少女が存在する、あるいはしていたと予想し、そしてその上でこう考えた。この町に……今も魔法少女は実在するとっ!」
左手で片目を隠し、右手でこちらを指差し、白衣をなびかせ高らかに。
「そしてそれは今日、真実だったと明かされた! キミの妹、リリーくんの存在によって!」
熱弁をふるうつむぎの息は荒い。
歓喜と興奮が入り混じり、彼女の胸は何度も揺れていた。
「さぁ、対策を取ろう! キミが向き合わんとする魔法少女の物語に!」
愛好家程度の俺とは比べ物にならない、真の探究者。
そんな姿に、俺は尊敬と憧れと……胸の奥から湧き上がる熱い気持ちを懐くのだった。
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〔TIPS〕
※まほうつかいアニー……1966年作品。魔法の国からやってきた姫であるアニーが、人間界で暮らしながら様々な経験を積んでいくヒューマンドラマ。笑いあり涙ありの、日ノ本における魔法少女モノアニメの記念すべき第一作目であり、数回にわたってリメイクもされた人気作である。
※ビックバンロボ~地球が自転をやめたとき~……1992年作品。SFロボットモノ。アニー・ザ・マジシャンは原案を同原作者の作品、まほうつかいアニーのアニーから引用しており、見た目においては瓜二つ、能力に関しても高い万能性を誇り、バトルでも活躍した。最終的に心肺停止した地球を再起動させる際に敵対していた主人公に協力しており、その能力の高さを最後までいかんなく発揮する。
つむぎ「ちなみに私は文系だよ。タイプ的には民俗学者等に類するタイプだね。白衣を着ているのは……趣味さ!」
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