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第13話 ご近所さんも魔法少女だった件

いつも応援ありがとうございます。


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ご近所さん、バレる。

 みはりちゃんから忠告を受けた、その日の晩。


「ふぅー……」


 俺は言われた通りに家にこもって、自室で一人、窓を開けて外を眺めていた。

 星の光が遠いのか、今日の夜空はいつもより暗い。



『むーにゃむーにゃ。うえへへへ、おにいさまぁ~~』


 ついさっきまでリリーと一緒にリビングでアニメを見ていたが、健康優良児の妹様は、無事夢の国へと旅立ってゆかれた。

 なんというか、ここ数日で彼女の甘えっぷりが加速している気がする。

 アニメを見ているその間、腕に抱き着いて頬擦りしたり、隙を見て膝に頭をのっけてゴロゴロしたりとやりたい放題である。


(でも、遠ざけようとすると途端に泣きそうな顔になるんだよなぁ。……普段はちゃんと淑女してるから、今くらいはそうさせて欲しいって。それを言われると、お兄ちゃんは弱い)


 そんな、兄妹の正しい距離感についてぼーっと考えていた、その時だった。



「……あれ?」


 2階の窓から見下ろした先。

 家のそばのT字路へ、小さな人影が駆けてきた。


「ん?」


 それはT字路の真ん中で一度立ち止まり、何かに気づくと慌てた様子でぴゅーっと元気に駆け去っていく。

 その後ろ、小さな小さな影一つ、人影を追うように駆け抜けていった。



「………」


 人影のやってきた方角。そして人影のサイズ感。

 そして何より、ほんのわずか、こちらにチカッと光を届けた……何かの装飾品。


 それらいくつかのヒントが俺に、一人の人物を思い出させる。


「今のって……みはりちゃん、だよな?」


 今朝がた話したご近所さん。

 ただ今の時刻午後11時。


 この時間、ベッドタウンな町の明かりはほぼほぼ消えて眠ってる。



「……望遠鏡、持ってなかったよな」


 そこを駆けてく多分手ぶらの小学生。

 最寄りのコンビニは、逆方向。


「………」


 忠告は、受けた。

 けれど、これはどう考えても……ほっとけない。



「……よし」


 決めたとなれば即行動!

 俺は40秒で支度して、リリーを起こさないように気をつけながら、家を出るのだった。



      ※      ※      ※



 夜の町を頼りない星明かりを味方に駆けていく。


(こっちは……自然公園の方か?)


 目的地になるような場所を予想して、ひとまずそこを目標に移動する。


「あ、確かこっちは……」


 そこでふと思い出したのは、朝のニュース。



『ここ数日、街路樹の倒壊が相次ぎ、近隣の――……』

(そうだ。この辺はここ数日で、謎の倒木騒ぎが起こってる場所……)


 思い出した途端、胸騒ぎがし始める。

 この手のニュースを、あの真面目でいい子なみはりちゃんが聞き逃しているはずはない。


 だとしたらなんで……?



「!?」


 刹那。

 感じたのは何かを踏み越えたような感覚と、耳をつんざく大きな音。


 ドドーンッ!


「くぅっ!」


 それは、何か大きな物同士の衝突音。

 そして続く、大きな何かが派手に倒れるような音だった。


「今の、は……!」


 音がした方は、自然公園の敷地内か!



「くっ!」


 自然とそちらへ足を向け、全力疾走を開始する。

 胸騒ぎが、嫌な予感が、止まらない!


(危ない事したらダメって……言ったよな、俺!)


 あの音が鳴った場所に、みはりちゃんがいる。

 そんな確信が、どうしてだかあった。


 そして――。



(――いたっ!)


 そこに、確かに彼女はいた。


「……なっ!?」


 大池のそばのロケーション、石畳を敷いた広い空間で。

 小さな小さなみはりちゃんが……大きな大きな雄牛の化け物と、相対していた。


 秋の夜風が吹いて、彼女の発色強めの茶色い髪を揺らしていた。



「ブルルルルゥ……」


 立派な二本の角を構えた、闘牛種だろう巨大な雄牛が唸りをあげる。

 興奮しているのかしきりに地面を踏み鳴らせば、踏まれた石畳がひび割れて。


「ブルルルンモォォ~~~~~~~~~~!!」

「!?」


 猛々しく吠え声を上げれば、それは辺りに植えられた木々を大きく揺さぶった。



(ヤバい、あれはヤバい!)


 一目見てあれがとてつもなく危険だと直感する。


(何がヤバいって、見た目がヤバい!)


 バイソンもかくやという大きな雄牛は、その力強いビジュアルに反して……半透明だった。

 まるで身の内に銀河を取り込んでいるかのように細かな光が青白く輝いて、だからこそその姿は暗闇の中でもクッキリと見える。


 つまりは異常。普通ではない存在というワケで。



「みは……!?」


 そんなのと相対しているみはりちゃんが心配……って、目線を向けたところで。


(杖!?)


 彼女がその手に、およそ普通ではない物を持っているのを目の当たりにした。



「っ!」


 雄牛の激しい咆哮を、杖を支えに懸命に堪える私服姿のみはりちゃん。

 その手に握る杖の形は、羊飼いが持つような、先が湾曲し鐘が取り付けられた牧杖(クルーク)


 けれどもそのデザインは、もっと複雑で、煌びやかで。

 まるで――。



「負け、ない……!」


 ――魔法の杖、みたいだった。



「みはりー!」

(何か出てきた!? ……あれは!)


 みはりちゃんのすぐそばに、一匹の猫が飛んでくる。

 それは朝にも見た、胸に綺麗な装飾のついた首輪をした黒猫だった。


 ってか、今、あの猫しゃべってなかったか!?



「ジョバンニ!」

「間違いないよ、みはり。あれは、牡牛座(タウラス)星輝石(ゾディアックストーン)だ!」


 しゃべったぁーーーーーーーー!!!


「あいつの体当たり、星守の杖(ステラワンド)の守りの加護程度じゃ耐えられない! あのパワーで、町の街路樹を薙ぎ倒してたんだ!」

「やっぱり! だったら……ここでぜぇ~ったい、止めないと!」


 しかもみはりちゃんと会話してるーーーーーー!?!?



(これは、マジか……!?)


 今この瞬間にも俺は目を疑ってるが、五感に伝わるすべての情報が、俺にそうだと告げている。


「みはりちゃん……って」


 4年の長きに付き合いのある、ご近所さん。

 そこのかわいいお嬢さん、星宮みはりちゃん。



「来るよぉ、みはりー!」

「うんっ!」

「ブモォォォ~~~~~~~~ッッ!!!」



 彼女も、また――魔法少女だった。



      ※      ※      ※



「ブモォォォ!!」

「来た! みはり!!」

「う、わぁーーーっ!!!」


 雄牛の突進を、みはりちゃん達は大きく跳ねて回避する。

 元々運動神経抜群なみはりちゃんは、巨体が通った後の圧にも上手にバランスをとって身構える。


 直後、左手に杖を持ち替え、右手に綺麗な宝石を取り出して。

 澄んだブルーグレーの瞳で、真っ直ぐに前を見て。



「星の力を秘めし輝石よ! 我が導きに従い、その力を解き放て! ――“解放(ルシス)”!」



 淀みない詠唱と共に、宝石を投げる!

 宙を舞う宝石は、杖の先の鐘に触れると、輝きとともに取り込まれ。


「お願い、力を貸して――山羊座(カプリコーン)!!」


 みはりちゃんの願いに応え、杖の先から雄牛と同じ半透明の山羊を世界に解き放つ!


「――――ッッ!!」


 緑白に輝く山羊がその身を震わせると、周囲に鐘の音が鳴る。

 それらはいくつもいくつも反響し、次々と音を重ねて……重ね、て……。



(あ、れ……?)


 瞬間。

 突如として全身を包み込む倦怠感。

 それはそのまま眠気へと変わり、足元をおぼつかなくさせて。


(これ、や、ば……)


 鐘の音が心地いい。

 響き渡るそれは眠りに誘う優しい音色で。


「ぶ、もっ」

「やった、効いてるみたいだよ。みはり!」

「お願い、牛さん! そのまま大人しくなって!」

「ぶ、もぉ……」


 それは、遠目に見える雄牛も同じように――。



(――いや、違う!!)


 直感が叫んだ。

 次の瞬間には全力で地面を蹴り、みはりちゃんに向かって駆け寄り飛び掛かる。


「みはりちゃん!!」

「えっ? きゃあ!!」


 抱きかかえて、その勢いのまま地面を転がる。


 直後。



「ブモォォーーーーーーーーーー!!!」


 全身を揺さぶりながら、無理矢理に突撃した雄牛が、直前までみはりちゃんが立っていた場所を駆け抜けていった。



「み、みはりー!」


 少し離れたところから、例の黒猫の声がする。

 そして今、地面を転がり、俺の腕の中。


「……陸人、さん?」


 みはりちゃんが、キョトンとした目で俺を見ていた。

ジャジャッ、チャララチャラララッ、チャッチャッチャチャッチャッ(アイキャッチ)


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