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第12話 ご近所さんの不思議

いつも応援ありがとうございます。


感想、高評価、いつでもお待ちしています! お気軽にどうぞ!

読んでくださるだけでも、とっても嬉しいです!


おや、ご近所さんの様子が……?

 月曜日、早朝。

 夏の暑さがまだ残っているといっても、10月の朝ともなればだいぶん過ごしやすい。


「ハッ、ハッ……」


 行き交う人もそういない時間。

 俺は一人、走っていた。



「ハッ、ハッ……」


 体幹を意識しながら、足の運び、腕の振りを均一に。

 呼吸もなるべく一定になるよう、そして無理をしない程度のじっくりとしたランニング。


(半年ぶりともなると、やっぱり本調子とはいかないか)


 習慣付けていた頃に比べて動かない体に鞭打って、再びこの身に刻み込む。



(できるさ。魔法少女の助けになれるようにって、これまでやってきた事だろ?)


 まずは体に思い出させる。

 夢じゃなく、彼女達と出会えた今だから、こそ。


(やるぞ。今こそ俺が望んできた、彼女達にとって必要とされる、誰かになれるんだから!)


 出会えた縁に適うよう、己を磨き、鍛え上げる!!



「うおおおおお! まだまだ、まだまだ、まだまだーーーー!!」


 モチベーションはこれまでにないくらいマキシマム越え!

 動きはそのまま速度を上げて、俺はご町内を駆け回る!


「おや、たぁみねいたぁが走っとるわい」

「あれは御伽守さんところのお子さんですよ、お爺さん」

「あ、おはようございまーす!」


 その道中、吉田さんご夫妻と久々のご挨拶をしたり。


「ない、ない。ど、どうしよう!?」

「大丈夫かい?」

「ひゃわっ! あのあの、えっと!」


 愛用のコンパクトを失くして困っていた女の子の探し物を手伝ったり。


「コケコッコー!(よう兄ちゃん。朝から精が出るな!)」

「あ、お前! また逃げ出したな!?」

「コケッ!(しまった!)」


 畑を持ってる大木さん家から脱走した鶏をお届けしたり。



「ふぅー、やっとゴールだ……ん?」


 朝からイベント目白押しな時間を過ごしたら。


「あれは……おーい、みはりちゃーん!」

「え、陸人さん?!」


 家の前。

 登校するにはまだ早い時間にもかかわらず、ご近所さんの星宮(ほしみや)みはりちゃんと出会った。



      ※      ※      ※



 遠目に見た時、みはりちゃんは俺の家をポーっと見上げているように見えた。

 だからわかりやすく声をかけて駆け寄ったんだけど。


「ええっ、あれ!? なん……ええ!?」


 彼女にとっては予想外だったらしく、ピッグテールをぴょっこぴょこ、思った以上にワタワタさせてしまったみたいだった。



「あのあのっ、陸人さんはどうして?」

「ん? ああ、またランニング再開したんだ。ここしばらくやってなかったけどね」

「なる、ほど……そうだったんですね。……そっか。陸人さんの姿、また朝に見れるんだ」


 何やらごにょごにょ言いつつも、落ち着きを取り戻したみはりちゃんに、今度は俺から疑問を投げかける。


「それで、みはりちゃんはどうしてこんな時間に出歩いてるんだ? 制服までバッチリ着込んで」

「あうっ! そ、それは……」


 ただ今の時刻、午前6時。

 我が家のマジカルプリンセスシスター・リリーは、未だ夢の中だろう時間である。


「えっと、それはぁ……」


 答えづらい問いだったのか、みはりちゃんが青灰色の目をそらし、モジモジとし始める。

 けれどこっちをチラチラ見上げてくるから、俺は腰を落として目線を近づけ、彼女の言葉を待った。



「……その」

「うん」

「……実は、陸人さんに用事があって」

「うん?」


 俺に用事?


「こんな朝早くから?」

「はい、陸人さんに伝えたい事があって」

「伝えたい事?」


 重ねて問いかけた俺に頷きを返し、みはりちゃんが真剣な眼差しを向けてくる。

 ぎゅっと胸の前でこぶしを握り、小さな口が開いて……。



「……あの! 陸人さん!」

「はい」

「今晩なんですが!」

「はい」

「外に出ないで、お家にいてください!」


 かわいい声で、忠告された。



「「………」」


 少しの間を置いてから。


「……うん、わかった」


 俺は、それに従う意思を示す。



「……ありがとうございます」


 ホッとした様子で緊張を解くみはりちゃん。

 心底安心した風に、ふぅーなんて深く息も吐いちゃって。


「よかったぁ」


 なんて零すのを、俺は体を起こし穏やかに見つめながら……考える。


(3回目、だな)


 みはりちゃんのこの行動。

 実は、初見じゃないのだった。



(最初は先月……だったかな?)


 9月のある日、夕方に会ったみはりちゃんに、突如としてお願いされたのだ。


『あの、陸人さん! 今晩はお外に出ないでください!』


 理由を聞いてもお願いしますの一点張り。

 てっきり綺麗な星が見れるから、2階の窓から見てくださいとでも言われるのかと思ってたところにこれで、不思議に思ったのを覚えている。


『ああああ陸人さん陸人さん! 今日今日今日はダメです! バイトが終わったらすぐに帰ってお家でのんびりしててください!』


 次いで9月の後半にまた言われ、俺は自宅謹慎する事になった。


(どっちの日も、特に何か大きな問題や災難があったワケじゃない。平和で平穏な夜を過ごしただけだった)


 後日、その事について尋ねたら。


『あ、はい! その、大丈夫です!』


 と、答えになっているようななってないような回答をもらって以降は、触れないようにしている。


 ご近所さんの不思議な行動。

 俺の中での位置付けは、そんな感じだった。


 しかし、だ。



(2度ある事は3度ある、とは言うが……これは)


 不思議がこうも重なれば、さすがに何か理由があるはず。

 真面目でいい子なみはりちゃんが、こうまでして俺に忠告してくるって事は……!



「さては……みはりちゃん、一人でこっそり“天体観測”してるんだなっ!?」

「…………はい?」



 向かいの家の塀の上。


「にゃーん」


 黒いにゃんこが鳴いていた。



      ※      ※      ※



 星宮みはりちゃんの趣味は、天体観測だ。

 その名字からして血筋なのか、彼女のお父さんから引き継いだモノである。


「みはりちゃんには何度か天体観測に誘われた事があったけど、いつも熱心に望遠鏡を覗き込んでたよな」


 星宮さん家とはそこそこ家族ぐるみでお付き合いがある。

 さすがに男所帯の家にみはりちゃんが一人で来るって事はなかったが、逆に俺が星宮さんの家に行く事は何度かあった。


 その用事の一つが、天体観測だ。



翔琉(かける)君が興味ないからって、おじさんも熱心に教えてくれてさ。そこで、弟と違ってお姉ちゃんはよく付き合ってくれるけど、熱中しすぎて結局構って貰えないって愚痴を言ってたよ」

「そ、そうだったん、です、ね」

「でも、みはりちゃんも張り切って色々教えてくれたよな、黄道十二星座の話とか。生まれの星座についてのエピソードなんて、興味深かったよ。それに……あとはアレだな」

「あ……」


 前に一緒に星を見たのは、去年の話だ。

 その時に彼女から聞いた話は、今もしっかりと記憶している。



「星の綺麗な瞬きは、宇宙に敷いたレールを進む機関車達で運行している」



 いったい誰の創作なのか。

 不思議ノ市に伝わる噂話……“不思議ノ噂”の一つなのだと、みはりちゃんは言っていた。



「覚えてて、くれたんですね……」

「素敵な話だって思ったからね」


 もしもこの噂が真実ならば、かの有名な星座を巡る銀河鉄道のお話は、それを基にして作られたのかもしれない。

 まぁ事実としては順序が逆だと思うけど。


 それにしたってロマンがあって、俺はこの話が好きだった。



「そんなお話すら知ってるくらいの星空大好きみはりちゃんだからな。こっそり隠れて天体観測して、素敵な夜を独り占めしようって考える可能性を、俺は疑うワケだ」

「あうっ」


 ポンッと、みはりちゃんの頭に手を置いて、髪を乱さない程度に軽く撫でる。


「もしも危ない事をしようとしてるなら、ダメだぞ。出来たら、和彦(かずひこ)おじさんにちゃんと言って、保護者同伴でやる事」


 どれだけいい子だって言っても、みはりちゃんはまだ小学生。無茶もする。

 こっそり何かする事で、特別楽しい時間を過ごしたいと思ったりもするだろう。


 でも、だ。



「これでも俺は、みはりちゃんの事信頼してるからな。何か困り事や大きな事をしようって時には、ちゃんと他人を頼れる子だって、ね?」

「陸人さん……」


 このくらいの釘差しは、しておきたい。


「だよね、みはりちゃん?」

「……はい」


 みはりちゃんは本当に賢い子だから。

 俺のこの言葉の意図を、ちゃんと理解して動いてくれる。



「ん、よしよし」

「ふ、や、あ……」


 さらによしよしと頭を撫でると、みはりちゃんの顔が赤みを増していく。

 最近リリーがやたらとなでなでを要求してくるからか、ついつい勝手に手が動いてしまう。


「……ぽひゃぅっ」

「っとと」


 ポッポー!!


 案の定。限界を迎えたみはりちゃんが汽笛を鳴らしてふにゃふにゃになって。

 それを支えついでに、もう一回だけ釘を刺す。



「みはりちゃん」

「はひ?」

「もしも悪い事したら、めっ、て叱るからな?」

「へぇ……~~~~~ッッ!?!?!?」


 シュポポポポーー!!


「ひゃわわわわっ! わ、わかりました! わかりましたからーーーー!!」


 さらに何度も汽笛を鳴らし、逆にそれで気を取り戻したみはりちゃんが、大慌てで走り出す。



「陸人さん!」


 それでも一度、足を止めてこっちを見たら。


「今晩は、お家でゆっくりしててくださいねー!」


 赤くなりながらも真剣に、ダメ押しのお願いが飛んできた。

 意趣返し、じゃないと思う。


 彼女の中の何かの理由がそうさせる、真剣なお願いだと、そう感じた。



「……ふむ」


 駆け去る彼女に手を振って見送り、もう少しだけ考える。


(もしも、彼女が何か困り事に関わっているのなら……)


 その時はきっと手を貸そう。

 そう、心に決めておく。



「にゃーん」

「お」


 不意に、向かいの塀の上にいた黒猫が、一鳴きしてから走り出す。

 胸の辺りに青い宝石がついた豪華な首輪の、あまり見た事のない……。


「……ん?」


 いや。あの猫、どこかで見たような?



「ぬぅぉーん……!」

「あっ」


 浮かんだ疑問に答えを出すより先に、黒猫はみはりちゃんが行ったところと同じ角を曲がって消えていった。


「うーん」


 おかげで答えは出せぬまま、俺は首を傾げたのだった。

ジョバンニ「あのお兄さんにぶにぶ過ぎでは?」


応援、高評価してもらえると更新にますます力が入ります!

ぜひぜひよろしくお願いします!!

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