目覚め5
「どうやら、あの屋敷で当たりっぽいね、まとい」。
「ああ、そのようだ。ここまでの罠の多さから考えても、間違えないだろう」。
川沿いに南下したまといとまつりは、あかりが書き示した地図の記憶を元に、敵拠点を見つけ出すと、敵忍者に見つからぬよう、高い木の上から見下ろしていた。
雲が途切れ、月明かりが闇を晴らしていく。
「意外と大きい屋敷だね‥‥‥本屋敷と渡り廊下で繋がっている‥‥‥あれは離れかなぁ、蔵も三つくらい見えるね」。
まつりがオッドアイの目を凝らし、屋敷の様子を探っていく。
「問題はあかりが何処に囚われているかだ」。
「そうだね、これは疑わしい場所から順に、潰していくしか手はなさそうだよ‥‥‥どうする、まとい」。
「敵を捕まえ、尋問したところで口は割らぬだろう‥‥‥どうやら、まつりの案でいくしかなさそうだ‥‥‥んっ?待て‥‥‥あれは?‥‥‥」。
まつりに答えていたまといが、何かを見つけた様子で屋敷の方を睨むように見始めた。
「どうしたの、まとい‥‥‥ああ、なるほど〜、離れかぁ‥‥‥部屋の外に居る奴、きっと見張り番だよね」。
まといが見つめる視線の先を、目で追ったまつりが言う。
「おそらくな、それなら先ずは離れからいくか、違えば次は蔵へ、最後が母屋の順だ」。
「僕が陽動しようか?」。
「声東撃西か‥‥‥いや、それは最後の母屋の時まで温存しておこう‥‥‥いくぞ、まつり」。
二人は、敵忍者と仕掛けられた罠に警戒しながら、樹木伝いに屋敷へと接近していった。
一方その頃、あかりは香の煙の立ちこめる室内で、脱出の糸口を探していた。
「片手だけでも自由になれば‥‥‥」。
噛まされていた猿轡だけは、何とか自力で外すことができたものの、手足を縛る縄は一向に解く事ができず、香の煙に心体を侵され続ける状況が続いていた。
「‥‥‥体がおかしい。力が、抜けていく‥‥‥」。
体全体が脱力し、得も言われぬ気持ち良さに包まれていく。
更に意識が朦朧としていき、あかりは正気を失いそうだった。