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目覚め1

「くっ‥」。

樹上から刃が、絶え間なく襲いかかる。

敵忍者に包囲された夜の山中で、あかりは五感すべてを駆使して応戦していた。

キリがない‥十人、いやそれ以上いるか‥。

静寂だった山中に刃が交える音、苦無を打ち弾く音が響いていく。


「くのいち一人に何を手間取っている」。

戦闘には加わらず、樹上から様子見をしている一人の忍者が言う。

その男は他の忍者同様に黒の忍び装束なのだが、袖口に三本、白い線の刺繍が施された組頭と呼ばれる上忍であった。

「申し訳ありません組頭、ただ、あのくのいち、勘と足が達者で些か手を焼いております」。

組頭の側で伝令係の忍者が答える。

「ならば、あの平地まで引き摺り出して包囲戦を仕掛けろ」。

「はっ、直ちに」。

伝令係が暗号の笛を鳴らす。

笛の音の後、敵忍者の連続攻撃が止んだ。

仕掛けてくるか‥。

あかりは笛が敵忍者の暗号司令と察し、五感をより研ぎ澄ませていく。

直後、連続して投擲された苦無があかりを襲う。

五感を研ぎ澄ませたとは言え、気配のない苦無は、回避するのが精一杯である。

まずい、これは罠か‥。

連続して襲いかかる苦無を回避していくうちに、気づけば樹木の無い平地に追い出されていた。

次々と敵忍者が樹上から飛来し、あかりを囲むように布陣すると、じわじわと攻撃を繰り返しながら、その包囲網が狭められていく。

挿絵(By みてみん)

多勢に無勢である。

体力消耗も甚だしいあかりに対して、敵忍者が一斉に分銅鎖を放つ。

右腕、左足、腰へと分銅鎖が絡みつき、あかりの身動きが封じられていく。

敵忍者達は鎖を引き絞りながら、徐々にその間合いを詰めてくる。


危機的状況になったあかりの脳裏には、白蓮と交わした言葉が過っていた。

白蓮、あかりが暮らすくのいちの里『影の縁』の女長である。

「お主に託すこの役目は、この里の存亡も左右するもの、心してゆけ」。

「心得ております、このあかり、白蓮様の期待に応えるべく尽力いたします」。

「頼んだぞ、そして必ず生きてここに戻るのだ、よいな」。

「はっ」。

壇上に座る白蓮に対して、あかりは立膝姿勢のまま答えたのだった。


分銅鎖によって繋がれた、体の自由が利かない。

ここまでか‥。

渾身の力で長刀を引き寄せ、あかりはその刃を自らの喉元へ当てた。

だが、次の瞬間ーーさらに分銅鎖が、その刃を絡め取るように巻きついた。

「死なれちゃ困るぜ、俺が潜鱗様に殺されちまうだろうが‥それにな、お前にはいろいろと聞きてぇことがあるんでな」。

あかりの自刀を止めたのは敵忍者の組頭が放った分銅鎖だった。

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