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標的の刻  作者: お肉
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物語の始まり

新内閣の発足の組閣人事で異例の抜擢を受けた萩尾はその就任演説で通例と異なる発言を行った。

その、前段部を物語の始まりとし、この萩尾という人物を主役とし、彼を取り巻く人物、本丸や小山内、鈴木、直海、田畑といったキャラクター達と織りなす人間模様を日本の政治という題材を舞台に描いていく、政治活劇を10章立てで書いていきます。

章に応じて文量は異なりますが、おおよそ10万文字程度に収まるように書く予定なので、感想・ご指摘・アイデアなど、随時募集しております。

 その日、衆議院と参議院の両議院での本会議で、新内閣発足の所信表明演説が行われ、国会での映像と音声がテレビやラジオ、ネットでも中継されていた。

 八月、夏の暑い日の正午過ぎ、新内閣の防衛大臣の所信表明は持ち時間、5分とされた。


「 新党結成の前後から、私たちの主張は、メディアはプロはその責任を果たせ!」


 女性でも重鎮でもない、50代の連立でもない議員が防衛大臣に指名を受け、もともと大した知名度も注目を集めていたわけでもなかったので、彼への世間の耳目は冷ややかなものに過ぎなかった。

 新党の支持者からでさえやもすると歓迎されかねない「メディア叩き」が国会を舞台に、どう立ち回るのか、防衛大臣 萩尾 修は、どうせここで終わるだろうと思われていた。


「 ということを一貫して主張してきた。当然それは、ならば政治家は、自衛隊員は自衛官は自衛隊はという話にならない訳にはいかない訳です。この表明は国民全員に向けられたものですが、隊員の皆様は、隊員になるにあたって服務の宣誓をおこなっています。私も同様に、議員になるにあたり職務の宣誓をおこなっています。通例では、防衛大臣に就任する大臣は、『我が国の平和と安全を守るという崇高な使命』という文言を文民であるはずの議員ごときが口にする場、として、『どの口がそんなことを口にするのか』という欺瞞に満ちた場としてこの場は設定されていることが多く見受けられることでしょう。」


 テレビの視聴者は、長いなと感じていた。

 ラジオを聞いていた人は、言うべきことを言わない奴だと思っていた。

 ネットの視聴者は、切り抜かれることを意識しているんだなと分析していた。


「 ですが、そうした発言というものは、私たちが主張してきた、プロは!という主張からして、自らの口を汚す行為になるので、おおよそできる行為にはあたりません。立法権を有する議員の立場としても、法令に基づく執行権を持つ内閣の一員としても、それを手にしたからといって、自らの主張を翻す様では、人間としての面目が立つとは到底言えません。」


 これは、小説という媒体なので、作者はこの萩尾という人物に言わせてみようと想った。

 だから、出来るだけ、読者にもなぜ萩尾がこう言ったのか解るように書く様に心がけたつもりだ。


 だが、あくまでも小説であり、つまりはそれを読むのも書くのも娯楽に過ぎないものなので、小難しい話になるよりかは、活劇である方がより好ましかろうというように工夫しているつもりなのだけれど、工夫が足りない箇所に関しては、是非読者諸君の協力で作品としての完成を目指したいと思う。


「 個人としての私の葛藤は、果たして、『社会の為に個人は存在するのか。それとも個人の為に社会は存在するのか。』という問題に終始します。議員になる時に立てた誓いのひとつに、この国の主権が国民にあることを認め、固く尊守することを誓いました。

  これは、個人の為に社会は存在するという立場を擁護するという宣言であります。

  

  現行の法律では、そうしなければ議員になれないのですから、これは仕方がありません。


  ですが、ですがですよ。国民の皆さん。支持者の皆さん。隊員の皆さん。

 果たして、私たちのこの国に、改憲運動や、経済成長や、ソフトランディングをさせるといった余裕は残されているのでしょうか。憲法を読めば、その解釈は多様であはあるでしょうが、私に言わせれば、自衛隊の存在は違憲です。経済にしてみても、日本の経済は、一部の富裕層を生み出した一方で貧困に苦しむ人々が残されている以上、経済的な格差は広がっていると言わざる得ません。人口動態を見れば、どれほど子育て政策を行ったところで、この国の人口は減少していくことでしょう。

 我々内閣がいかなる所信を表明したところで、そうした現状をご存知の皆さんからしてみれば、我々の発言は欺瞞に満ちていると受け止められかねないものであります。

 ですが、私はこの場で言わせていただきたいです。」


 ー持ち時間終了のブザーが鳴る。議長から着席の指示がでる。ラジオの放送は一部切られ、テレビとネットの中継は続く。それでも、萩尾は持ち場を離れはしなかった。


 小説は時を戻し、萩尾がまだ議員になる前、いやそれ以前のただの無職の男が数奇な運命に導かれながら、自分の意思を示そうとしたことの顛末を描いていくことになる。

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