溜めて放出する必殺技
巨大不浄の足元まで距離を詰め、足元まで潜り込む。
私の行動に対して巨大不浄は足を上げて踏みつける体勢に入っていた。
だが、私が日傘を地面に押し当てると、その部分から無数の鎖が出現して身体を支えている足に絡みついていく。
鎖で足を縛られたことでバランスを崩した巨大不浄は、そのまま後方へと倒れ込んだ。
鎖を出現させた頃には既に倒れる方向へ動く。
こちらに向かってくる後頭部を仕込み刀で切り刻み、表面から剥いでいくと、その中心では周りの不浄を取り込んでいた大元が姿を現した。
こう言ったコアになっているものは大概が頭か心臓辺りだろうと狙いをつけたのだが、予想通りの展開に思わず口角が上がる。
その気分のままに手を動かそうとする……が、思いとどまって深呼吸をする。
「ダメダメ……落ち着いて行動しないと」
自分を宥めるように言い聞かせる……しかし、そんなものでは抑えが効かないくらいに、自分の中で欲望が渦巻いているのが分かる。
「くぅ……」
加護により増加をした欲望が自分たちを解放しろと暴れ回る様に思わず身悶える。
その一瞬の隙を突いた巨大不浄のコアが再び覆われて隠れてしまう。
残り1分でこの失敗は痛いどころの話では無い。
先程の場所に留まっていれば良いのだが、場所を移動している可能性もある。
もうこの欲望を解放して暴走状態にワンチャン賭けるか?
そんな考えが頭をよぎった時であった。
欲望を解放する……そのフレーズから新たな可能性を見出した私は、巨大不浄から距離を取る。
仕込み刀を日傘に戻し、丁度立ち上がった巨大不浄の真上に行くように跳躍した。
私と巨大不浄が一直線になる位置、その場で日傘を下に向けて開く。
「デザイア・ディザスター!!」
同時に思いついた必殺技名と共に己の中にある加護を全てエネルギーに変え、日傘を通して放出する。
溜めに溜めた欲望は黒い破壊のエネルギーとなり、巨大不浄を覆い尽くして余りある太さの極太レーザーとなって地上に降り注いだ。
黒薔薇の加護を全て使い切った事で維持する力がなくなり、変身が解除される。
解除された直後は部屋着に戻っていたのだが、再びキツネへと変身する。
すると、何処からか現れた護国が落下する私を受け止めて優しく地上へと降ろしてくれた。
「日向、凄かったコン!」
「まさか、あのような技を編み出すとはな。
見事だったよ」
「我慢に我慢を重ねて、ギリギリになって沢山出したから気持ちよかったでしょ?」
地上ではコン、リル、そして何故かいる戯が出迎えてくれた。
「うわっ、そんな露骨に嫌そうな顔されたら傷付いちゃうなぁ」
こいつが傷付くところなど全く想像出来ないのだが……だが、この神出鬼没さに少しは慣れてきたのが嫌なところではあろう。