VS 巨大不浄
3-3です。
ここから火術を連発しても勝てそうな気はするのだが……コンを鞘ごと護国の上に置く。
「コン、リルと一緒にゲートの前で待ってて。
私は最後にアレを試してくる」
正直、あの力を使うのは怖い……だが、紅蓮さんを始めとする里の皆が何とか実用化出来る様にと調整してくれたのだ。
それならば、彼らを信用して試しに使ってみるには絶好の機会であろう。
「おいで、黒薔薇……制限時間は三分に設定」
私が黒薔薇を呼ぶと、キツネの変身が強制的に解除された。
そして、代わりに黒薔薇の装備一式が私の身体を包み込む。
その中に今まではなかったピンク色の腕時計が左手に巻き付いてくる。
盤面はアナログ表記になっており、3:00の数字が徐々に減っていくのが分かる。
「すうううう……はああああ」
大きく深呼吸をして高揚しそうになる気分を落ち着ける。
前回あれだけ発散したからか?
それとも欲望の矛先となる真守がいないせいだろうか?
狐の里で変身した時のような急激な高揚感や陶酔感は襲ってこない。
ただ、ジワジワと身体の奥底で燻る熱のようなものは感じており、何かのきっかけがあればこれらが爆ぜて火が付いてしまうだろうという予感は感じた。
「これはサッサと終わらせないとダメだね」
「ユルセヌ……ユルセヌ!!」
「何が許せないか知らないけど……こんな暗い感情引き摺ってたら何にも出来ないよ」
5メートルはあろうかと思われる、巨大不浄がこちらに向けて拳を振り下ろしてくる。
その無慈悲に思われる一撃だが、私が日傘の先端を押し当てただけで止まってしまう。
その隙を狙って仕込み刀を引き抜いて、巨大な右手を斬り飛ばした。
明らかに仕込み刀よりも大きいのだが、現実の物理は通用しないのだろう。
手首の根本からバッサリと切れて落ちてくる。
この落ちてきた手自体が人型不浄の集合体であるので、私は刀を操り、粉微塵に切り刻んで浄化する。
「ウオオオオオオ!!」
巨大不浄が雄叫びを挙げると先程斬り落とした右手が再生していく。
ただ、自分が集めた不浄をそちらに回しているだけなので、斬り落とした体積分だけ小さくなっている筈である。
これらを繰り返せば問題なく勝てるのだが……私はチラリと時計を見る。
「後2分でそんな持久戦はやってられないよね」
残り時間から算出すれば半分も削れない内に黒薔薇の変身は解けてしまうだろう。
むろん、キツネの状態でも楽に勝てるとは思うのだが、今回の目標は黒薔薇の制限時間内での浄化である。
「こちらから攻めてみますか」
覚悟を決めた私は、若干高揚してきた気分を落ち着かせながら、巨大不浄へと向かっていった。