いなくなった真守
3-2話です。
あれから一週間の時間が経過していた。
真守は学校に長期の休みの届を出しており、バイト先も暫く休む事……それが無理ならばクビにして欲しいという連絡を入れていたらしい。
心配になって大山家に様子を見に行ったのだが、大山流古武術の師範であるお祖父様が、全面的に責任を取る形で今回の行動を認められていたらしい。
真守のお母さんなどは……
「あの子が日向ちゃんの事を放っておく訳はないから、きっとすぐに帰ってくるよ」
なんて、自分も心配だろうに私の事を気遣ってくれて申し訳なかった。
私は部屋の中で真守から貰ったぬいぐるみを抱え込んでベッドの上に座る。
「真守……どこに行っちゃったの?
やっぱり私の暴走に愛想を尽かしたのかな」
人形を抱きしめながらあの時の光景を思い浮かべると、それだけで悶絶しそうになる。
そんな時にコンコンと扉がノックされた。
「姉ちゃん、ちょっといいかな?」
「あ、待って待って。
ちゃんと着替えるから」
「ああ、終わったら教えてくれ」
私は制服から部屋着に着替え、更に上に一枚カーディガンを羽織った。
日和を助けてから、私は今までの無防備さを謝った。
日和は悪くなくて全て私が悪いと主張したのだが、日和の方も一時の気の迷いに流された自分が悪いんだと謝ってきた。
こうして壮絶な謝罪合戦の末に交わされた約束が、お互いの部屋を行き来する時はしっかりとノックし、返事及び許可が降りるまで入らない事。
更に私は無防備な姿を晒さずに気をつける事。
と言ったことであった。
「お待たせ〜入っていいよ」
私の合図で日和は扉を開けて部屋の中に入ってきた。
「それで何の用なの?」
「師匠のことなんだけど……姉ちゃんは何か聞いてる?」
日和は真守が直接指導していたのだが、いなくなったことで真守のお父さんが引き継いでいると先程聞いてきた。
日和も日和なりに急にいなくなった真守の事を心配しているのだろう。
「何処かに修行に行ったってのは聞いたけど、それ以外は何も」
「そっか……姉ちゃん、師匠と何かあったのか?」
「え……なんで?」
「いや、なんとなくだけど……姉ちゃんの落ち込み方が普通じゃない気がして」
普通でいるように努めているのだが、日和にも見抜かれるようでは余程態度に出ているのだろう。
「喧嘩……とは違うんだけどね。
私が一方的に酷いことしちゃって……ひょっとしたら愛想尽かされたんじゃないかなって」