黒薔薇の調整と戯の加護
「黒薔薇……あ、そう言えば!」
私は今の自分の姿を見る。
今の私は完全に変身が解けており、服装は学校の制服に変わっていた。
「巫女殿が眠っている間に黒薔薇の解析を終え、調整を施させて頂きました」
「調整……って事は、暴走する危険が無くなったとか?」
あの力は危険だが、暴走する事なく安全に使えるのであれば魅力的な話かもしれない。
「いえ、あれは黒薔薇から送られる加護によるもの。
力の根幹があの加護である以上は常に暴走の危険性を孕んでいると思われます」
「そっか……それじゃ何が変わったの?」
「先ず、巫女殿が黒薔薇を纏う際に制限時間の設定をして頂きます。
その制限時間の間のみ黒薔薇を纏い、制限時間が過ぎれば強制的に変身解除されます」
「あ、それは助かるね」
時間で強制的に黒薔薇の変身が解けるのであれば運用方法も見出せるかもしれない。
「それともう一つ、解析によって分かったのですが……黒薔薇に込められている加護は狼、狐の加護とは全く別のものです。
恐らくはその戯という少女のものだと思われます」
「うん、本人が自分の加護を分け与えているって言ってたよ」
「そうであるならば、その戯という人物とは敵対しない方が宜しいかと思います。
加護とは本来は神が自分の選んだ者に与える代物なのです」
「それって……戯は神様って事?」
「もしくは神に至った者でしょうか。
過去の例から人や獣が神に至ったという例はゼロではありません。
しかし……」
そこまで話してから紅蓮は不安そうに口を噤む。
「しかし、何なの?
神に至った存在ならおかしいことでは無いんでしょう?」
「いえ、本来加護を与える事が可能なのは上級神のみなのです。
神に至った程度の下級神は自分たちのことで手一杯で、そんな事をする暇もなければ、分け与えれる力など持っていません。
それが、我らが神以上の力を与えるなどとは……俄には信じがたい話なのです。
故に敵対しても先ず勝ち目は無いので、どうにか話を合わせて切り抜ける事をお勧めします。
魂魄の話も聞きましたが、あちらは命を取るようなつもりはない様子。
切り抜ける道はきっとあるはずです」
確かに色々とちょっかいをかけてはくるのだが、今のところ敵という感じはしないかもしれない。
そのちょっかいの方法が悪質すぎるのが問題ではあるのだが。
「私からの話は以上です。
お身体の調子も戻られたようですので、ご帰宅されても大丈夫ですよ」