日向はやみ属性を手に入れた
3-2話です。
「数日ぶりじゃのう、巫女殿。
……変わらずの活躍、大変に喜ばしく思っておるのじゃ」
「ええ……まさか数日の間にこんなトラブルに巻き込まれるとは思ってなかったけど……」
「そのお陰なのか分からぬが、巫女殿は既に五尾に至っておるというのは正しく僥倖よのう」
銀様はそう言って目を細めて私の尻尾を見つめる。
その視線に何か嫌なものを感じたような気がするが、きっと気のせいだろう。
「まさかこんな事になるとは思ってなかったけど」
「うむ、随分と苦労をかけた上に、巫女殿の弟君まで巻き込んでしまったことを深くお詫びしたい。
……その上で聞きたいのじゃが、どのような事があったのか詳しく説明してもらってよいかのう?」
「えーっと、まずは……」
こうして銀様に今回の事件の顛末を全て話していく。
日和が不浄に堕ちたこと。
戯と名乗る少女。
少女から加護付きの装備、黒薔薇を与えられた事。
それまではウンウンと頷きながら話を聞いていた銀様だが、黒薔薇の部分で「なんと!?」と言って目を見開いた。
「大変に申し訳ないのだが、いまその姿になることは可能か?」
「えっ……でも……」
私の欲を加速させるあの装備は、極めて危険なのでなるべく装着したくはない。
「日向が怖がっているから勘弁してくれないか?」
「いや、危険だからと放置しておいて何かが起こっては遅かろう。
周囲が何とかできる状態で一度確認しておくべきではないのか?」
真守のフォローはありがたい……しかし、銀様の言い分も理解できる……確かに切羽詰まった状況であの装備に切り替わるのは危険だろう。
「分かりました……変身しますね」
私が意識を集中すると、あの衣装達が私を求める声が聞こえた。
「おいで……黒薔薇達」
私はその呼びかけに応えるように衣装に呼びかける。
すると、私の神装を上書きするように衣装が黒薔薇へと変わっていった。
黒のヘッドドレスにゴシックワンピース、赤いハイヒールに白いフリルのついた黒い日傘。
日和の心の中で着ていた物と全く同じものが私の身を包んだ。
そうして黒薔薇に身を包んだ事で分かるのだが……相変わらず凄まじい力が湧き上がるのを感じる。
更にその力は一秒毎に私の身体に馴染んでいくのが分かった。
まるで元から私の力であったかのように。
もう二度と着るつもりは無かったけど……相変わらず凄い。
思わずウットリしそうになった時に肩を強く掴まれる。
「日向、大丈夫か!
俺たちが分かるか!?」
真守がとても心配そうな顔で私のことを見つめてくる。
……ダメだよ、真守。
そんな表情を見せられたら……我慢できなくなっちゃうじゃん!
「心配してくれてありがとう……大好きよ、真守」
私は自分でも分かるくらいにニタついた笑みを浮かべた。
その瞬間にお腹に強い衝撃を受けて大きく外に吹き飛ばされた。
「ひどいなぁ……いきなり何をするんだよ」
「どうやら全く正気じゃないらしいな……仕方ない!」
そう言って真守は私に対して構えをとった。
ああ……構えてるところまで凛々しくて素敵。
そんな誇り高い貴女が心配する顔が見たい。
狼狽える顔が見たい。
泣き顔が見たい。
どうすればそれが可能なのか……簡単だ。
この溢れんばかりの力で押し切ればいい。
「うふふ……存分に愛し合いましょう」
お気付きだとは思いますが、闇ではなく病み属性です。