コンの父親
本日は一挙3話更新。
3-1話目です。
翌日、流石に一度報告したほうが良いだろうということで狐の里に向かうことにした。
放課後、真守と共に変身してゲートを通ることになったのだが……
「また増えてる……」
「俺はもう驚かんぞ」
何となく予想していた流れではあったのだが、実際に尻尾が5本になっている光景を見ると言葉にならない。
4本目が増えた理由は分からないが、3本の時と今回は確実に戯の影響なのは分かる。
「ホントに……何がしたいんだろうね」
あの時の狂気を思い出して震えそうになる身体に抑える。
そんな私を真守は心配そうに見つめていた。
「大丈夫か?」
「ん……だいじょぶ、だいじょぶ。
じゃあ、行こうか」
「ああ」
そう言って真守が手を差し出してきたので、離さないようにしっかりと掴む。
案内役の人には前に注意しているので大丈夫だとは思うのだが、5尾を見た結果、我を忘れてまた掴まれても困る……そう言った理由から、今回は最初から手を繋いで狐の里を訪れることにしたのだ。
「おお、巫女様!
再びこの地を訪れて下さり、ありがとうございます」
ゲートを潜ると予想通りに人間に化けた案内役の人が待っていた。
「あ、お久しぶりです……ええっと……」
「おお、前回は興奮のあまり自己紹介をするのを忘れておりましたな。
私はこの里の里長をやっております紅蓮と申します。
以後、お見知りおきを」
「あ、稲葉日向です。
……紅蓮さんが里長だったんですね。
てっきり銀様かと」
「はっはっはっ……里で一番偉いのは大婆様ですので間違いではありませんな。
巫女様には魂魄の事でもお世話になっておりますので、いずれはゆっくりとお話しできたらと思いますよ?」
「魂魄?」
何のことだか分からずに私はコンの方を見る。
「僕のパパだコン」
「えっ、紅蓮さんってコンのお父さんなの!?
あの、いつもコンには……あ、違う。
魂魄さんにはお世話になっています」
唐突なカミングアウトに慌てたせいでおかしな言葉遣いになってしまった。
「姫巫女様がコンと呼んでいるのでしたら無理せずに普段の呼び方で構いませんよ。
その辺りもお話ししたいところではありますが……大婆様の所に着いたので、いずれまた……」
そう言って案内を終えた紅蓮さんは変化を解いて村の方へと去っていった。
「コンはお父さんとゆっくり話さなくていいの?
こっちにいる時ぐらい会ってきてもいいんだよ」
「僕の役目は日向を守る事コン。
だから、今は日向優先コン」
「ふふ、ありがと」
私は空いている手でコンを撫でる。
「そう言えば真守はさっきから静かだけど、どうしたの?」
「俺は部外者みたいなもんだからな」
「遠慮なんてしなくていいのに」
「まぁ、こっちは気にしなくていいから……さぁ、行こうぜ」
何か含みのある言い方をする真守ではあったが、彼が率先して銀様の屋敷の扉を開けたので、なし崩し的に話を中断して挨拶に向かうことになったのであった。