大事な弟
4-3話です。
「……なた……ひなた!!」
何度も自分を呼びかける声が聞こえて目を覚ます。
目を開けて最初に見えたのは、心配そうにこちらを覗き込む真守の顔だった。
「まが……み?」
「気が付いたんだな!
……良かった」
自分のことを心配してくれることに嬉しい気分になる……だが、次の瞬間に意識がハッキリと戻った。
「そうだ、日和は!?」
「大丈夫、もう元に戻っている。
……お手柄だったな」
「真守の方こそ途中で助けてくれたでしょ?
あれが無かったら日和を救えて無かったよ。
ところで……」
私は辺りを見渡す。
今いる場所は先程の廃墟の広間ではなく、真守の家の道場であった。
「ああ、日和が元に戻った後で時間の流れが戻りそうだったからな。
急いでリルにゲートを繋げてここまで運んできたんだ」
「運んできたって……私たち2人を?
重たくなかった?」
「そっちの小僧は我の背に乗せて運んでやったわ」
「日向はお姫様抱っこで抱えられてたコン」
「あ、こら!
余計な事を言うな!!」
「ええ〜それは気絶してたのが勿体なかったなぁ。
今度は意識がある時にやってね」
「……気が向いたらな」
「うう〜ん」
私達がわいわい騒いでいると、横で寝かされていた日和も目を覚ましたようだ。
「日和!」
私は思わず日和の首に手を回して抱きしめた。
「え、姉ちゃん?
それに師匠もなんで……あっ!」
そこまで言って思い出してのだろう。
必死に抜け出そうとするが、私は強く抱きしめてそれを許さなかった。
「日和、ごめんね。
お姉ちゃんが悪かったんだ……日和の気持ちも考えないで」
私がそう言うとビクッと身体が震えるの感じる。
「そ……そんな事ない。
俺が悪かったんだよ。
姉ちゃんに変な気持ち持って悪戯して……姉ちゃんが俺を嫌うのは当然だよ」
「……馬鹿!!
私の顔をよく見なさいよ。
これだけ心配した大切な弟の事を嫌うわけないでしょ!」
私は目に涙を浮かべながら、日和の顔を真っ直ぐに見て訴えかけた。
嫌ったりするはずがない……大事な、大切な弟なんだから。
その気持ちが日和にも伝わったのだろう。
「ねえちゃん……ねえちゃあああん!!」
日和は私の胸に飛び込んできて泣きじゃくった……精神世界でそうしたように。
私はそんな日和を宥めるように、大事なものを扱うように……愛しい弟の頭を撫で続けたのであった。