素性がバレて仕事が決まる
後書き追加しました。
「ふむふむ……つまり、貴方達は元は男の子であり、変身して何か悪いものと戦っていると」
結局、どうしようか迷った私達は正直に話す事にした。
元男という部分は省いても良かったのだが、どちらにしても信じてもらえなさそうな話なので包み隠さず全部話す事にした。
「信じられないとは思うけど……」
「つまり、この子達は変身ヒロイン定番のお助けキャラということですね」
「そうコンよ!
僕の姿は朝にやっているテレビを参考にしたコン」
「ニチアサ系とは……中々目の付け所が良い」
「もう順応してる!?」
勝手に納得してコンと喋り始める店員さんに驚愕する私達。
「目の前に非現実的な存在がいますからね。
現実は何でも起こるものだと思えば、何でも受け止められるものですよ」
「あの〜信じて貰えるのはありがたいのだけど。
そうなると、私たちが元男ってのは気にならないの?」
真守がそう尋ねると店員さんは最高の笑顔でサムズアップしながら
「TS美少女最高!」
と答えてきた。
「あはは……なんかとっても変わってるけど良い人みたいで良かったね」
「そうだな……正直な話、女性の常識なんてものもあまり持っていなかったら、事情を知っている女性の知り合いが出来たというのはありがたいな」
「!?」
真守の言葉を聞いた店員さんの目が鋭く光り、何かを呟いた気がした。
「2人とも女の子としての立ち振る舞いや常識を覚えたいのよね?」
「夏休みの間は田舎に居たから問題無かったけど、流石に今の状態で学校に通うのは心配だよね」
「そうだな。
不審に思われても困る」
「それならこの店でバイトしてみませんか?
見ての通り、ここは女の園なので自然と立ち振る舞いを学べると思いますよ」
店員さんの言葉に思わず私達は顔を見合わせる。
「ありがたい申し出だけど……勝手にそんな話を進めていいの?」
「それは大丈夫ですよ。
なんと言っても私が店長ですから。
あ、名乗り遅れましたね。
私はスイート・ヘヴン店長の九重美幸です。
よろしくお願いしますね、ヒナタちゃんとマガミちゃん」
「こちらこそよろしく…….って、あれ?
わたしたち自己紹介したっけ?」
「そ、それはアレですよ……席を案内しているときにそう呼び合っているのが聞こえたので」
「ああ、そっか。
そう言うところをしっかり覚えてるのが客商売のコツってやつなんだろうね。
真守もここでお世話になるって事でいいよね?」
私がそう尋ねると今まで黙って話を聞いていた真守の目が鋭く光る。
「一つ聞きたいのだが……」
「はい、何でしょうか?」
「ここのスイーツを賄いで食べることは出来るのだろうか?」
「ええ、もちろん!
それ以外に新作として出す予定のスイーツも先に試食出来ますよ」
「なるほど……実に魅力的な提案だ。
こちらこそよろしく頼む」
「真守、それはちょっと意地汚いんじゃないの?」
「ふふふ、いいんですよ。
それだけ私のお菓子を気に入ってくれたって事ですからね。
それでは次回のお休みの日に試しに入ってもらいましょうか」
こうして私達は偶々立ち寄った店で、女性としての経験を積む為の仕事と、自分たちの事を相談できる頼りになる味方が出来たのであった。
実はスイヘブ話は日向視点と店長視点を交互に入れる予定でした。
しかし、ここを掲載した時点で全て書き終わっていたので一旦日向視点を終えてから店長視点をいれるという仕様に変更しました。
なので、明日は店長視点なのですが、思いの外ストックが貯まっているので店長視点全4話を一気に公開します。
現在読んでいる話数を間違えないようにお気をつけください。