側衛の正体
本日4本目。
明日も4本あげる予定です。
オオカミの言葉に理解が追いつかない。
言葉の意味では分かっているのだが、頭が理解するのを拒否していた。
「な、なんでそんなことが分かって……」
「一緒に稽古してきたから分かるんだよ。
間の取り方、技の癖、未熟さ、全部が日和の特徴と一致している。
こいつは間違いなく日和だ」
「あらら……こんなに早く正体を見抜くなんて意外だね。
流石は真守って所かな?」
何処からともなく声が聞こえたと思ったら、いつの間にか日和と思われる不浄の後ろに黒髪の美少女の姿があった。
「お前は……側衛か?」
「知ってる子なの?」
「最近日和が連れてきたんだが……まさか!?」
「あ、そっかそっか……姿を戻すのを忘れていたよ。
ほら、これで僕が誰か分かるでしょ?」
側衛と呼ばれた少女の姿が代わり、金髪で結んだ先のツインテール部分は銀。
瞳は金と銀のオッドアイ……深い闇のような色合いのゴシックワンピースを着た少女が現れる。
「2人ともこの姿では久しぶり!
あれ、どしたの〜折角の再会なのにそんな暗い顔して。
ほら、スマイルスマイル♡」
そう言って手でハートのマークを作りながら極上の笑顔を見せる少女であったが、もちろん私達にはそんな余裕は無かった。
「あなた、日和に何をしたの!
元に戻しなさい!!」
私が叫ぶと少女は言っている意味が分からないと言わんばかりに首を傾げる。
「え〜何でもかんでも僕のせいは良くないんじゃない。
日和がこうなったのは日向のせいでしょ」
「な、何を……」
「無自覚に誘惑しといて、いざとなったら拒絶するなんてカワイソ〜。
僕はそんな可哀想な日和を慰めてあげただけなのに」
「ふざけた事言わないで!
日和は私の大切な弟なの……戻さないって言うなら……」
私は護国から飛び降りて魂魄を少女に向かって構えた。
そんな私に対して少女は未だに余裕の笑み……いや、ニヤニヤとした笑いを崩さない。
「別に返さないなんて言ってないじゃん。
じゃあ、本人に聞いてみようよ……ね、日和」
少女がそう言って日和の身体をポンと叩く。
「ネ、ネエチャン……」
それに反応したかのように日和から私を呼ぶ声が聞こえた。
「日和、私が分かるの!?
お姉ちゃんだよ!!」
そう言って駆け寄ろうとしたが、日和は少女を庇うように前に出た。
「ネエチャン ハ オレガマモル!!」
そして、そのまま真っ直ぐに私に走り寄ってきて拳を振り上げた。
「危ない!!」
日和の拳が私に当たる寸前に、横から飛びついてきた真守と共に転がることで何とか回避することに成功した。
「あらら……日和は僕がお姉ちゃんの方が良いんだって。
じゃあ、前のお姉ちゃんとはバイバイしようか。
それが出来たらお姉ちゃんがたーっぷりとご褒美をあげるよ」
少女がそう言って日和の頬にキスをする。
すると、日和の身体に更に闇が凝縮して更に一回り大きくなった。
「あなた、何をしたの!?」
「君達がやった事と同じさ。
日和に僕の加護を分け与えてあげただけさ。
技術的には真守の方が上っぽいからね。
これで同等の勝負が出来るんじゃないかな」
そう言って日和の肩をポンと叩く。
「ネエチャン ノ テキハオレガタオス!!」
それに応えるように日和が部屋中に響くような雄叫びをあげた。
「さぁ、第二ラウンドの始まりと行こうか!!」