少女のような男の子
日和が日向になっていた部分と、側衛が平仮名でそばえになっていた部分を修正しました。
姉の部分を姉ちゃんに修正しました。
最近、姉ちゃんを見ているとドキドキが止まらなくなっていた。
これがどういった感情なのかは知っている……それが実の姉に向けていい感情でないことも。
そんな姉ちゃんから師匠のことが好きだとハッキリ言われた。
前々からそうではないかと思っていたし、2人は女性同士の友人というには明らかに仲が良いというのは感じていた。
尊敬する師匠と姉ちゃんが一緒になるのなら喜ぶべき話なのに……俺はそんな気持ちが全く湧いてこなかった。
ずっとモヤモヤした気分である。
ある日を境に、姉ちゃんは家の中で常にぬいぐるみを抱き抱えながら生活するようになっていた。
とても大事そうに抱き抱えられるぬいぐるみ。
男としては情けない事だが、そのぬいぐるみがとても羨ましく、立場を代わりたいなどと一瞬でも考えてしまったのは今でも後悔している。
こんな事ではいけない……いいはずがない。
そう思った俺は師匠の道場へと向かった。
正直、どんな顔をして行けと言う話ではあるのだが、しっかりと向き合う為にも師匠に稽古をつけてもらおうと思ったのだった。
師匠の道場へ辿り着いたのだが、建物の前に見慣れない子供がいた。
黒髪のロングヘアーで年齢は自分と同じくらいだろうか?
白いワンピースを着ている人形のように整った顔の少女に見惚れてしまう。
「きみ……ここの道場の生徒さん?」
「え、あ、ああ……そうだけど。
道場に何か用があるのか?」
「うん、僕もここで教えてもらいたいなって思って」
「そうなんだ。
でも、残念だな……ここは男しか弟子を取っていないんだよ。
諦めて女の子でも入れるところを探す……」
「僕、男の子だよ?」
女の子は入れないと言おうとしたのだが、その途中で少女……もとい、その自称男の子は首を傾げながら答えた。
「は?男?」
「うん、ほら!」
衝撃の事実に思わず唖然とする俺に対し、その子は俺の手を掴んで自分の股間に持っていこうとする。
「いや、ちょっと待って……」
思わず力を入れて引き剥がそうとするが、想像以上に強い力に引っ張られ、スカートの中の股間に手が触れてしまう。
……確かにある……触り慣れた感触が……
「ね?ちゃんと男の子でしょ?
何なら捲って下を脱がせて確認する?」
「いやいや、分かった……分かったから大丈夫だって!
それよりも何で男なのにそんな格好してるんだよ!」
「何でって……似合うから?」
男の子の言葉に思わずズッコケる。
「親に無理やりさせられてるとかそんな理由じゃないのかよ!?」
「え〜違うよ。
ほら、君も似合ってるって思わない?」
そう言ってどこから見ても少女にしか見えない笑顔で問いかけてくる。
「そりゃ、似合ってはい……って、それはどうだって良いんだよ。
それじゃお前は道場に入門したいって事で良いんだな?」
「うん、そうそう。
それと僕の名前は側衛って言うんだ。
よろしくね、日和」
「ああ、分かったよ……って、俺名前言ったっけ?」
「ええ〜最初に会った時に言ったじゃん。
ほら、思い出してよ」
そう言いながら側衛が顔を覗き込んでくる。
その瞳を見ながら最初に会った時の事を思い出す。
ここの道場の生徒か尋ねられた時に……そういえば名乗っていた気がする。
うん……そうだったな……確かに名乗ってた。
「そう言えばちゃんと名乗ってたな。
変な事言って悪かった」
「気にしてないよ。
それよりも早速道場に行こう。
入門がダメでも見学ぐらいはさせてもらえるでしょ?」
「あ、ああ。
そうだな」
こうして俺はまるで少女にしか見えない男の子、側衛を連れて道場に上がっていったのだった。