お約束の展開
「お前はまたそうやって……揶揄うんじゃないよ」
そう言ってソッポを向く真守だが、顔は真っ赤であるし、必死に視線がこっちに向かないようにしていて何だか可愛らしい。
「ほんと〜に見なくていいの?
私は勢いで見ちゃったから、今ならおあいこだよ。
ほら……お腹の辺りまでスカートあげちゃったから、今ならこっち向くだけで見えるよ」
「……分かった!
ここまで揶揄われるくらいなら覚悟決めてやる。
後から見ないでって言っても遅いからな!!」
そう言いながら真守が意を決したようにこちらを向いた。
その視線の先……私のめくりあげたスカートの中にあったものは……
「え?なんだ、これ?」
「今日女の子の日だって言ったでしょ。
加護の力で抑えてるけど何か漏れてきたら嫌だからブルマだよ。
赤いから血が付いても気にならないし動きやすいから便利なんだよね。
これなら万が一スカートが風とかで捲れ上がっても恥ずかしさは軽減されるし」
「ああ、これがブルマって履物なのか。
昔の女子はこれを履いていたらしいけど今じゃみんなが短パンだからな。
実物は初めて見た」
そう言いながら真守はしゃがみ込んでマジマジと私のスカートの中を覗き見始めた。
「今じゃ骨董品扱いだよね……っていうか、幾らブルマだからってこれだけガッツリ見られるとちょっと……」
「日向が見ていいって言ったし覚悟しろとも言っただろ。
あ、それに縛られた時の恨みも思い出したわ。
あの時は腰掴まれたんだから、俺も同じことしていいよな」
「ひゃい!?」
私の後ろに回り込んだ真守がガツッと腰を掴んでくる。
「おいおい、肉が付きすぎてるんじゃないか?
とは言え触るには申し分ない感触だな」
「ちょっ、ばか!
やめろ〜お肉を揉むなぁ」
「あ、こら、急にそんな暴れたりしたら……うわ!?」
腰を掴んで揉まれたことで動転した私が身体を捩ると、バランスが崩れて真守の方に倒れ込んでしまう。
「あいたたた、たぁ!?」
「無茶する……!?」
偶然にも真守を押し倒すような形になり、彼女の綺麗な顔が目の前いっぱいに広がる。
その刹那に思い出したのは下水道での口づけ。
あの時はキツネとオオカミとして、加護の受け渡しという理由ありきでのキスだった。
だが……いまここでキスしまえば、そんな理由が一切付かない純粋な物となるだろう。
更に今はキツネとオオカミでは無い……稲荷日向と大山真守という唯の人間だ。
ここでしてしまえば最早なんの言い訳も出来ないだろう……今の関係のままで十分じゃないかと囁く声がする。
……だが、それ以上に真守とキスをしたい、真守が欲しいという声が心の中で大きく叫んでいた。
私が少し顔を前に出すと真守は一瞬驚いた表情をする。
が、直ぐに意図を察して彼女は瞳を閉じた。
その姿を見て私も同じように瞳を閉じる。
そして、そのまま顔を前に動かし……
「姉ちゃん、1人で師匠の所に行くなんてズル……」
「あらあら、まぁまぁ。
貴女達ったらいつの間にそんな関係に……日和君、私達お邪魔みたいだったから下でお菓子でも食べてましょうね」
ガチャっと言う音と共に扉が開かれる。
そこにいたのは我が弟、稲葉日和と真守のお母さんであった。
お約束って大事ですよね。