レッツ、スイヘブ!
本日は新学期初日という事もあり、午前で学校は終わった。
お互いの事情を話すという名目で、昼ごはんを食べれる店を探していた。
「いつも通りに牛丼屋で良くないか?」
そう提案する真守にストップをかけたのは俺の方だった。
「いや、冷静に考えてみろ。
今の俺たちは見目麗しい女子高生なんだぞ。
そんな2人が牛丼屋でご飯食べてたら悪目立ちしないから?」
「確かに……ならば何処に行くんだ?」
「逆転の発想だよ、真守くん。
俺たちが男だったから行けなかった店に行けばいいのさ……つまりこの店だ!」
「こ、ここはまさか……店内にいるのは9割以上が女性。
辛うじて立ち入るのを許されるのは彼女持ちの男だけと言う伝説の店、スイーツ・ヘブンじゃないか。
そう、俺たちの目の前には外装からピンクで彩られた、全力で男性……特に男子校生を拒否するような作りをした店である。
時間制で各種スイーツが食べ放題、そのスイーツに合わせたドリンクが飲み放題のほか、カレーやスパゲッティなども置いており、広く女性に愛された店である。
もちろん男子禁制というわけではないのだが、こんな店に男2人で来ていたならば周囲の視線に萎縮してしまって、スイーツを楽しむどころではないだろう。
女性だらけの店内を、トレイを持ってウロつくのも難易度の高い話であった。
「こ、こんな所に入っていいものなのか?」
「逆に考えるんだ……今の俺たちに合うのはこういう店の方なんだって。
それに……」
「それに、どうしたんだ?」
俺はある事を呟きかけて一瞬躊躇う。
だが、そんな自分に気付いた真守が先を促してきた。
「この身体になってから味覚が変わった気がするんだよ。
牛丼みたいな食べ物は美味しいけど沢山は食べれないし、逆にスイーツは今までよりも遥かに美味しく感じて幾らでも入る気分なんだよね」
「……分かる。
そう言われると無性にスイーツが食べたくなってきた気がする……入るか」
女性化の影響か、明らかに以前とは変わった味覚。
だが、それは真守も同じだったらしく、俺たちは互いに固い握手をしてから、覚悟を決めて店の中に入っていった。