狐の里からの帰還
明日は2話投稿しようと思います。
銀様との話し合いの後、私達は改めて里の中を案内してもらった。
とは言え、都会と比べると非常に狭い村落である。
あっという間に回りきってしまい、本日は帰宅する事になった。
その間に聞いた情報をまとめると中々に驚く事が分かった。
本来であればこの地で加護を高める修行をし、己の力の使い方を覚えていくらしい。
私や真守が使っている神装も、そうやって身体に慣らしていくのが普通なのだそうだ。
しかし、既に三尾になっている私には無用の長物という話だ。
男から巫女になった事、最初から神装を使いこなしていた事、一尾で護国に選ばれた事、既に三尾になっている事。
この全てが前例が無く異常な存在という事もあり、どう扱うか迷った結果とコンの口添えが合わさって今まで放置という事になっていたそうだ。
しかし、姫巫女と思われる人物が私に接触してきた事で状況が一変して今に至るという話であった。
「何だか面倒な事になってきたな」
「そうだね……正直会わないでいいなら2度と会いたくないんだけど」
散々に揶揄われて堕とされかけた時の事を思い出す。
冷静に考えれば、あの少女の実力ならあのタイミングで強固な幻術をかけて堕としてしまえただろう。
だが、真守の言葉と揺さぶりで解けてしまった事を考えると、本気で堕とそうと考えていたわけでは無い気がする。
「姫巫女は何故か俺に対して遊ぼうと言って去っていったんだ……こちらがどう思っていようが、間違いなくやってくるだろ」
「……あれかぁ」
あの時の事を思い出して少しイラッとする。
真守の頬に口付けして去っていたのを思い出したからだ。
このままこの話を続けるとあの光景がよぎってくるので、強引に話を変える事にする。
「それよりさ、真守の方はどうなの?
狼の里に行かなくていいの?」
「里には定期連絡を入れているのだがな。
まだその時では無いと突っ返されるばかりよ」
私が尋ねるとリルの方から答えが返ってくる。
「こっちはこっちで何を考えているかサッパリだな。
ま、今はやれる事をやるしか無いんだろうな」
「そうだね。
じゃあ、次の休みは買い物に行くって事で」
「……あんまり興味ないんだけどなぁ。
ま、行くって話はしちゃったから仕方ないか」
こうして様々な課題を抱えながらも私達は再び日常へと戻っていくのであった。