少女の正体
「さて、巫女殿の心はありがたく受け取っておくとして……ここからが本題なのじゃ。
妾の予想でしかないが、お主達の前に現れたと言う少女。
妾は姫巫女様、もしくは姫巫女様に関わる何かじゃと思っておる」
「え、さっき姫巫女様は亡くなったって……」
「うむ、じゃから関わる何かという言い方をしたのじゃが……十中八九で姫巫女様本人ではないかと思うのじゃ。
根拠は幾つかあるが大きいものとして、八尾である事じゃな」
言われてみると、今まで八尾に至ったのが姫巫女様しかいないのであれば、彼女が姫巫女様である可能性は高い。
しかし……
「聞いていた話とイメージが合わないな」
真守がポツリと呟く。
そう……あの少女はこの世の全てを揶揄い尽くしそうな勢いを持っていた。
自己犠牲精神のカケラも持ち合わせているようには見えない。
「確かにこれだけじゃまだ弱いかもしれぬが、かつて護国を操っていた発言をしていたことも一つじゃな。
護国の操作は歴代の巫女で数えるほどしか出来ておらぬ……これは尻尾や加護に関わらず、護国が持ち主を定めるからなのじゃ。
そして、その一番最初の持ち主は……」
「姫巫女だったと言う訳か」
真守の言葉でシンと静まり返る。
ここまで情報が出揃っているのであれば、彼女が姫巫女様であるのは間違いないのかもしれない。
「今後、もし姫巫女様と接触する事があれば十分に気をつけて欲しい。
そして、可能であれば加護を引き出す方法を請いてはくれぬか?」
「どういうこと?」
前者の部分は分かるが後者の理由がよく分からない。
「ハッキリ言ってしまうが巫女殿……巫女になって一ヶ月程度で護国を操り、二尾を通り越して三尾に至っておるお主は異常なのじゃよ。
早くても3年、通常であれば数年、遅いものでは10年以上……更に才の無いものはそこにすら至れない。
それが三尾の巫女というものなのじゃ」
銀様の言葉に思わず生唾を飲み込む。
「護国に関してはアレが選んでおるから問題は無い。
しかし、姫巫女様と接触した後に三尾に至っている……これが問題なのじゃ。
お主が急速に加護を高めた理由には必ず姫巫女様が関わっておる。
何故そのような事をしたのか?
その意図が分かれば姫巫女様が味方か…或いは何かの思惑を持った敵なのかが分かるやもしれぬ」
やり方はともかくとして、確かにあの少女に仕掛けられた直後に加護が増したのは変えようの無い事実である。
だが、あの完璧な見た目と下品なおっさんのような下ネタを連発する少女。
その少女と多少なりとも積極的に関わらないといけないかと思うと……
「やだなぁ」
という本音が思わず溢れるのも仕方のない事だろう。