姫巫女
本日は2話更新。
こちらは1話目です。
時代は遡って戦国の世、各地で起こる戦争によって人々の暮らしはどん底へと落ちておった。
戦場後では様々な怨恨が染みつき、それらが姿を持ちて土地に呪いを振りまいていたのじゃ。
これがこの世に最初に産まれた不浄じゃな。
この事を嘆いた神の一柱が、自身の使いである狐と狼に力を与えたのじゃ。
そして、自らの力を託せる巫女を探して不浄を祓うように命じた。
狼と狐は同族の長となり、それらの者達の協力を経て遂に巫女を見つけ出したのだ。
狐の巫女はとある小国で祭事を行う姫であった。
その為に妾達は彼女を姫巫女と呼んだ。
妾は今のお主とコンのように姫巫女のパートナーとして様々な不浄を浄化して回った。
姫巫女は心優しく、神を心の底から信望しておった。
その為であろうか……人の身でありながら神にも等しき力を使いこなすまでに至った。
彼女はその生涯を人々の安寧へと捧げた。
だが……不思議な術を使うことを恐れた人々は、事もあろうに姫巫女様に疑念を持ち始めたのじゃ。
神の遣いか、それとも妖怪の類か……疑わしきは罰せよという考えによって姫巫女様は捕らえられてしまったのじゃ。
そして、どちらか分からぬのであれば神への捧げ物にすれば良いと考えた人々は姫巫女様を処刑しおった。
妾は幾度となく力を振るって逃げ出そうと誘ったのじゃが、彼女は人の心を信じ、自分の犠牲で人々の心に安寧が訪れるのであれば喜んで犠牲になると笑顔で死地に向かいおった。
あの時の口惜しさは今でも夢に見る……あの民どもを全て根絶やしにしようかと考えたこともあったが……それでも姫巫女様の愛した者達じゃ……それは出来なんだ。
こうして姫巫女様はいまだに超える者はおらぬ、八尾の巫女としての生涯を終えられたのじゃ。