狐の里の大婆様
バイト初日編の後に人物紹介3を投稿しております。
「こちらで大婆様がお待ちです」
鳥居をくぐった先に一際大きな建物がある。
どうやら、ここが目的地の大婆様がいる場所らしい。
「では、私はこれにて」
「あ、ありがとうございました」
「なんのなんの!
ごゆっくり滞在してくださいませ」
案内役はそう言うと狐へと姿を変えて何処かに去っていった。
「勝手に入っていいのかな?」
「勝手も何も、向こうが呼んでるんだから大丈夫だろ?
ほら、行くぞ」
そう言って真守は手を繋いだまま扉を開ける。
建物の中は木造で、大きくて広い部屋になっていた。
その一番奥に座布団の上で胡座をかいて座っている人物……彼女が大婆様なのだろう。
1人しかいないのだから間違いない。
だが……あの姿は……
「遠いところをよくやってきたのう。
妾が里の大婆と呼ばれておる銀じゃ」
そう言ってカラカラと笑う少女。
そう、大婆様と聞いてお婆さんが出てくると予想していたのだが、出てきたのは見た目年齢13歳ぐらいの少女だったのだ。
「婆さまはいつも若作りしているコン」
「何が若作りか!
妾にとって寿命など無いようなもの。
つまり、どのような姿を取ろうが一切の無理など無いのじゃ」
そうやってドヤ顔で胸を逸らせる銀様。
これが所謂ロリババアという奴であろうか?
「まぁ、良い……ふむ……お主が当代の巫女殿。
そして隣にいるのが狼の巫女か。
うむうむ、仲良くやっているようで一安心じゃな」
「あ、これは失礼。
ところでここにくれば八尾の少女の正体が分かると聞いたんだけど」
繋ぎっぱなしだった手を慌てて離して銀様に尋ねた。
「うむ、そうじゃのう。
ところで巫女殿は浄化と歴代の巫女についてどれくらい聞いておるかの?」
「最低限かな?
不浄が現れると良くないから浄化してほしいって事と、それが出来るのは巫女だけって事。
歴代の巫女に関しては初代の姫巫女様が唯一の九尾で凄かったって事ぐらいだよ」
「本当に最低限じゃな……ならば妾の昔話に少し付き合うてくれぬか?」
そう言って昔を懐かしむような瞳をした銀様。
その色合いの中に深い哀しみのような色を宿しているのに気付くと、頷く事しか出来なかった。