撮影会とその収穫
「お疲れ様でした!」
「お疲れ様です」
そう言って事務所に入ると、美幸さんが大慌てでこちらにやってきた。
「2人とも、ごめんなさいね。
私が調理で手が離せない隙を狙ってあの子が勝手をやったみたいで……」
「え、どう言う事?」
美幸さんの予想外の言葉に、思わず敬語も忘れて聞き返してしまう。
「真由美ちゃんってば、最初から2人を客寄せパンダみたいにしようと考えていたらしいの。
もちろん、2人の許可を得てって考えてはいたらしいんだけど……予想外にお客の方が先に提案して店内が盛り上がっちゃったものだから」
「あ〜なるほど。
準備が良いなとは思ってたんですけど」
「まさか計画済みだったとはな。
大変ではあったけど、面白い経験だったから自分は構いませんよ。
次からは事前に言って欲しいですけどね」
「私も結構楽しかったし、お客さんと交流出来たのも嬉しかったから良いよ」
「2人とも……ありがとうございます。
ほら、貴女もこっちに来て謝りなさい!」
「は、はい。
2人とも調子に乗って事後承諾にしてごめんなさい」
先程写真を頼んだ時よりも更に腰を曲げて謝罪する八幡さん。
「さっきも話した通りに私達は気にしてないから大丈夫ですよ」
「これからもお世話になるんだから、気にせずに仲良くしていきましょう」
「2人とも……」
私達がそう答えると、八幡さんの瞳には涙が浮かんでいた。
「はいはい、仲直り出来ましたと言う事で……はい、これ。
今日のお給料です」
「わーい、ありがとう……って、なんか多くないですか?」
「それには先程の撮影代金も含まれていますので。
真由美ちゃんも文句は無いですよね」
「はい、勿論です!」
渡された封筒の中身を確認すると諭吉さんが複数枚見えている。
「あ、あの……こんなに貰えない、です。
お店の売り上げにしてくれた方が」
「俺も流石にこの金額は……」
「料理の提供で十分な稼ぎを得ているから気にしなくて大丈夫ですよ。
これはお二人が稼いだお金ですから遠慮なく。
……そうですね、どうせならそのお金を使って買い物にでも行ったらどうですか?
お二人に似合う服とか探してみるといいですよ」
美幸さんに言われて私達は顔を見合わせる。
真守の方も似たようなものだと思うが、私の服は全てコンが用意したものだ。
確かにこれからの事も考えると、自分達で服を選ぶという事も必要なのかもしれない。
「とは言え、俺たちだけだと何処に行ったらいいか……」
「そう言うと思って、私がお勧めのお店を紹介しておきますね。
店主は私の知り合いですので話は通しておきますよ」
「何から何まですいません。
今度時間が空いた時に行ってみますね」
こうしてトラブルはあったものの、大収穫で最初のバイトは終わりを迎えたのであった。