キツネ、必殺技を得る
「な、何これぇ!?」
何かの間違いかと思ったのだが、3本の尻尾は自分の意思でパタパタと動く……これは間違いなく私の尻尾だ。
「日向、凄いコン!
三尾なら一人前の巫女だコン」
慌てる私の気など知らずにコンが暢気に悦びの声を上げる。
「ねぇ、リル。
こんな一つ飛ばしでいきなり尻尾が増えるなんて前例あったのかしら?」
「いや、聞いたことがないな。
我は狼の巫女のパートナーとして、過去の巫女達の様々な文献を読んだ。
だが、このような事例は存在していない。
普通は巫女としての修行を積んで少しずつ加護を増やしてなり得るもの」
「それじゃ、コンが言っている一人前って言うのは?」
「一般的に狐の巫女は三尾を目指して修練を積むのだ。
生涯で3本に達すれば標準、それ未満では歴代で劣っていたと評される。
後は尾の数が増えていく毎に優秀とされ、最高峰は九尾の姫巫女……なのだが、それ以降は九尾どころか八尾にすら到達した者はいないと言われている」
「それって……」
「言いたい事は分かるが今はこの状況を打破するのが先であろう?」
「それもそうね。
キツネも遊んでないで真面目にやるわよ!」
「はっ、そうだった!
あれ?……うん、いけるかも」
オオカミの言葉に我に返った私。
目の前のスライムをどうにかしようとした時に、突如として力の使い方を理解できてしまった。
「フォックス・フレイム!」
三又の尻尾を前方に向けて叫ぶと、其々の先から小さな炎が生まれた。
「そのままロックして……発射!!」
結界に向かって飛んできていたスライム達に向けて炎を飛ばす。
炎はスライム達を追いかけるようにして飛んでいき、3発共正確に命中する。
「すごい……」
「まだまだ……フォックス・フレイム・マキシマム!!」
私は尻尾を左右、そして股下から前方に回し、お腹の前に先端が来るように動かす。
3本の尻尾が差す空間に炎の塊が生まれ、少しずつ大きくなっていく。
ドッジボールくらいの大きさになったのを確認し、ここが勝負所だと魂を込めて叫ぶ。
「チャージエンド…….シュート!!」
私が叫ぶと、炎の球から熱線が真っ直ぐに伸びて巨大スライムを貫く。
熱線が突き刺さった巨大スライムはブルブルと震え出す。
この熱線は浄化の炎……相手自身を燃やすのではなく、穢れを燃やし尽くして浄化する。
スライムの身体は徐々に小さく崩れていき、巨大スライムは跡形もなす消滅していた。
「ごめん、後はお願い出来るかな?」
大元の巨大スライムは浄化したのだが、周りには飛ばして分離されたスライム達が何体か確認できる。
「え、ああ……任せてよ」
今まで呆然とその光景を見ていたオオカミだが、私の一言で結界の中から飛び出して残りのスライムを浄化していくのであった。